【写真】ロームの低抵抗器シリーズラインアップ はじめに 近年、電子機器の高機能化による使用電流の増大にともない、電流検出用低抵抗の重要性が増している。低抵抗を使用し、オームの法則を利用する電流検出方法は原理的に極めて単純であり、カレントトランスで磁場を測定し電流を検知するといった他の方法に比べ、部品構成も単純化、省スペース化できる。 【図1】電流検出用抵抗器の選定と消費電力との関係について [ロームの電流検出用低抵抗のラインアップと今後 の開発状況] ロームでは、これらの要求に応えるため、電流検出用低抵抗の開発に特に力を入れ、ラインアップの拡充を進めている。抵抗体に金属板を用い、1〜10mΩをラインアップするPMRシリーズ(写真)は、6432サイズ(2W保証)から1608サイズ(0.25W保証)まで計6種類の幅広いサイズを展開し、お客様の様々な要求に応えている。 3225サイズ以上では、通常のチップ抵抗器と同様の電極構造によりフィレット形成可能であり、ハンダ接合強度の信頼性を高めるとともに、フィレット自動検査にも対応する。1W以上の比較的高い電力が要求されるLiイオンバッテリ制御(図3参照)や車載用途に使用される。 ノートPCでは、バッテリ駆動の長時間化の観点から低消費電力化が進んでおり、電源制御ICの電圧検出精度の向上とあいまって、検出抵抗の低電力化、小型化要求が進み、3216、2012サイズの要求が高まっている。1608サイズでは従来の同サイズの汎用チップ抵抗器の2倍以上の定格電力0.25Wを保証し、高機能化する携帯電話のバッテリ制御等に使用される。 PMRシリーズでは、超低抵抗領域特有の問題である高周波使用時の寄生インダクタンス成分を低減できるように、チップ内で平滑な電流経路を確保する独自の抵抗体構造を全サイズにわたり採用している。また本構造により通電時におけるジュール熱の局部集中も回避し、放熱性も向上する。 さらに、PMRシリーズで培った技術を応用し、車載用途や産業機器向けの大電流検出用途をターゲットに、より信頼性を高めた長辺電極タイプの金属板超低抵抗PMLシリーズ(写真)も開発している。 通常のPMRシリーズは、車載用途で使用されるFR4基板やアルミ基板と線膨張係数を合わせており、過酷な温度サイクルを経ても電極部におけるハンダクラックは発生しにくいが、長辺電極構造にすることでより信頼性を増すことができる。 加えて、基板との接続面積は増加し放熱性は高まり、6432サイズで最大3W(Ta=25℃時)の保証を可能にしている。 10mΩ以上の領域については、従来の厚膜抵抗技術を応用し、10〜100mΩまでの低抵抗領域をカバーするUCRシリーズ(写真)も2012サイズ、3216サイズで開発が完了した。抵抗体素子の材料と製造方法に独自の工夫を加え、従来の低抵抗品と比較し、定格電力および抵抗温度係数(TCR)を改善している。携帯電話の電源制御やHDD、DVD等のデジタル機器の電源に需要が見込まれる。 さらに車載向けは、温度サイクル時の電極強度改善を目的とし、既に1Ω〜1MΩで製品化している長辺電極チップ抵抗器LTRシリーズ(5025サイズ、3216サイズ、2012サイズ)の抵抗値領域を最小10mΩまで拡大すべく開発を行っている。 【図2】電流検出用抵抗器の使用例1 【図3】電流検出用抵抗器の使用例2 最後に ロームは従来からチップ抵抗器のパイオニアとして、世界最大規模の生産量の維持、確保に努めており、ユーザーニーズにいち早く対応した製品開発を行ってきた。低抵抗領域については、特にここ数年間で急激に需要が増し、また、今後も引き続き需要が拡大していく分野であり、開発体制の強化および要素技術、生産技術開発のスピードアップを図っている。今後も引き続き市場の要求を的確に把握し、新商品の継続的な開発、市場投入を行い顧客の要求に応えていく方針である。<ローム(株) R製造部> |