OKIセミコンダクタは、電池1本で10年間駆動可能という独自のウルトラローパワーマイコンの展開を強化している。従来、特定顧客向けのカスタム品中心の展開から、ここ1―2年は汎用性を高め、幅広い提案を実施。電池駆動小型機器のニーズを捉え、累計1億個の出荷を達成している。
独自の8ビットRISC型CPUコア「U8」を搭載するウルトラローパワーマイコンは、ヘルスケア端末、火災警報器、各種メーターなど電池駆動の小型機器用途に特化し、性能、機能を最適化している。
これらの機器は、動作している時間よりも待機している時間が長いという特徴があり、特に待機時の消費電力低減が要求される。
U8搭載マイコンは、待機時の電力消費で最も大きい要素となるリーク(漏れ)電流を抑える専用プロセスを使用。クロックとタイマー類を動作させたスリープモード時の消費電流を0.5μA以下に抑えている。
さらにリーク電流は、高温になると大幅に増大する傾向にあるが、全温度範囲で消費電流を抑えることができるプロセスであり「U8マイコンを採用したメーカーからは『夏場に放置して機器の電池がなくなった』というような最終ユーザーからの問い合わせが減ったという評価も多い」(藤田尚孝取締役開発本部長)と、単純な数値では表せない長所も備えている。
低リーク電流で1.1V動作
リーク電流を抑えながら、動作電圧は1.1Vと極めて低い点も大きな特徴。低電圧での駆動は、微細プロセスの導入で実現できるが、微細プロセスはリーク電流が増大するというトレードオフを抱える。同社では、低リークのプロセス上で1V駆動で読み出し可能なフラッシュメモリーを開発し、1.1V駆動を可能にした。
1.1Vという値は、LCDパネルの最低駆動電圧1.2V程度を下回る。このため、電卓やヘルスケア端末のLCD表示が消えた後でもボタン操作などの制御も行え、ユーザーに優しい端末が実現できる。
U8搭載マイコンはその圧倒的な消費電力性能により、デジタル式腕時計、ヘルスケア端末、電卓などに幅広く採用され、累計出荷数は過去5年で1億個を突破した。
藤田取締役は「ヘルスケア端末やスマートメーターなど、U8搭載マイコンがターゲットとする市場は急拡大が見込まれる。今後1―2年で1億個の出荷を上積みできるよう開発、提案を進めたい」と話す。
同社では現在、性能を高めた16ビットCPUコア品の開発や、低消費電力無線用高周波回路搭載品の開発を実施。多くのマイコンメーカーが競う「低消費電力技術領域」でのリードを維持しながら、成長分野の電池駆動小型機器市場で高シェア獲得を目指す。