情報通信研究機構(NICT)は、超高速光通信に向けて光回路での信号合成方式を新たに開発し、高速で複雑な光信号発生を可能とする光変調器を実現。これにより、5倍以上の変調速度向上を達成した。 【図1】変調速度と変調方式 超高速の光変調器 直交振幅変調(QAM)は周波数利用効率が高く、将来の変調方式として期待されていたが、同方式では電子回路での信号合成が必要で信号生成速度が制限されており、従来の技術では2Gボー(1秒に20億回の変調)以下にとどまっていた(図1)。今回、新しい光集積回路により、10Gボーを超える超高速16値QAM変調信号発生を実現する光変調器を開発、伝送速度は、毎秒50Gビットに相当しQAMにおける世界最高変調速度記録を達成した(図2、3)。これは従来の差動4値位相変調(DQPSK)変調器と比較して2倍の光回路集積に相当する。 【図2】16QAM変調器とその動作原理 【図3】50Gb/s 16QAM実験構成図と信号波形 今後は、偏波多重などの技術も併用した毎秒100Gマイナス200Gビットの伝送技術の確立をめざす。占有帯域幅が小さくてすむという特徴を生かし、既存の毎秒10Gビットシステムから毎秒100Gビット対応の高速システムへアップグレードを実現する光通信技術の開発を進め、ネットワークの大きな需要を支える実用技術として開発を進めるとしている(図4)。 この光変調器は帯域利用効率が高いことから、既存システムのアップグレードに役立つものと期待される。 【図4】16QAMと偏波多重の併用による既存10Gbpsシステムの100Gbpsへのアップグレード 【用語説明】 *直交振幅変調(QAM)=光をベクトル的に制御することで、一度に複数のビットの伝送を可能にする技術。信号が占有するスペクトル帯域幅をコンパクトに保ちながら通信速度向上が図れるのが大きな特徴。*差動4値位相変調(DQPSK)=PSKの一種で、隣り合うタイミングの光信号間の位相を4通りに変化させることで一度に2ビットの信号を安定に伝送できる。毎秒40Gビットのシステムでは、実用レベルの送受信装置が開発されている。 <資料提供:独立行政法人情報通信研究機構> |