セットの技術革新が進展し、製品のライフサイクルが早まる中で、コネクタメーカー各社は、要素技術を含めたR&D強化への取り組みを一段と強めている。コネクタのグローバルな競合が進む中、専門メーカーとして、差別化された製品をいかにタイミングよく市場に投入していけるかが成長のカギを握る。微細化技術に加え、高周波技術等を組み合わせた、より付加価値の高い製品開発が進展している。同時に、コネクションテクノロジをベースとした応用展開なども進む。各社が事業を展開する市場も民生や産機等の垣根がなくなりつつあり、より広範な市場を対象とした展開が目立っている。各社がR&Dの重点分野に掲げる製品について最近のトレンドや今後の展開を紹介する。 ■各社、開発・量産体制の構築へ 新仕様サイズ対応、さらに薄型をめざす <クオータサイズメモリーカード用コネクタ> カード用コネクタメーカー各社は、携帯電話搭載用メモリーカードの次世代仕様である、マイクロSDカードやメモリースティックマイクロなどに対応したクオータサイズメモリーカード用コネクタの開発、量産体制構築を急いでる。携帯電話搭載用のメモリーカードは、現在はminiSDカードやメモリースティックDuoなど、従来のSDカードやメモリースティックの半分程度の大きさのカードが主流だが、04年後半から05年にかけて、さらに実装面積や薄型を追及した新仕様のメモリーカードが相次ぎ発表された。 新仕様のカードには、マイクロSDカードやMMCマイクロ、メモリースティックマイクロなどがあり、いずれも通常のSDカード、マルチメディアカード、メモリースティックなどの4分の1サイズ(クオークサイズ)程度の実装面積を実現している。 これらのカードは、いずれも海外市場向け携帯電話を皮切りに本格搭載が進んでいく見通しで、中でもマイクロSDカードは米モトローラを始め、複数の携帯電話メーカーが今春以降、搭載機種を本格的に立ち上げていく見込みとなっている。 カード用コネクタメーカー各社は、これらのクオータサイズメモリーカード用コネクタを、重点製品の一つに位置付け、差別化を追及した製品開発や、イジェクトバリエーション拡充、急激な増産に対応できる量産体制構築などを推進する。 ■ファインピッチ化や低背化を追及 多極・高信頼性の製品開発 <基盤対基盤・FPCコネクタ> 携帯電話をはじめとするモバイル機器の小型・薄型化・高性能化の進展や、ディスプレイユニットと基盤接続の複雑化などを背景に、基盤対基盤コネクタやFPCコネクタへの狭ピッチ・低背・多極化ニーズに拍車がかかっている。 このため、各社ではファインピッチ化や低背化を追求し、かつ多極で信頼性の高いコネクタ開発に一段と力を注いでいる。 携帯電話搭載の基盤対基盤用コネクタは、主流が0.4ミリピッチ品に移行しつつある。コネクタ各社は、0.5/0.4ミリピッチ基盤対基盤コネクタの多極化や低背タイプのラインアップに注力しており、0.4ミリピッチで高さ0.9ミリ/0.8ミリなどの狭ピッチ・超低背基盤対基盤コネクタの製品化が進んでいる。 FPC(フレクシブル・プリント・サーキット)接続用コネクタは、0.5/0.3ミリピッチなどのファインピッチ品のラインアップ拡充が急速に進んでいる。 FPC用コネクタは、携帯電話、DSC、DVCなどの小型機器で大きく需要が増加。各社は低背化や極数バリエーションなど積極的な製品開発、品揃え強化を推進する。高さ0.9ミリ/0.85ミリなどの超低背FPCコネクタも製品化され、将来を視野に、高さ0.5ミリメートル程度の超低背化をターゲットとした技術開発も進んでいる。 より狭ピッチ化を追求した0.2ミリピッチFPCコネクタの製品化も進み、一部、モバイル端末向けに量産が始まっている。特殊用途として0.4ミリピッチ品も製品化されている。 コネクタの狭ピッチ・低背化には、接触信頼性、機械的強度、作業性などにおいて、従来品と同等以上の性能を確保できる構造設計が必要。各社は要素技術を生かした独自技術の開発に注力している。 ■ハイエンド携帯電話への搭載広がる 0.3ミリの狭ピッチタイプも登場 <極細線同軸コネクタ> 液晶搭載機器の小型・高性能化や需要増大を背景に、細線同軸コネクタの需要が増加している。 従来は、細線同軸コネクタの市場は、ノートPCのLCD接続用途が中心だったが、ここ1-2年で、国内のハイエンド携帯電話への搭載が本格化し、海外モデルの携帯電話への搭載も広がりつつある。 極細線同軸コネクタでも0.4ミリピッチの狭ピッチ品が製品化され、最近は0.3ミリピッチの狭ピッチタイプも登場。携帯電話のLCD接続用途を中心に需要が拡大している。最近のハイエンドカメラ付き携帯電話は、従来の2つ折りタイプの折りたたみ式携帯電話と比軟して、端末の液晶部分と基板との液晶部分に複雑な動作(回転など)が求められているため、通常のFPCからの代替として細線同軸コネクタの需要を創出している。現状では携帯電話全生産台数に占める細線同軸コネクタの搭載比率はまだ少数に限られるが、携帯電話の高性能化に伴い需要拡大が見込まれており、コネクタ各社の開発競争も活発。極細線同軸コネクタヘの参入メーカーも増える傾向にある。 携帯電話用の極細線同軸コネクタは、コネクタ幅をスリムとすることで、ケーブル結線後に小径のヒンジを通すことを可能とした製品なども開発されている。 細線同軸コネクタのアプリケーションは、ノートPCや携帯電話のほかにも、DVC、監視カメラ、ポータブルDVDプレヤー、遊戯機器(パチンコ/パチスロ)、医療関係など用途が広がりつつある。現状では、ノートPCや携帯電話での細線同軸コネクタの搭載率は、数%から十数%とみられるが、機器の小型・高性能化に伴い、搭載率の向上が期待されている。各社では、セットの要求に対応した0.4/0.3ミリピッチ極細線同軸コネクタのバラエティ拡充を進めるとともに、コネクタ幅の縮小や、嵌合高さの低背化、狭ピッチ化などに向けた技術開発を進めている。 ■カーナビ普及で需要拡大 変異量最高レベル品の製品化も <フローティングコネクタ> カーナビなどの機器では、実装ズレや基板同士をネジ止めする際に起こるズレを吸収できるフローティングコネクタが求められている。コネクタ各社は、狭ピッチ・多極で大きな変位量に対応可能な高性能フローティングコネクタの製品開発が活発となっており、最近は、0.5ミリピッチでXY方向にプラスマイナス0.5ミリメートルの変位量を持つ最高レベルのフローティングコネクタが製品化されている。 カーナビでは、振動や2個使いの位置決め、組立てなどを理由にフローティングコネクタが要求され、狭ピッチかつフローティング量の増大が求められている。 フローティングコネクターは接触部(可動側)とハンダ付け部(固定側)との2パーツで構成され、コンタクトでつながれる。 接触部側が可動した際、ハンダ付け部に負荷が加わるが、インシュレータ両端に固定金具を付けて、負荷を軽減している。 コネクタ各社は、微細精密加工技術や高信頼接触技術などを駆使して、狭ピッチでかつ十分なフローティグ量を確保した製品開発に注力している。極数バリエーションやスタック高さのバラエティや、スタック実装タイプ、垂直実装タイプなど、品揃え拡充を推進している。 フローティングコネクタの用途は、カーナビだけでなく、事務機、各種産業機器などがあり、カーナビの世界的な普及拡大や新用途の創出により今後も需要拡大が期待されている。 ■インフィニバンド対応品やシリアルATA対応用も <高速シリアルインターフェイス> SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)における高速T/0系シリアルインターフェイスとして、インフィニバンド対応コネクタやシリアルATA対応コネクタの開発、製品化が活発化している。 すでにシリアルATAは市場で本格化しつつあり、今後はインフィニバンドについても需要本格化が期待され、需要拡大への期待が高まっている。 シリアルATAは、PCサーバ、ネットワークストレージ市場における物理ストレージインターフェイスあるパラレルATAの後継となるもので、ハードディスクの急激な記録密度増大によって生じるインターフェイスの高速化をシリアル伝送により実現。 パラレルATAと比軟し、ピン数の少ない小型コネクタと細く柔軟なケーブルを使用。ケーブル配線と実装が容易で熱設計改善と設備の小型化にも頁献する。 インフィニバンドコネクタは、IBTA(インフィニバンド・トレーディング・アソシエーション)規格準拠の次世代高速インターフェイス用コネクタ。通信機器の高速化、通信データの大容量化に伴うサーバや機器間の高速信号接続ニーズに対応したもの。 I/Oコネクタでは、差動伝送信号を用い、各差動信号間にシールドを設け、信号問および外部ノイズを低減することで2.5キロbps(1.25ギガヘルツ)の高速伝送を実現する。 シリアルATAと互換性を持つシリアルアタッチドSCSI(SAS)コネクタの需要も立ち上がりつつある。 USBコネクタは、PC関連だけでなく、デジタル家電への搭載も進みつつあり、今後は携帯電話への搭載も予想される。 ■各社「重点分野」に位置づけ 電装化が進む自動車中・長期視野で展開 <自動車用電装コネクタ> コネクタ各社は、カーエレクトロニクス分野を事業拡大への重点分野に位置付け、積極的な経営資源投入を推進する。電装化が進む自動車はコネクタの中長期の拡大を支える有望分野。各社は同市場への営業・マーケティング体制強化を急ぎ、中長期を視野に入れた展開を強めている。 自動車の電子化進展に伴い、車載用コネクタは安定した需要拡大が見込まれ、新規参入も含めコネクタ各社の開発競争が活発となっている。自動車市場に特化した社内組織再構築などの動きもみられる。 車載用コネクタの用途は@エンジン周りのパワートレイン系A安全・快適にかかわるボディー系B情報通信系などがある。特にITSやテレマティクス、MOSTや車載用IEEE1394に代表される高速車内LANなど、情報通信用途でのコネクタ需要拡大が見込まれ、ETCの拡大も市場を活発化させている。 製品化が進んでいるのが、MOSTやIEEE2394bなどの高速車内LAN対応のPOF(プラスチック・オプティカル・ファイバ)コネクタ。MOSTは、BMW、ダイムラークライスラーなど欧州企業が推進する仕様で、伝送速度24.5メガbpsを規定。すでに欧州では車への搭載が進み、今後は日本も含め全世界での拡大が期待されている。安全系は、エアバックの需要増や盗難防止用ディタッチサブルコネクタ、ABS装備などが基板用コネクタの需要を押し上げている。 今後はITSの本格化や安全性向上のため車載カメラ搭載が増加する見込みで、カメラモジュール用コネクタの需要も期待される。5.8ギガヘルツDSRCをはじめとするITS関連インフラもコネクタの有望市場。高周波同軸コネクタメーカーはITSに照準を当てたマイクロ波/ミリ波コネクタ開発を推進する。車の42V化に対応する高電圧対応の製品開発も進む。 |