【写真1】Micro-USBコネクタ 昨今のモバイル機器における小型軽量化の要求はとどまることなく、その高機能化ともあいまって、加速の一途をたどっている。当然その搭載部品への仕様要求も厳しいものとなっており、その高さ、体積、搭載面積の縮小化というこれまでの課題に加え、ことに機構部品では、小さくともその堅牢性は従来品に比べて高いこと、という相反した命題が近年の傾向となっている。 MicroマイナスUSBコネクタの製品仕様 MicroマイナスUSBコネクタの主な製品仕様としては、電気的特性として、定格電流が電源1.8A、信号0.5A、接触抵抗が初期30mΩ、1万回挿抜後変動値±10mΩである。 MicroマイナスUSBコネクタの強度の検討 タイコ エレクトロニクスでは、この小型USB規格“MicroマイナスUSB”に準拠した製品を開発するために、主要顧客からの要求仕様のヒアリングを行い、それに伴う様々な試作により検証を重ねてきた。規定されたコネクタのサイズが小さく、それ自体の剛性に期待できないため、各構成部品の取り合い全体で堅牢性を高めるように考慮し、各部品の製造・組み立て精度もそれに合わせて策定した。 まず、リセプタクルの基板取り付け強度であるが、規格で示されたパッド以外の部分にもホールドダウンを追加して強化している。 しかしながら、単にハンダ付け部を増やすのではなく、それによりコネクタ挿抜時の負荷、特にシェルへのモーメントのかかり方がどのように変化し、影響を受けるのか、測定する必要があった。この検証は、コジリ挿抜に対する耐久性を考慮するために重要であり、そこからシェル自体のジョイントのデザイン、内部サブアッセンブリの寸法、配置、係止方法等に立ち戻り、総体的に解となるデザインを決定していった。ここまでは、通常のアプローチであるが、リセプタクルにもオンボードタイプ、切り欠き基板搭載タイプ等のバリエーションがあり、機械的な使用環境も異なるため、多くの試作を行い、実証する必要があった。 プラグについても同様のアプローチを行い、機械的強度も初期のものから3割程度上昇した。 その次に取り組んだのが、導通を維持しながらのインターフェイスケーブルに負荷されうるストレス荷重への対策・改善である。これは、モバイル環境では特に重要な項目であり、クリアできるストレス値が高くなるほど、信号の瞬断による交信エラーを防げるマージンは当然大きくなる。 この改善をするときには、通常はリセプタクルとプラグのコネクタ端子の嵌合力を高くし、対瞬断の体力アップを図るのであるが、ピンの挿抜によるメッキの磨耗の観点からみると、あまりに固い嵌合は、10K回挿抜保証の性能(本規格中のもうひとつの重要な項目である)に悪影響を及ぼす懸念もあるため、むやみにその方法はとれない。 そこで、いろいろなモードに振った嵌合状態の断面を観察、設計変更を施し、応力の集中する部分を極力排除した。コネクタ全体でそのストレスを吸収し、嵌合が不利な角度に至るのを防ぐようにしたのであるが、ここでは主にプラグコネクタのデザインが見直された。 この検証をするときに想定されたストレス荷重としては、コネクタ嵌合後にリセプタクル側を固定し、プラグのコネクタ胴体部にいろいろな方向の負荷をかけたものや、より現実的な使用状態で測定したいという意図から、プラグコネクタのケーブル端に荷重をかけ、通電の保持を見るといった方法が適用された。 【写真2】ケーブル負荷試験例 MicroマイナスUSB製品の課題 以上、タイコ エレクトロニクスでは、ここまでに述べてきた検討方法により、現況市場から想定される機械的強度に合致したデザインを創出してきたのであるが、最後に、MicroマイナスUSB製品全体の課題として互換性の点があげられる。このシステムがグローバルスタンダードのインターフェイスとして、セットメーカーの垣根を越え広く採用されていくためには、どのサプライヤのコネクタを混在使用しても、同等なレベルで最新の要求を満たすことが求められる。共通デザインとして広く業界に開示されるため、検証の不十分な製品が市場に流出する可能性も高くなり、これまでのカスタムのインターフェイスのような、囲い込みのコントロールによる管理も目が届かなくなってくる。 USBマイナスIFではこのために、これまでのUSBコネクタで施行してきた部品認定制度をこのMicroマイナスUSBにも適用していくことになる。 しかしながら、コネクタサプライヤも1社1社が、他社製品との混在使用が行われても、自社製品側での不具合で全体の性能を落とすことがないよう十分なデザイン検証を施し、互換性を維持するための継続的な努力が必要である。 タイコ エレクトロニクスでは、リセプタクルは標準的なオンボードタイプのBタイプ品、OTG対応のABタイプ品、プラグではAタイプ品、Bタイプ品から量産を開始しているが、様々なアプリケーションに対応した他のバリエーションも順次市場に投入していく計画である。 <植野 良:タイコ エレクトロニクス アンプ(株)> |