物質・材料研究機構(NIMS)先端フォトニクス材料ユニットの間野高明主任研究員および定昌史研究員は、量子ドットレーザーの中で、これまで特に作製が困難だった赤色レーザーを、独自の手法によって開発した。
量子ドットレーザーは、低消費電力、高速動作、良好な温度特性など、既存の半導体レーザーを上回ると期待されている。しかし、これまでの作製方法では赤色の領域発光の量子ドットを高均一・高密度に作製することが困難であった。
研究グループでは、NIMSが開発した「液滴エピタキシー法」という量子ドット作製法により研究を進めてきた。今回、さらに特性改善のため次の技術開発を行った。
・遅い速度で結晶化する手法を開発し、均一な量子ドットの自己形成。
・量子ドット下部への2次元層を導入などによる、量子ドットの厚みの均一化。
・高均一量子ドットを5層積層することで、高密度化。
これらの開発技術により、低温における発光の広がりで、従来の154m電子Vから20m電子Vへ大幅な狭線幅化を実現した。また、レーザー発振に寄与する量子ドット数を大幅に増加させ、電流注入によるレーザー発振を実現した。発振波長は約760ナノメートルである。
今回開発した、赤色の波長帯のレーザー光は、安価なシリコン系素子によって高感度な光検出が可能であり、また、空気中の光透過率も高いことから、オンチップ光配線や、自由空間通信などの情報デバイス用高性能光源としての応用が期待される。