世界規模でエコ、省エネへの関心が高まる中、パワーデバイスの役割は大きく増し、先端技術を用いたパワーデバイスに注目が集まっている。電力変換を行うパワーデバイスは、機器の電力消費・電力損失に直結するデバイスであり、より高性能なデバイスを採用することで、エコ・省エネ化への近道となる。
パワーデバイスでもロジック分野同様、微細プロセス導入によるトランジスタ当たりの電力消費削減を図る。また高効率の電源回路を実現するには複雑、高度な設計技術が必要となるが、パワーデバイスに様々な部品、デバイスを複合化したモジュールタイプのパワーデバイスが登場し、複雑な設計なしに高効率電源回路を実現できるソリューションが登場している。また新たな素材を適用した革新的なデバイスも開発されるなど、多様な方向性から新たなパワーデバイスが開発されている。
[パワーMOSFET]
MOSFET(金属酸化膜半導体・電界効果型トランジスタ)は、スイッチの機能を実現し、ゲートに印加すると、「ON」するという構造。従来のバイポーラトランジスタに比べオン抵抗が大きいという課題がある。このためプロセスの微細化、最適化などによりオン抵抗低減の技術開発が進む。
デジタル家電、携帯電話、自動車などの最終製品においては、高機能化や複合化が急速に進んでいる。これら、高機能化や複合化に対応するため設計の負荷を軽減しながら大きな電圧を効率的に扱える製品への要望が強まっている。
その中で注目を集めるのが、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった新しい材料を用いたパワーデバイスだ。いずれも、従来のシリコン材料に比べ、高速スイッチング性能や高耐圧といった特徴があり、パワーデバイス用途に向いている。各社は、SiCやGaNを用いたダイオード、MOSFET開発を実施。ダイオードについては10年に製品化が相次ぎ、実用段階に入りつつある。MOSFETについても11―12年に本格的な製品化時期を迎える見込みだ。これらの新素材は、太陽光発電や風力発電システムといった新エネルギー分野や、電気自動車/ハイブリッド自動車、鉄道などで不可欠なIGBT(絶縁型バイポーラトランジスタ)に応用することで、大幅な省エネ効果が得られるとされ、期待を集めている。
[DC―DCコンバータ]
機器の電源システムの主流は、従来の電源トランスによる昇降圧方式から、スイッチング電源やDC―DCコンバータへと変わっている。特にバッテリを電源とするモバイル機器ではDC―DCコンバータが多用される。
DCマイナスDCコンバータICは直流を昇降圧するものであり、基板上で電圧を変更する場合に使用される。低電圧/大電流化への対応やスイッチング周波数を高くするとともに、実装面積の省スペース化を実現するため外付け部品点数を抑えた製品などが活発に開発されている。
特に、昨今のCPUなどの半導体デバイスは、低電圧、大電流動作となり、DC―DCコンバータはより安定した電源の供給が求められる。最新の製品では、0.6Vの電源を誤差±1.0%以下の範囲で安定供給できる製品が投入されている。
また昨今のCPUは、消費電力を最大限に抑えるため、処理量に応じて負荷電流を急速に増減させる。そのため、DCマイナスDCコンバータは負荷電流の変化に高速に対応し、安定した電圧を供給する「高速応答性」も不可欠となっている。
またDCマイナスDCコンバータでは、モジュール化の流れも強まる。IC周辺に必要なインダクタなどのICに最適な電子部品をパッケージ内に搭載し、省スペースかつ、軽い設計負担で高効率電源を設計できるとあり、産業機器や通信機器の電源向けのモジュール製品が各社から発売されている。