【写真1】ニューマティックコネクタ 産業用の製造装置には、製造する対象物に合わせた、様々な動きが求められている。その動きを支えているのが、モーター・エアシリンダ等のアクチュエータ類である。これらは外部から何らかのエネルギーを受けて初めて動作する機器のため、エネルギーの供給側(および制御側)との間に、必ず接続ポイントが存在する。モーターの場合、そのエネルギーは電気であるため、その接続ポイントには過去からタイコ エレクトロニクス アンプ製コネクタが多く使用されている。 しかし、エアシリンダのエネルギーは空気のため、その接続ポイントは弊社ではなく、「継手」と呼ばれるエア接続部品が古くから使用されている。この「継手」はチューブを挿入するだけで接続が完了され、分岐・変換アダプタ等バリエーションも豊富である。また、「継手」メーカー数社による技術・価格競争により、製品単価も非常に安くなっている。 弊社もコネクタを製造する製造装置を自社開発しているが、エアシリンダを多く使用するため、「継手」を随所で使用している。 しかし、ある装置メーカーの設計者から、「継手」に抱いている問題点に関して相談を受けた。その問題点は以下の通りである。 (1)サイズ 現在の「継手」はチューブを外から気密するコンセプトであるため、どうしても継手部分がチューブ径より太くなる。1本であればさほど気にならないが、数十本が同じエリアに固まると収拾がつかないほど太くなってしまう。わざと接続ポイントをずらす等の工夫が必要である。 (2)作業性 大型装置の場合、ユーザーのラインに入ってメンテナンスを行う場合がある。装置の一部のユニットを交換するような作業の際は、そのユニットに接続されている電気的なコネクタや「継手」をすべてはずし、新しいユニットの置き換え後、改めて回路を間違えずにすべての接続ポイントを正確に接続する必要がある。 しかもユーザーのラインをストップした状態での作業のため、時間的な制約もある。「継手」単体で考えるとチューブを差し込むだけなのでさほど負荷もないのだが、それが数十本にも及ぶと大変な作業である。 (3)作業品質 よく、装置を組み上げ電源およびエアバルブを開けると、「シューッ」と言うエア漏れの音がどこからともなく聞こえてくることがある。これは、チューブを規定の位置まで差し込まなかったため、しっかり気密されておらず、そこからエアのリークが発生しているのである。 小型の装置の場合、作業ミスの不具合個所を特定するのは容易だが、大型装置ともなると、その「継手」による接続ポイント数も数百にのぼるため、かなりの苦労が伴う。しかし、出荷前に気づけばそこで修正が可能だが、挿入不足の状態で出荷検査時はリークが認識されず、ユーザー設置後発生するケースもあると言う。 (4)価格 前述した通り、「継手」の価格は、その機能・性能から見ると割安感すら感じさせるレベルまで下がってきていると考えるが、顧客側からはさらなるコストダウンを期待されている。 以上の通り、我々にとっては全く新しい分野の部品に関しての相談ではあったが、少なくとも1人のユーザーが問題意識を持っていることは確かであり、その問題の解決がビジネスチャンスになると確信し、我々にとっては新市場および新技術への開発に乗り出したのである。 【写真2】コンタクト 【写真3】ハウジング ◆開発製品 ある装置メーカーの設計者の問題点を解決するために我々の出した回答が、Dynamic Pneumatic Connector φ4タイプ(以下DPマイナス4)である。 DPマイナス4のコンセプトは、コンタクト(メイル・フィメイル)とそれを収容するハウジング(プラグ・キャップ)から構成される。我々が得意とするコネクタの構造に酷似している。コンタクトをチューブに差し込み、そしてハウジングの中に挿入することで完成する。コンタクトにはメイルとフィメイルがあり、メイル側に気密のためのOマイナスRINGが付けられている。コンタクトとハウジングの関係はユニバーサルコンセプトになっており、メイル・フィメイルどちらのコンタクトでもすべてのハウジングに挿入することができる。 このユニバーサルコンセプトは、うまく使うと誤挿入防止のためのキーイングとしても活用が可能なため、複数個並べて使うときにわざわざ極数を変えたり、色を変えたりする必要がない。 DPマイナス4のシリーズには、2Pと8Pの2タイプがある。8Pは主にユニットからの取り出し、および中継のための固定を考慮し、フランジ部を設けてある。また、分岐のアプリケーションを考え、8Pのパネルタイプには2Pのハウジングが4個収納できるモジュラ構造になっている。 今回開発したDPマイナス4の製品名に、Dynamicが付いている理由は、ハウジングのロック機構のコンセプトを、弊社主力電源コネクタのDynamicシリーズから移植してきていることに由来する。エア接続の際、考慮しなければならないことの1つに、推力と言うものがある。ここで言う推力とは、コネクタを離そうとする力のことで、流すエアの圧力とその断面積により発生する。DPマイナス4は、0.8MPaの圧力まで使用可能なコネクタであるため、8Pコネクタの場合200N以上の推力がコネクタのハウジングにかかることになる。したがって、堅牢および実績のあるDynamicのロックコンセプトを移植することが一番安全かつ近道であったのである。 また、このDynamicのロックを移植したもう1つの理由が、明快なロック音である。通常のコネクタにも要求されることだが、装置の組み付けを行う際、作業者はいつも目の前の作業しやすい環境で接続作業ができるわけではない。手を伸ばした先や、あるいは見えない位置での嵌合作業を行うこともある。その作業の際、頼りになるのが音と手に伝わる振動である。このような作業環境下でも嵌合の完了を告げるロック音を持つDynamicは市場で高い評価をいただいており、今回のDPマイナス4もそれを受け継いでいる。これにより、「継手」で問題になっていた挿入不足によるリークの問題を抜本的に解決出来るのである。 また、メンテナンス時のダウンタイムに関しても、あらかじめコネクタとして組み上げての現地入りが可能なので、現場での作業はコネクタを嵌合させるだけの単純作業で完結できる。同時にコネクタ化およびキーイングも可能なため誤配線の危険性もない。 【図1】ニューマティックコネクタ全体図
◆今後の展開
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