自動車向け 高信頼性パワーマネジメントIC


■市場の動向

  近年、自動車のエレクトロニクス化が進み、自動車に搭載されるLSIは増えている。今後さらなる安全性、快適性、環境性能を求めてクルーズコントロール、バック/サイドモニター、外部との情報ネットワークの高度化など、さまざまな車の機能アップによって搭載されるECU(Electronic Control Unit)も増えると考えられる。また、ECUの性能も高度化して回路もより複雑になり、ハイブリッドカー、燃料電池車、電気自動車など次世代の自動車の実用化も進んでおり、自動車1台当たりに搭載されるLSIは飛躍的に増えていくと予想される。

  この自動車用LSIで要求されるのは高い信頼性である。また、ECUの増加によりバッテリへの負荷が増大しており、キーオフの状態でも動作するECUも増えているためバッテリ上がりの要因となるので、ECUの低消費電力化の要求が強くなっている。このような市場の動向に即し、必然的にECUに搭載されるLSIも低消費電力化の要求が強くなってきている。

  本稿では、このような市場動向に合致した高信頼性のロームの自動車用パワーマネジメントLSIを紹介していく(写真1)。



【写真1】ロームの高信頼性自動車用パワーマネジメントLSI


■高信頼性パワーデバイスへの取り組み

  自動車向けのパワーデバイスで特に重要視されている性能として、低消費電力化と高信頼性の2点が挙げられる。

<低消費電力化>
  ロームの自動車用パワーマネジメントLSIは、すべてこの低消費電流の考えに基づいて開発を行っており、出力トランジスタにDMOSを用いた回路技術により超低消費電流化を実現した。レギュレータであれば高耐圧の500mAタイプで30μA(Typ.)に消費電流を抑えることを実現している。また、出力電流の少ないスタンバイ時の消費電流だけではなく、動作時の消費電流の増加も抑えている。出力トランジスタがバイポーラトランジスタであれば出力電流が増えるにつれて消費電流が増加するが、DMOS回路技術により、出力電流増加による消費電流の増加も抑えている(図1)。



【図1】回路電流一負荷電流特性図

  この消費電流の増加は負荷に流れない無効電流が増加することであり余計な発熱の要因となる。とくに自動車用のLSIでは高温での動作を要求されるためチップの保証温度を超えないようにLSIの発熱を抑える必要がある。無効電流を抑えることにより、LSIのチップ温度の上昇を抑え、また、チップ温度の上昇を抑えることはチップの劣化を抑えることになり、高信頼性を実現することとなる。

  さらに、レギュレータについては独自のDMOS回路技術と位相補償技術により、出力コンデンサのセラミックコンデンサ対応化も実現しており、外付け部品の小型化と高信頼性を実現できる。

<高信頼性>
  従来の過電圧保護、過電流保護、温度保護回路に加え自動車向け特有の保護回路としてバッテリ逆接保護回路を有している。バッテリ逆接保護回路は、誤ってバッテリのプラス/マイナスを逆に接続してしまい、LSIの電源端子マイナスGND端子間に逆電圧がかかることによりGNDから電源端子に逆流する電流を抑える。また、何らかの要因でバッテリが瞬断した時に、出力端子の電圧は外付けコンデンサの容量により電圧が保持されている状態で、電源電圧端子の電圧が落ちて出力端子の電圧より低くなった場合に出力の容量から電源端子に逆流する電流を抑える。これらの電流はダイオードを通じて流れるためダイオードに電源電圧や出力電圧がかかることとなり、過大な電流が流れてLSIが破壊する可能性がある。この逆流電流をバッテリ逆接保護回路により抑えることでLSIを保護する(図2)。



【図2】バッテリ逆接保護回路図

  また、通常LSI単品に求められる静電破壊耐量はHBM(人体モデル):2000V、MM(マシンモデル):200V程度であるが、ロームは独自のクランプ回路を採用。さらに電源/GNDラインの引き回しの強化、内部素子と静電破壊保護素子の耐圧チェックシステム導入により、HBM:4000V以上、MM:400V以上という十分な耐量を実現し、高い信頼性を確保している。

■自動車用パワーマネジメントLSIのラインアップ

  ロームは、自動車向けパワーデバイスの開発を始めてから製品のラインアップを増やしてきており、市場での実績も着実に積み重ねている。現在、ロームのパワーマネジメントLSIは特にボディー系、ITS、カーエンターテインメント向け用に以下のような製品をラインアップしている。