ノイズ対策技術、より高度化
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 ノイズ対策技術が進展している。電子機器や自動車は、利用周波数の高周波数化および多様化、信号処理の高速化などを伴いながら、新製品開発が活発化している。また、環境、省エネに関連する分野における新たなノイズ対策部品市場が形成された。そのため、電波暗室を核とした測定ラボにおける測定、評価の受託事業が繁忙。具体的な対策を施すためのノイズ対策部品、計測機器の新製品開発も活発化している。引き続き、世界のノイズ規制に適合した最適なノイズ対策ソリューションが追求される。

 ノイズ対策は、外部に電磁波の影響を及ぼさないEMI対策と、外部から電磁波の影響を受けないようにするEMS対策をあわせたEMC対策が基本。製品の設計、開発段階からノイズシミュレーションを講じていくことが主流となっており、最終製品の段階では世界のノイズ規制に適合した対策を施す必要がある。

 具体的なノイズ対策手法としては、大別してシールディング、フィルタリングがあげられる。シールディングは機器のハウジングなどで塗料、メッキなどでシールドする方法。フィルタリングはノイズ対策部品やノイズ抑制シートなどでフィルターするもの。多くは両技術が施されている。

 最近では太陽光および風力発電、HEV、PHEV、EVといった自動車など、特にエネルギー、パワーエレクトロニクス分野での新たなノイズ対策部品市場が形成されている。これらに共通しているのは、創エネ、蓄エネ、省エネ、活エネ。いずれもインバータをはじめとする電源技術の台頭であり、こうした分野でのノイズ対策技術の高度化が期待されている。

 その中で、箱型パワーラインノイズフィルターは、小型で高減衰化を推進するために材料から部品、さらには回路構成まで新しい技術が相次いで開発されている。同フィルターは、一般的にフィルムコンデンサとフェライトコアベースのコイルから構成。高減衰タイプについては、平板の銅線を縦巻したタイプ、さらにはフェライトに代わるコア材としてアモルファスやメタル系コアを使用した例も少なくない。

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複合機能型ノイズフィルター開発
 さらに最近では、複合機能型ノイズフィルターが開発された。これはLCノイズフィルターに雷サージ、コンデンサなどの機能ユニットを装着した製品。ノイズ対策とともに雷サージ対策も1個のフィルターで処理するもの。

 太陽光発電ではパワーコンディショナという電源が用いられる。ノイズフィルターはこのパワーコンディショナを挟んで、発電パネル側のDC側ノイズフィルター、系統(負荷)側のAC側ノイズフィルターが用いられる。

 さらにインバータに絡んだリアクタやチョークコイルなども新製品開発が活発。いずれもコア材料、コア形状、巻線工法などの最適化でノイズ対策の最適化を目指している。

 LED関連は、屋外表示機、産業用照明など、省エネ、環境をキーワードに様々な分野で普及しようとしている。今後、一般照明、自動車ランプなど、さらに成長が期待できる。このLED分野での電源需要が増加するのは間違いなく、パワーノイズフィルターをはじめ、アクロスコンデンサ、アクティブフィルターなどの市場が拡大する見通し。

 一方、モバイル機器ではスマートフォンの普及に加速がついている。これまでの携帯電話に比べ、小型で多機能化しているため、より高度なノイズ対策技術が求められる。

 ノイズ対策部品は、コンデンサ、コイルを基本にLCフィルターなどが一般的に用いられている。いずれも小型、低背化が求められる。サイズでは0402サイズまで小型化が進展。積層セラミックコンデンサは、小型大容量と低ESL特性を両立したLW逆転タイプ、3端子貫通タイプ、さらには、複数ラインのノイズ対策が可能なアレイタイプなどが採用される。コイルでは巻線タイプに加え、積層タイプの小型化に向けた開発が活発化している。

 LCフィルターは積層タイプに加え、最近では薄膜タイプでの品揃えが充実してきた。これは高速差動伝送ラインの対策で有効になるため。積層セラミックコンデンサと同様にLCフィルターでも複数ラインのノイズ対策を施すことが可能なアレイタイプもコネクタや液晶ラインなどで採用されている。

ノイズ抑制シートに注目
 こうした部品に加え、最近ではノイズ抑制シートが注目されている。ノイズを内部に取り込み、シートの磁気損失によって減衰(吸収)させるもの。厚さ25μ―1ミリメートルのシートをノイズの発生源や伝搬路に貼るだけで、効果的にノイズを抑制するノイズ対策部品(シート)。