産業装置専用の電源用コネクタとして開発されたダイナミックシリーズは、お客様の強いご支持のもと、約20年という年月を経てもなお、産業装置における標準コネクタとしてご愛顧いただいているロングセラー製品である。 ■豊富な種類
【写真1】D-1100シリーズ ◆D-1200シリーズ AWG18まで適用可能な幅広いレンジに対応のシリーズで、ピッチは2.5mmである。産業装置の内線規定は、規格を見てもAWG18は必須であるところが非常に多い。D-1200シリーズは盤内での結線用途にも適用できるスペックである。UL1007まで適用可能なことから、十分ご満足いただけるシリーズとなっている。極数は、2〜20Pと比較的小極数をカバーしている(写真2)。 【写真2】D-1200シリーズ ◆D-1500シリーズ センサー・アクチュエーター用途 3Pの信号をモジュールとして、基板側コネクタに集合結線させる方式のコネクタで、すべてのコンタクトレンジに適用可能である。ピッチは少し大きい3.5mmでありながら、基板コネクタに外壁があるため、指等の金属部への接触を防止している。 基板側のコネクタは、2列、3列タイプを標準的に開発しており、今後需要に合わせてラインアップを整えていく(写真3)。 【写真3】D-1500シリーズ ◆D-1900シリーズ スプリングタイプの併用 端子台からコネクタ化に変貌を遂げた盤内配線ではあるが、対お客様とのインターフェイスに一部専用工具不要な結線が要求される場合もある。これに応えるべく、スプリングクランプタイプをご用意。同一基板側コネクタに、スプリングクランプタイプと同様に、通常の圧着タイプコネクタの嵌合が可能な製品を提供する。これにより制御装置メーカーは、同一基板レイアウトで、アプリケーションによる結線方法の選択が可能であり、より現実的にコネクタ化を進めることができる。製品は、8P、12P、22P、36Pをラインアップ。今後もお客様のご要求に従い、ラインアップを充実させる(写真4)。 【写真4】D-1900シリーズ 現時点ですべてのシリーズが出揃っているわけではないが、制御機器内部において多くの実装が可能となる。今後の新たなシリーズ展開に是非ご期待いただきたい。 ■接触信頼性の高い接触コンセプト 民生品でよく見られるのは、角ポスト構造。価格だけを考慮すれば必然とも思われる選択を、D-1000シリーズはあえて捨てている。接触信頼性を考えると幅の広いエリアでの接触が望ましいからである。コンタクトはタブ・リセ方式で、完全にボックスに囲まれた内部のバネにより接触をしているダイナミックおなじみの構造をとっている。適用電線レンジもAWG30-18と幅が広い。錫メッキ製品も合わせてラインアップしているので、信号品質とコストから、最適なコネクタの選定が可能である。 ■扱いやすさの探求 扱いやすさは、コンタクトを圧着してから嵌合にいたるすべての工程に関係する。コンタクトをとるためのランスは、ハウジング内部にあるため、コンタクト同士が絡むことを防いだ絡み防止機構や、圧着コンタクトをハウジングに装着する際のはっきりとした装着感覚は、半装着等の事故を未然に防ぐ。さらに、コネクタの嵌合時の明快なロックフィーリングは、価格優先コネクタと一線を画す仕上がりとなっている。 また、隣接極数(例えば、20Pと22P)同士で誤って嵌合しないようにコネクタをデザインしており、万が一誤って嵌合を試みても、コンタクトのピンにすら触れないデザインを踏襲している。当然のことながら、嵌合方向性を誤った場合も同様である。より確実な結線を実現するために、ダイナミックはキーコンセプトを採用しているが、D-1000シリーズではより積極的な提案をしている。 キーコンセプトは、同一極数においても2種類の使い分けが可能(X、Yキー)を意味しており、XキータイプはYキータイプには決して嵌合しない。同じ極数にも関わらず、である。 さらに今まで導入を見送っていた、色による積極的な識別にも踏み切った。標準色の黒以外に、ナチュラル(白系統)、黄色をご用意している。キーとの組み合わせで6種類の使い分けが可能となる。今後もご要求に合わせてラインアップの拡充を図る考えだ。 【写真5】圧着ツール ■圧着工具にも一工夫 通常、コネクタは専用工具が必要である。ダイナミックD-1000シリーズも例外ではない。しかしながら、より低価格の工具(特にサービス、メンテナンスで必要な手動工具)の販売を実現するため、新たにダイセット交換タイプの圧着ツールを導入し、好評を得ている。 このツールは、D-1000シリーズのみならず、D-1000シリーズからD-4000シリーズ(1コンタクト23A程度の大電流用コネクタ)の圧着を一つのハンドルで対応できる。ダイスの交換は必要ではあるが、保管スペースを最小化でき、ダイスを含めた工具単価はこれまでの約半額と破格なため、初期コストも非常に抑えられるといった利点もある。 D-1000以外のダイナミックコネクタの圧着が可能であることから、すでに導入されている工具のリペアの際に本工具を導入いただくことを考えれば、現時点でのD-1000シリーズ導入によるハンドルの導入は、未来に向けた投資と考えても大きな負担にはならないはずである(写真5)。 <三村泰幸:タイコ エレクトロニクス アンプ (株)インダストリアル本部マーケティング部> |