産業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門の高密度SI研究グループはこのほど、みくに工業および長野県工業技術総合センター精密・電子技術部門と共同で、LSIチップの高密度実装に用いるピラミッド型の微細金バンプの形成技術を開発した(写真1)。
この技術は、シリコンチップ上へフォトリソグラフィ技術によってレジストパターンを形成し、低温でナノ金属粒子を堆積するガスデポジション法を用いて約10μm角のピラミッド型金バンプを20μmピッチで形成したもの。
形成されたピラミッド型金バンプは、圧着によるチップ接続の際、ピラミッド先端の壊れやすさから、従来の柱状バンプに比べて1/3以下の低加重でチップ接続が可能である。このバンプを用いることにより、LSIチップにダメージを与えることなく高密度実装ができるようになる。
半導体チップを基板に電気的に接続するにはワイヤー接続ではなく、一列に並んだバンプと呼ばれる突起状の端子によって接続する。これはフリップチップ接続と呼ばれ、従来のバンプ形成は主にメッキ法によって行われていた。このメッキ法で形成されるバンプは、ほとんどが柱状で、高密度のバンプ形成には時間がかかるだけでなく、それらを用いたフリップチップ接続では高い圧着荷重が必要となり接続性がよくなかった。
【写真1】試作した10μm角のピラミッド型金バンプの電子顕微鏡写真
【写真2】10μmフォトレジスト開口部(左)とピラミッド型金バンプSEM像
ピラミッド状金バンプの形成
今回開発した10μm角の微細なピラミッド状の金バンプは、シリコンチップ上にポジ型フォトレジストのフォトリソグラフィにより、バンプを形成する個所にバンプサイズ径に相当する開口部を設ける(写真2)。そしてガスデポジション法により、フォトレジストの開口部が塞がるまで金微粒子を堆積すると、開口部内にピラミッド状の金バンプが形成される。
有機溶剤を用いてフォトレジストを除去すると、レジスト上に堆積した不要の金微粒子も同時に除去される。
これらの形成プロセスの各要素技術はすでに確立されていたが、LSIチップ上に形成することを想定して、LSIにダメージを与えないように低温化などを考慮して開発を進めている。
試作したピラミッド形状の金バンプは、10μm角の寸法で20μmピッチ、500個/列であるが、2.8秒/個と高速形成できる。
この試作金バンプの圧縮試験を行った結果、荷重30mNでのバンプの変位量は5μmであった。これは同じ寸法の従来のメッキバンプ(柱状バンプ)に比べて10倍以上の変位量となっている。
フリップチップ接続にこのバンプを使用した場合、非常に小さい荷重でバンプ先端が潰れることから、バンプや対向するパッドの高さばらつきを吸収し、確実な接続を得るのに十分な潰れ量を低荷重で実現できることを示している。
バンプのチップへの接着強度をシェアテストした結果、従来のメッキバンプと同等以上の強度を有し、1000個の微細ピラミッド形状金バンプによる熱圧着試験では、従来に比べて、1/3の加重で十分な接続形状が得られることを確認した(図1)。
先鋭形状のバンプについては、今回の技術以外にメッキ法などによる形成方法が報告されているが、メッキ法と比較して成膜スピードが格段に高く、より高速にバンプ形成ができる。また、フォトレジストの成膜、現像に関しては実績のある通常のフォトリソグラフィの工程が使用できるため、開口部の安定形成に対する信頼性も高いとしている。
狭ピッチのフリップチップ接続に有効
この技術で形成する金バンプは、ピラミッド形状からくる先端の潰れやすさ、および横方向への広がりの少なさによって、狭ピッチのフリップチップ接続において有効で、フリップチップ実装においてバンプのさらなる狭ピッチ化、高密度化に向けて有望な技術である(図2)。製造プロセスも通常のフォトリソグラフィ技術を用いることから汎用性が高くMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの分野への応用も考えられる。
また、四角形のフォトレジストパターンを用いることで、ピラミッド型の錐形状バンプを形成しているが、このパターンを変えることで任意の微細錐形状バンプを作製することもできる。今後はバンプ形成専用の装置開発も含め、さらに研究を進めていくことにしている。 |
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<用語説明>
*ガスデポジション法
不活性ガス中で試料を蒸発させナノサイズの微粒子を生成し、その不活性ガスをキャリアガスとして高速で基板へ衝突させて成膜する蒸着技術。今回の研究では、産総研の前身である機械技術研究所で、このガスでポジション技術を超微粒子の微細成型技術として応用したジェットモールド装置を用いて行われた。
<資料提供:独立行政法人産業技術総合研究所> |