近年の自動車は電子化が飛躍的に進んでいる。「安全」「快適」「環境」「通信」「楽しさ」などをキーワードに、新機能搭載や情報・通信機能拡充、既存機能の電子制御への置換えなどが進み、新たな電子部品需要を創出している。同時に、プラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)などのエコカー需要が本格化しており、車載用電子部品市場は中長期にわたる成長が期待される。
「高周波デバイス」
車の製造現場では、コックピットモジュール、ドアモジュール、シートモジュールといったモジュール生産方式が進み、これらを構成するエレクトロニクスモジュール/ユニットには、様々な高周波デバイス技術が活用される。車の高機能化に伴う高度エレクトロニクス化、統合化、システム化の流れは、車載用高周波デバイスの需要を大きく押し上げている。
車載用ブルートゥースは、ハンズフリーや音楽プロファイルなどの専用ソフトを付加したオールインワンモジュールの開発に力が注がれている。このほか、SDARS受信モジュール、パッシブキーレスシステム、車載カメラモジュール、ETC用RFモジュール、POF―LANモジュール、車載用デジタルTVチューナなどが製品化され、車載用ワイマックスモジュールなどの開発も進んでいる。
「接続・変換部品」
自動車の高機能化により、コネクタ、スイッチ、モーター、リレー、スピーカなどの接続・変換部品の搭載個数も増加している。コネクタは、カーナビ、ETCなどの情報通信機器向けや、アンテナ同軸用、MOSTなど車内光LAN用、カメラモジュール用などの需要が拡大しており、車載用高速データバス対応コネクションシステムの提案が活発。HEVやEVでは、バッテリまわりで高耐圧対応の新たなパワーコネクタが求められ、各社の技術開発が活発化している。スイッチは、車室内の操作系スイッチは、安全性を重視した操作性に優れたスイッチの技術開発が進展している。
人と車の快適なインターフェイスを実現するデバイスとして、車載用タッチパネルの技術革新も進展している。従来の抵抗膜方式に加え、今後はマルチタッチ可能な車載用静電容量方式タッチパネルの搭載も本格化していく見込み。安全性と良好な操作性の観点から、フォースフィードバック機能付き静電容量方式タッチパネルなどの開発も進められている。リレーは、小型のプリント基板リレー開発に加え、HEVやEV向けに、高容量のパワーリレー開発が活発。車載用スピーカは、ブランデッドスピーカを純正で搭載するケースが増加、高級化・高音質化が進む。
自動車燃費改善やEVの航続距離拡大に向け、搭載部品の軽量化も重要視され、素材系メーカーとの連携なども進められている。
「回路部品」
回路部品では、エコカー用のパワー部品開発が活発。モーターを駆動するインバータ用の高圧コンデンサとして、フィルムコンデンサやアルミ電解コンデンサの技術開発が進展している。EV用急速充電器の蓄電用途などで注目されている電気二重層キャパシタは、F(ファラッド)単位の大容量で繰り返し充放電が可能で、環境にも優しいという特徴を持つ。
また、車載用プリント配線板の耐熱信頼性ニーズに対応した各種受動部品開発も進む。車載用に搭載量が増加する各種車載用センサーの技術開発も進展している。
「車載用2次電池」
PHVやEV用などの次世代エコカー用に、車載用2次電池の技術革新が活発化している。従来のHEVでの主流であった車載用ニッケル水素電池に加え、車載用リチウムイオン2次電池の開発競争が一段と活発化、LIB各社では、従来比で出力密度を大幅に向上させることでのバッテリの小型・軽量化や、急速充電・繰り返し充電に適した製品開発、長寿命化、安全性向上、低コスト化などを追求した技術開発に力が注がれている。特に、EVの本格実用化には、1充電当たりの航続距離を大きく伸ばしていくことが大きな課題となる。
次世代の車載用LIB向けに、主要材料である正・負極材や電解液、セパレータなどを手掛ける電子材料メーカーの技術開発も活発化している。