ノイズ対策技術は、あらゆる分野で重要性が高まっている。エネルギー問題がクローズアップされている中、自動車のHEV、EV化を含めたスマートグリッドの構築を視野に入れた再生可能エネルギーなどの社会インフラ分野での新たなノイズ対策技術が要求されている。また、スマートフォンやタブレット端末などの成長分野は、利用周波数の高周波化および多様化、信号処理の高速化を伴いながら、新製品開発が活発化。世界のノイズ規制に適合した最適なノイズ対策技術の導入が進んでいる。
各種電子機器や自動車は、各国のノイズ規制に適合するために電波暗室を核とした測定・評価ラボでノイズがどれだけ発生しているか、逆にノイズからどれだけ耐えられるかという測定から、フィルタリングなどを施し対策する必要がある。
測定・評価ラボの中核である電波暗室は、EMI測定、イミュニティ試験に利用。EN、FCC、VCCI、CISPR、ISOなど、世界のEMC規格に適合するための評価、試験を行う。
EMC対策、評価用電波暗室は10メートル法として一般的な標準タイプ、重機用、自動車用があるほか、一般タイプの6メートル法、高性能タイプ、スタンダードタイプ、廉価タイプといった3メートル法、小型の簡易型電波暗室がある。これらは、測定、評価する機器によって使い分けられる。具体的にノイズ対策を施すためには、あらかじめ回路構成、インピーダンスコントロールなど、プリント配線板の回路設計段階で、対策が施され、試作機器、完成品になるまでに、ハウジングやノイズ対策部品を挿入する手法が一般的。
パワーエレ分野で重要性高まる
最近では、太陽光および風力発電といった再生可能エネルギー、EV、HEVといった自動車など、パワーエレクトロニクス分野でのノイズ対策の重要性が高まっている。これらに共通しているのは、創エネ、蓄エネ、省エネ、活エネ。いずれもインバータをはじめとする電源技術の台頭であり、パワー回路における最適なノイズ対策技術が要求されている。
太陽光発電では、パワーコンディショナという電源が用いられる。ノイズフィルターはこのパワーコンディショナを挟んで、発電パネル側のDC側ノイズフィルター、系統(負荷)側のAC側ノイズフィルターが用いられる。
箱型パワーラインノイズフィルターは、小型で高減衰化を推進するために材料から部品、回路構成まで新しい技術が相次いで開発されている。同フィルターは、一般的にフィルムコンデンサとフェライトコアベースのコイルから構成。高減衰タイプにおけるコイルは平板の銅線を縦巻したタイプ、さらには、フェライトに代わるコア材としてアモルファスやメタル系コアを使用した例も少なくない。最近ではノイズ対策と雷サージ対策を1個で処理できる複合機能型ノイズフィルターが開発された。
インバータに絡んだリアクタやチョークコイルなども新製品開発が活発。いずれもコイルのコア材料、コア形状、巻線工法などの最適化でノイズ対策の最適化を目指している。リアクタは、メタル系コアを採用し、平角線を縦巻きにするエッジワイズタイプの採用が活発化。今後は、スイッチング素子のIGBT化など、高周波化に伴う新たなノイズ対策技術が注目される。
世界的に普及が加速しているスマートフォンやタブレット端末は、これまでの携帯電話に比べ、小型で多機能化しているため、より高度なノイズ対策技術が求められる。
ノイズ抑制シートの利用広がる
その中で、ノイズ抑制シートが注目されている。ノイズを内部に取り込み、シートの磁気損失よって減衰(吸収)させるもの。厚さ25μ―1ミリメートルの極薄で軽量のシートをノイズの発生源や伝搬路に貼るだけで、効果的にノイズを抑制する。半導体パッケージ上への貼り付けをはじめ、フレキシブル配線板のファインパターン上を覆うなど、利用が広がってきた。
ノイズ対策部品は、積層セラミックコンデンサをはじめ、インダクタ、LCフィルタなどが、1005から0603、さらには0402サイズまで小型化が進展。しかも薄さを要求されることから、厚み1ミリメートル以下の超薄型品が充実している。さらには複数ラインのノイズ対策が可能なアレイタイプなどが採用される。コイルでは巻線タイプに加え、積層タイプの小型化に向けた開発が活発化している。
LCフィルターは、最近では薄膜タイプでの品揃えが充実してきた。これは高速差動伝送ラインの対策で有効になるため。コネクタや液晶ラインでは、薄膜LCフィルターアレイの採用が広がっている。