《特集 光デバイス/光測定器技術》

超高速光パケット間インターフェイスを開発

遅延のない超高速データ転送可能に

情報通信研究機構(NICT)は、横河電機、NTTエレクトロニクスと共同で、高速インターネットアプリケーションに用いられる10ギガビットイーサ(10G−Ether)ネットワークの電気信号と、新世代の超高速光パケット交換(OPS)ネットワークの信号(80ギガビット)とを相互接続する新しいインターフェイスの開発に成功した。併せて、全光ラベル処理機能を有する光パケットスイッチプロトタイプを介した100キロメートル伝送実験にこの技術を応用して検証した。

  これにより、光パケットネットワークの超高速性を生かし、汎用性を有するアプリケーションインターフェイスを世界で初めて実現した。

光パケットネットワーク

 NICTでは、将来の超高速・大容量光ネットワークを実現するため、光ネットワーク上のパケットを光信号のまま高速転送する光パケットネットワークの研究開発を進めている。

  そして、これまでに宛先ラベルの認識処理を光信号のまま行い、同時に到着する光パケットの衝突を避けるための光バッファと光バッファを制御するスケジューラを備えた1入出力ポート当たりの最大データ速度が毎秒160ギガビットの光パケットスイッチプロトタイプの開発に世界で初めて成功している。

  しかし、超高速光パケットスイッチと高速インターネットとを直接接続するためのインターフェイスは存在していなかった。


【図1】光パケットスイッチと開発インターフェイスの概念図


超高速パケットネットワークを接続する汎用インターフェイス

 NICTでは、研究開発を進めてきた超高速光パケットネットワークを実際のアプリケーションに適用させるための汎用インターフェイス(図1)を横河電機およびNTTエレクトロニクスの協力のもとに世界で初めて開発した。

  今回開発したインターフェイスは、今後需要が増大する遠隔サーバーへの大容量データの瞬時転送、超高速大容量の情報伝送を必要とする超臨場感コミュニケーション、スーパーコンピュータ間のネットワーク、今後1000万をはるかに超えるFTTHユーザーのデータ瞬時転送などのアプリケーションに光パケットスイッチシステムを用いる際に必要となる技術。

  10ギガビットの汎用データを80ギガビットの超高速パケットに変換することにより、遅延のない超高速なデータ転送とネットワーク資源の有効活用の両立が可能となる。

  新技術は、10ギガビットイーサネット形式の電気信号と80ギガビット光パケット信号の相互接続時に、全光ラベル処理機能を有する光パケットスイッチプロトタイプを介した100キロメートルの光ファイバ伝送を行い、パケット損失10−6以下達成を検証している(図2)。加えて、3D-HDTVビデオストリーム実データ信号の伝送実証実験にも成功している(図3)。

  今後は、光パケット交換技術をネットワークに展開するため、新世代ネットワークアーキテクチャを設計するためのツールとして活用し、ネットワーク機器ベンダーと連携することで、標準化と実用化を目指すことにしている。


【図2】実験評価系


【図3】システムの構成

 <用語説明>
 *10ギガビットイーサネット=IEEEで標準化された通信方式。開発したインターフェイスでは、光ファイバケーブルを媒体に用いた10GBASE-LR、10GBASE-SRという規格の毎秒10ギガビットのイーサネット信号を処理できる。

 *光パケット交換(OPS)=パケット信号を電気信号に変換することなく光信号のまま交換処理する技術。

 *3D-HDTVビデオストリーム=3次元立体映像を表示するために、2台の映像カメラで左右の目に対応した映像を撮影してデータとして流したもの。映像の画質は、HDTV(High Definition Television:高解像度テレビ)に対応。


<資料提供:独立行政法人情報通信研究機構>