■はじめに ■携帯機器に最適な超小型スイッチング
電源IC「BD9122GUL」(写真) 1.超小型パッケージ(1.1mm×2.5mm)に搭載 BD9122GULは、携帯機器に特化するためパッケージの小型化を追求し、8ピンのチップサイズパッケージ:VCSP50L2を採用した。また、従来のスイッチング電源のコントローラだけでなく外付けに必要であったパワーMOSFETも内蔵し、外形寸法を1.1mm×2.5mm(Typ.)、高さの面でも0.55mmMax.に抑えたことにより、さまざまな携帯機器に搭載可能となっている。パッケージだけでなく、スイッチング周波数は1Mヘルツで高速動作するため、外付け部品も小型の2.2μHチップコイル、10μFセラミックコンデンサを使用することができる。 そのためアプリケーションを含めた実装例として約4mmの範囲にすべてが実装でき、その面積でも20mm2 を実現できるため携帯機器の省スペースに最適である(図2)。 2.全負荷領域で高効率94%を実現 携帯機器ではバッテリ寿命を延ばすため、負荷電流が多い動作時だけではなく、待機時の電力も含めて電力を軽減する必要があり、全負荷の領域で高効率を求められる。本ICは同期整流方式でかつ低ON抵抗のパワーMOSFETを内蔵しているため、負荷電流の多い領域で最も高効率である(94%高効率、Pchマイナス0.3Ω/Nchマイナス0.2Ωを内蔵)。 また、負荷電流が数mAと少ない領域でも効率を維持するため、独自のSLLMTM(Simple Light Load Mode)制御を採用し、スイッチング動作を間欠的に動作させることにより、待機時においても高効率を達成している(図3)。 3.高速応答により低電圧出力でも出力電圧降下改善 LSIの微細化にともない電源電圧が1.2Vや1.0Vに低電圧化し±5%精度(出力電圧1.2Vであれば±60mV)が求められる中、負荷電流の急変も含めた上でその精度が要求されている。本ICはその負荷急変に対応すべく、電流モードPWM制御を採用し高速応答を実現した。従来の電圧モードではその応答性の悪さから電圧降下が60mV以上あったが、本ICでは30mV(1.2V出力の場合、負荷電流変化100mA→300mA時)に抑えた(図4)。 4.その他の特徴 入力電圧は2.5Vから5.5Vでリチウムバッテリに対応。出力電圧は可変タイプで1.0Vから2.0Vまで設定可能。出力電流は0.3A。スタンバイ機能としてシャットダウン回路電流は0μA(Typ.)になる。 保護機能としても充実しており、異常発熱時に回路をシャットダウンさせる温度保護機能や、出力短絡や過電流からICを保護する出力短絡保護、過電流保護機能、電源起動時に突入電流を軽減するソフトスタート機能、低入力誤動作防止機能を内蔵し、さまざまな異常動作にも対応できる仕様となっている。
■パワーMOSFET内蔵スイッチング
レギュレータ電源ICシリーズ 今回紹介したパワーMOSFET内蔵スイッチング電源IC「BD91XXシリーズ」は、今後さらに要求の高まってくる様々な電子機器回路の小型化、高性能化に最適な仕様となっている。ロームでは市場ニーズにあったスイッチング電源の開発、シリーズ拡充を進め、電子機器市場の拡大に貢献していく方針である。 <ローム(株)LSI商品開発本部> |