【写真1】開発中のBluetoothとワイヤレスLANの複合モジュール 市場動向 昨今、スマートフォン、ポータブルゲーム機、デジタルオーディオプレヤー、ノートPCなどの携帯情報端末は、各種機器との連携やインターネット接続を可能とする複数の無線機能の搭載が加速している。 技術動向 【1】複数システムの搭載と機器の小型化一つの機器に複数の無線システムを搭載することが増えているが、機器本体のさらなる小型化も相まって、単機能のワイヤレスモジュールを複数個使用するよりも、スペースメリットのある複合モジュールへの要求が強い。 アルプス電気では、市場要求に応えるべくBlue−toothとワイヤレスLAN機能をワンパッケージ化した複合モジュールの開発を進めている。 現在、開発中の複合モジュールは、従来の当社のBluetoothモジュールUGNZ9シリーズ(縦6.2×奥行き5.25×高さ1.4mm)と、ワイヤレスLANモジュールUGGZ3シリーズ(縦8.9×奥行き8.9×高さ1.3mm)の機能とアンテナ切替用スイッチ、レギュレータを内蔵しながら、小型化(縦9.8×奥行き12.5×高さ1.4mm)を実現した製品である(写真1)。 BluetoothとワイヤレスLANの複合モジュールは、小型化実現の技術としてチップ部品間隔0.1mmの高密度実装と、WLCSP(ウエハーレベルチップサイズパッケージ)のICを高い接続信頼性が実現可能なC4(Controlled Collapse Chip Connection)方式で実装を行っている。 C4方式は、ハンダでパターンとの接続を行うために高速での実装が可能ながら、熱圧着や超音波接合とは異なり、基板やICへの負荷が少ないことが特徴である(図1)。 さらに、他の表面実装方式の部品と同時にリフローでハンダ接合が可能なため、製造コストを抑えることができる。 今後、さらなる小型化のためには、狭ピッチでも実装可能なベアチップや基板への部品内蔵が重要な小型化技術となる。また、回路技術による小型化を図ることも重要である。 開発中のBluetoothとワイヤレスLANの複合モジュールでは、RF部の部品点数を削減するためにBluetoothのICとアンテナ端子のインピーダンス変換回路(バルン回路)をパターン内層で形成し、モジュールの小型化を図っている。 【2】MIMO(Multi Input Multi Output)技術 通信の高速化を実現するため、ワイヤレスLAN(802.11n)、WiMAX、セルラLTE(Long term evolution)では、複数の受信、送信パスを有するMIMO技術を採用している。 【図1】C4方式の実装 MIMO技術とは、複数のアンテナを使い、それぞれのアンテナから異なるデータ(ストリーム)を送信し、これを複数のアンテナで受信することで高速化する技術のことである。 【写真2】開発中の802.11n対応のワイヤレスLANの複合モジュール 【図2】開発中の802.11n対応のワイヤレスLANモジュールのブロック図 今後の展開と課題 今後はWiMAXやUWB、Bluetooth3.0対応のモジュールや、これらシステムと既存のワイヤレスLANやBluetoothのバージョン2.0、2.1との複合モジュールの開発を進めていく予定である。各種無線システムの基板への内蔵化に伴い、互いの干渉や妨害をいかに低減するかが今後の課題となる。 この課題を解決するために、当社では、既に開発中のノイズ抑制用のリカロイTM磁性シートなどを利用して、モジュール内でシステム間の妨害を低減する方法の実現と、各種フィルターや部品の基板への内蔵化を進めていくことで、当社の開発思想であるAlps’SiP(システムインパッケージ)を実現し、携帯機器の小型化に寄与していく。 <金子久幸:アルプス電気(株)通信デバイス営業部> |