物質・材料研究機構・国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の大川祐司研究者、青野正和拠点長らの研究チームは、科学技術振興機構、スイス・バーゼル大学、独・ユーリヒ総合研究機構および米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校と共同で、個々の有機分子に導電性高分子による配線を作成・接続する方法を開発した。
次世代デバイスとして、個々の有機分子に整流やスイッチングなどの電子デバイス機能を持たせる、単分子デバイスの研究が進められてきた。課題は有機単分子に施す分子サイズの細い配線の実現だった。研究グループは、単分子の化学反応を制御できる新しい現象を見いだし、個々の有機分子に導電性高分子を一本ずつ配線する技術を開発。
まず、平坦な分子膜とその上に機能を持った有機分子を作成した。次に、走査トンネル顕微鏡の探針を分子膜上に配置し、電圧パルスを加えると、連鎖重合反応が始まり、導電性高分子である分子の鎖が自発的に成長していく。連鎖重合反応が進行している時の末端は、化学的に極めて活性な状態になるため、配置した有機分子に到達すると、自発的な反応が起こり、有機分子と導電性高分子とが結合した構造が自動的にできることを見いだした。
この新しい単分子化学結合作成方法を「化学的はんだ付け」と名付けた。
写真は機能を持った有機分子としてフタロシアニンを用いて行った、化学的はんだ付けの様子の走査トンネル顕微鏡像。分子膜にフタロシアニンをのせた初期状態(左)、一つのフタロシアニン分子に導電性高分子を1本(中)および2本(右)接続した後の状態。生成した導電性高分子は明るい線として像に現れている。
研究成果は、単分子デバイス回路の実現の道を切り開くものとして期待される。