組込みソフトの処理を行うプロセッサは、より多くのソフトを処理できるように高性能化を追求する傾向と、より消費電力を小さく、低コストに処理できるようなプロセッサを実現する傾向と、2つの方向性を中心に進化している。
高性能化では、CPU単体の高速動作化技術とマルチプロセッシング技術の両面で開発が進む。CPUの高速化では、最先端の半導体微細加工技術の導入され、10―11年には、28ナノプロセスを適用してギガヘルツクラスの動作周波数を実現する組込み用CPUが数多く登場する見込み。
複数のCPUを使用して処理量を増やすマルチプロセッシング技術は、同じプロセッサを複数個搭載する技術とともに、処理内容に応じて異種のプロセッサを複数個搭載するソリューションが存在する。
同一プロセッサの複数個搭載は、現在2個のCPUを搭載したデバイスが普及。4つのCPUで構成するクアッドコアの組込みプロセッサも登場してきている。異なるプロセッサを複数搭載するデバイスも多く、携帯電話やカーナビゲーションシステムなどでは無線通信処理、映像・音楽処理、アプリソフト処理を、それぞれの処理に応じたCPU、DSPを搭載する形が定着している。
PLD/FPGAに組込みプロセッサ搭載
プロセッサとともに、プログラム格納用メモリーや各種周辺機能を1チップ化した「マイコン」では、低消費電力化、低コスト化に向けた技術開発が盛んだ。
例えば、バッテリ駆動の機器が普及する中でニーズは強まる傾向にある待機電力の低減化に向けた技術。待機電力低減には、漏れ電流(リーク電流)を抑えるなど低消費電力化を追求した製造プロセスの開発、適用が行われる。その上で、CPUコアだけでなく、メモリー、ペリフェラルを含むデバイス全体の回路を最適化し、待機時に不要な回路への電源供給を遮断するなどシステム的なアプローチで待機時の電力低減を追求。最新の製品では、1μAを切る待機時消費電流を実現する超低消費電力マイコンが登場している。
組込みプロセッサとして新しいタイプのデバイスも登場してきている。これまでは、プロセッサ単体のデバイスや、プロセッサを核とした大規模なSoC、そして汎用性の高いマイコンが主流となった。これに加え昨今では、回路構成をプログラムできるPLD/FPGAに、組込みプロセッサを搭載したデバイスが登場。プロセッサ周辺の周辺機能をユーザーがプログラミングし、カスタムのSoCを短期間に構築できる利点があり、今後、注目が高まっていく見込みだ。
プロセッサ、マイコンの搭載数の増加や高性能化などに伴い、プログラム開発規模も増大、複雑化している。そのためソフトウエア開発を含めた「利便性」へのニーズも高まっている。
ソフト流用で開発の負荷軽く
最も大きな流れの1つが、一度開発したソフトウエアの流用性を高める動き。USBやイーサネットなど用途、機器を問わず、共通の機能が増える中で、機器開発ごとにソフト開発を行うとその負荷は膨大となる。そこで各社は、スペックが異なるマイコンでも互換性を持たせ、ソフトウエアを共通化したり、自動的に各マイコンにソフトを最適化するツールを提供したり、利便性を高める工夫を実施している。
さらに昨今では、マイコンメーカーが、マイコンを動作させるために必要なソフトウエアをあらかじめ開発し、製品とともにユーザーに提供するサービスも定着しつつある。それらソフトウエアの中には、規格・仕様策定団体から認証されているなど完成度の高いソフトウエアも多く、ユーザーは大きなソフト開発負担なしに最終製品にソフトを実装することもできる。ソフト開発に不可欠な開発ツールも数百―数千円と、より手頃な価格ながら本格的な機能を持つ製品も提供されており、組込みプロセッサ、マイコンの利便性、使いやすさは日々進化している。