携帯電話用 アルプスの反射形TFTカラーLCD


■屋外での視認性を大幅改善 周囲の光を効率的に集める新反射板採用

 アルプス電気はこのほど、屋外での視認性を大幅に改善した携帯電話用カバー一体形フロントライト付き反射形TFTカラーLCD「LPUシリーズ」を開発した(既報)。周囲の光を効率的に集める独自の非対称反射溝加工を施した反射板と、新開発のカバー一体形フロントライトとの組み合わせにより、理想的な全天候型ディスプレイを実現する。フロントカバーとフロントライトの一体化により、薄型化を図った。セットの低消費電力化にも貢献する。
  携帯電話は、高機能化の進展に伴い、いつでもどこでも使用可能な情報端末としての位置付けが確立されている。携帯電話で、画像や文字、地図など、グラフィック情報を利用・確認する場面は、屋内・屋外を問わず増えてきている。
  携帯電話用LCDの表示方法は、透過形、半透過形、反射形がある。透過形は、液晶の後ろ面からLEDなどによる光を当て、文字や画像を表示する方式。反射形は、液晶の表面に当たる自然光や、LEDなどの光を反射させて利用し表示する方式。透過形と反射形の2つの特徴を持つものが半透過形となる。
  現在の携帯電話用LEDは、透過形が主流で、屋内や暗い所では鮮明に画像や文字を表示できるが、屋外では、外から入る太陽光などの光がLEDより強いため、人間の目には「画面が見にくい」という現象が起こる。これに対し、屋外でも鮮明な表示が可能なのが、反射形LCDとなっている。



【写真1】アルプス電気の携帯電話用反射形TFTカラーLCD「LPUシリーズ」

<電力の確保が課題>
  さらに、携帯電話向けワンセグ放送をはじめ、音楽再生など、携帯電話で実現可能な機能が増加していることにより、それを実現するための電力確保も課題となっている。
  LPUシリーズは、これらの要求に対応して開発したもの。同社独自の微細機械加工技術、光学シミュレーション技術を駆使することにより、周囲の光を効率的に集める非対称反射溝が加工された反射板を使用し、標準白色板に光を反射させた時と同等の輝度を実現した。
  人間が携帯電話のディスプレイを見る場合のアングルを考慮すると、従来の携帯電話用反射形ディスプレイは、無駄な方向への光の反射があったが、これを改善し、「反射する光を効率的に人間の視線に集められるようにした」(松岡幸信ペリフェラル事業部第2技術部長)。できるだけ周囲の光を活用することで、従来形の反射形ディスプレイ以上に低消費電力化に貢献する。

<奥行き感を解消>
  最適な反射のため、LPUシリーズの反射板表面には、直径10マイクロメートル、深さ500―1500ナノメートル程度の、微細なくぼみが加工されている。
  携帯電話への搭載を見据え、液晶保護目的のためのフロントカバーと、補助光源であるフロントライトを一体化した。従来、反射形液晶はフロントカバーの下にフロントライト部を配置するため、ユーザーが画面を見た時、余分や奥行き感が存在したが、これらを一体化させたことで、この奥行き感を解消した。一体化によりLCD自体の薄型化を実現し、セットの薄型化(バックライト方式より約30%、従来の同社フロントライト方式より約20%の薄型化)に貢献する。
  用途は、携帯電話、MP3プレヤー、デジタルカメラなど。精密金型加工・成形技術により、高性能・高品質の製品の安定供給を行う。
  生産は、ペリフェラル事業部小名浜工場(福島県いわき市)で行い、07年の第2―第3四半期からの量産開始を目指す。



【図1】LPUシリーズの反射板表面の反射溝拡大図

 



【表1】LPUシリーズの仕様