小型メモリーカードとコンバインコネクタ


<昨今の市場動向>

昨今、携帯情報端末機は高機能化しており、必要とするメモリーの容量も多くなってきている。また、セット機器間の接続のための橋渡しとして外部メモリーが使用できるように、メモリーカードスロットを搭載するケースも多くなってきている。とくに携帯電話への小型カードスロットの搭載率は際立って多くなってきている。また、搭載されるメモリーカードの大きさも、一部SDカードサイズからminiSDカードサイズやmicroSDカードサイズへと移行してきている。

これらの新メモリーカードの登場は、既存のメモリーカードとともにメモリーカード市場のさらなる拡大を促すものと見ている。これに伴い、複数種類のメモリーカードに対応するコンバインタイプコネクタの需要も拡大してきている。

今回は、小型メモリーカード用コネクタ、およびコンバインタイプコネクタの特徴と製品に配慮しているポイントについて紹介する。

<小型メモリーカード用コネクタ開発状況>

【コンバインタイプコネクタ】

コンバインタイプコネクタは、数種類の形状の異なるメモリーカードを挿入した時、カード位置は同じであることが望ましく、メモリーカードを挿入した時のカードの終端位置は同一とすることで、寸法設定・使い勝手を良くできるよう差別化している。挿入時のメモリーカード終端位置を揃えることで、メモリーカードがきちんと挿入されているかをユーザーが容易に確認できることに加え、メモリーカードを挿入したままでも筐体から出っ張らないようにすることで(エクステンドカードを除く)、持ち運び等の利便性向上においてもセット設計への貢献ができると考えている。

アルプス電気のコンバインタイプコネクタでは、ユニークなカム機構を内蔵することによって、短いメモリーカード用の端子が長いメモリーカードの挿抜時にカード表面を強く擦ることのないように配慮した。

メモリーカード排出方法は使いやすい、メディアプッシュプッシュタイプとし、挿入排出時も好感触・高操作性を実現している。メモリーカードと接触する端子はスタンダードマウントタイプ、リバースマウントタイプともに端子を座屈させない独自の構造を採用している。

メモリーカードの挿入を検出するスイッチは独自のしゅう動タイプを採用しており、ほこり・塵などの侵入や振動等に強く、接触信頼性が高い。

現在、SDメモリーカード、マルチメディアカード、メモリースティックに対応した、SCDBシリーズ(写真1)に加え、xDピクチャーカードにも対応したSCDEシリーズ(写真2)をラインアップしており、他社に先行した開発・提案を行っている。


〔写真1〕SCDB 3in1コネクタ


〔写真2〕SCDB 4in1コネクタ

【microSDカード用コネクタ】

メモリーカードサイズの小型化が進んでいる中、使い勝手を重視し、操作方法・実装方向の違う各種タイプコネクタを開発した。

SCHBシリーズ(写真3)は、セット側で任意の場所に配置でき、コネクタ上側からメモリーカードを装着、ヒンジカバーをカードスライドさせる。


〔写真3〕SCHB microSDヒンジタイプ

スライドさせた時のクリック感によって、メモリーカードが確実に装着されたことが分かるヒンジカバータイプとなっている。

SCHA1Aシリーズは、メディアプッシュプッシュタイプで、3mmのカード排出量を確保、カード装着時およびカード排出位置で、メモリーカードが抜け落ちない独自のカードロック機構を採用し、メモリーカードの落下等を防止している。
また、しゅう動タイプの接点機構を採用しているスタンダードマウントタイプのSCHA1Bシリーズ(写真4)およびリバースマウントタイプのSCHA2Bシリーズ(写真5)もラインアップ。


〔写真4〕SCHA1B microSDスタンダードタイプ


〔写真5〕SCHA2B microSDリバースタイプ

メモリーカードの挿入を検出する小型ダブルトーションばねを使用し、固定端子はメモリーカードと接触する端子と同じ部材から構成、そのハウジングにインサートされた端子とダブルトーションばねでスイッチを構成し、少ないスペースでスイッチ機能を追加している。

スイッチのアクチュエータ部(メモリーカードとの接触部分)はモールドで囲い絶縁した。これら各種バラエティを取り揃え、製品の特徴付けと選択の自由度を上げている。

【各種アダプタカード】

miniSDカード、microSDカードなどはアダプタカードを介することで、SDメモリーカードホストの付いた各種機器との接続が可能となる。

アダプタカード内部には独自のカードロック機構を内蔵、アダプタカードに挿入されたメモリーカードは抜け落ちない。

アダプタカードは、堅牢構造で、捻り等により剥離などが発生しないよう配慮している。miniSD-SDアダプタカード(写真6)、miniSD-SDアダプタカード(写真7)に加え、新しい要求のアダプタカードの新規開発を行っている。


〔写真6〕SCJC1A miniSD-SDアダプタ(ラベルはカスタム対応)


〔写真7〕SCHC microSD-SDアダプタ(ラベルはカスタム対応)

【ロバスト性に優れた製品開発】

メモリーカードの小型化もさることながら、それに伴うコネクタの小型化・薄型化により、コネクタも樹脂の薄肉化が進んできている。

薄型化に当たっては、強度・流動性等の面から最適な樹脂の選択を行い、ゲートの位置の選択および流動解析シミュレーションの活用による成形での反り・変形の予測・ウエルドの位置もコントロールし、最適化を図っている。

接点等で用いるばねは、応力・加重の設定において、応力解析シミュレーションにより、メモリーカード挿入時の接点のたわみ・挙動を事前に把握することで、信頼性の高い安定した接点ばね形状を実現した。

また、高周波領域で使用するコネクタには、電磁界シミュレーションにより線路長・形状の最適化を行っている。

このようなシミュレーション技術と品質工学を使うことで、ロバスト性(市場でのいろいろな使われ方に対する機能の安定性)に優れた構造を実現している。

<今後の市場動向と当社の取り組み>

小型メモリーカードとしては、メモリースティック、メモリースティックDuo、メモリースティックマイクロ、SDメモリーカード、miniSDカード、microSDカード、マルチメディアカード等、数多くの小型メモリーカードが登場してきた。

新規格の小型メモリーカードに対応する専用のコネクタの需要が増加することは当然として、それぞれの機器間をつなぐアダプタカードの需要も増加する。また、利便性の観点から、数種類のメモリーカードに対応したコンバインタイプのコネクタの要望も増えてくると予想しているので、その市場の要求を捉え、新しいコネクタを創出していく予定である。

※ 記載されている商品名は、各社の商標または登録商標です。
 
<小口亙:アルプス電気(株)コンポーネント事業部第5技術部設計12G>