◆はじめに
「ノイズ」とは? 一言で表現するならば、「必要のない信号」と、最近では広い意味で、必要としていることに対して、望ましくないことは何でも「ノイズ」と呼ぶようになってきている。ノイズの種類は大きく2つに分類される。機器内で発生するノイズ(EMI)と、外部から侵入するノイズ(EMS)である。
その中でもさらに電波となって伝播するもの(輻射ノイズ)と電線に伝わって機器に伝播するもの(伝導性ノイズ)がある。
ノイズフィルターは、機器の電源入力部に接続し、機器内で発生するノイズを減衰させて外部機器などの障害を減らしたり、外部から侵入するノイズを減衰させ機器の誤動作を減らし、ノイズマージンを上げることが目的の部品である。
ノイズ規制に対する規格は、EMI・EMSそれぞれに取り決められている。EMI:国内ではVCCI、電気用品安全法があり、国外ではFCC(アメリカ)、CSA(カナダ)、CISPR、EN(ヨーロッパ)などがある。
EMS:国内では各工業会でガイドライン化が進行中、国外ではIEC規格が制定されている。
ここでは、EMIを中心とした雑音端子電圧対策に使用する電源ライン用ノイズフィルターについて述べる。
◆ノイズ対策とノイズフィルターの選択方法
雑音端子電圧の規制周波数帯としては一般的に、150kHzから30MHzまでである。
ノイズフィルターはご存知のように、コイルとコンデンサーを組み合わせた複合回路部品であるが、これら部品の周波数特性を考えると高い周波数帯域である。とくに最近は高周波を利用した電源装置(スイッチング電源、インバーターなど)が一般化され、ノイズフィルター抜きでの対応は不可能な状況である。
しかし、機器によりノイズの発生には固有の特性があり、ノイズフィルターによる対策も、特性に合わせた選択が必要となってくる。
◇ノーマルモード対策
実際に雑音端子電圧は、コモンモードで測定する。しかし、機器自身で発生するときのノイズはノーマルモードであり、それが配線経路でコモンモードに転移され電源入力ラインに現れてくる。したがって、ノーマルモードの対策も有効となる場合がある。ノーマルモードで働くコンデンサー(Cx)によりノーマルモードで発生するノイズが抑えられ、その結果として、コモンモードノイズを抑制することができる。とくにノイズ基本周波数が低い場合、コンデンサーの静電容量を大きくするとライン間のインピーダンスが下がり、ノイズ減衰効果を高めることが可能となる。
◇コモンモード対策
現在のノイズフィルターはコモンモード重視のものが一般的で、コイルのインダクタンスとコモンモードで働くコンデンサー(Cy)によりコモンモードノイズを抑制する。
しかし、ライン―アース間コンデンサーは静電容量を大きくすると効果が得られるが、漏洩電流が大きくなり、国内のように漏電ブレーカーの設置が義務付けられている場合は静電容量が制限される。
そこで、コイルのインダクタンス値が大きいものが必要となってくる。従来のフェライトコアを使用すれば当然形状も大きくなり、ノイズフィルターとしても大型のものになってくる。よってコアの透磁率が大きいものを使用し、形状を抑えることも必要となってくる。
そこで、現在ではフェライト以外に、透磁率の高いナノ―クリスタル材のコアを用いたノイズフィルターも使用されている。
以上、ノーマルモード・コモンモード対策として、選択したコンデンサ・コイルを実際に組み込んで、その効果を確認し、再度現状分析をして最終的に目的のノイズフィルターを決定する。
◆ノイズフィルターの選定
ノイズフィルターの選定には、機器のノイズ的特性を十分に把握することが必要である。
実装時の入出力のインピーダンスのアンバランスや、通電電流によるノイズフィルター内部の素子の電流飽和などがあり、静特性データ・パルス減衰データの通りに特性を得られないことが多い。現実は、実装時の動特性を確認しなければ、ベストなノイズフィルターは選定できない。
◆技術動向
ノイズフィルターは、「できれば要らない」部品である。つまり、必要以上のHiSPECよりも、規格基準を満たすことのできる最低SPECのローコスト品が、「いいノイズフィルター」と考える。
ノイズフィルターの回路の組み合わせは、コンデンサーとコイルの種類より算出すると、三相一段タイプで約10000種類以上になり、この中から「いいノイズフィルター」を選定し、短期間で提供できることも技術対応力である。
岡谷電機産業はこれらをシステム化させている。その新製品を紹介する。品名は「3SUP○□−A△75−ER6−xy」である。通称:Aシリーズ(図1、2、写真参照)。
三相三線箱型ノイズフィルターで定格電圧250VAC・500VACに対応。L値・XコンデンサーYコンデンサーの静電容量値を自由に組み合わせできることがAシリーズの特徴である。
したがって定数の組み合わせによっては、現行品より小型化・軽量化・ローコスト△30%(弊社製品比較)を実現させることもできる。
また、ブリーダ抵抗・Yコンデンサーの有無も選択でき、定数マルチタイプと呼んでいる。
現在、50〜75Aの製品化が終了しており、海外安全規格ENEC取得済み、UL・C−ULは、2004.06取得予定である。続けて100A〜300Aを継続設計しており、2004.09に製品化を予定している。
40A以下についても順次製品化予定で、最終的には10〜300Aのシリーズ化を実現させる(テクノフロンティア展には75Aクラスを出展)。
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ノイズフィルターAシリーズ |
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回路図 |
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形状寸法 |
◆まとめ
ノイズ規制は現在欧州を中心に進んでいるが、今後アメリカ、日本国内もこのCISPR(国際電気標準会議)のEMI規制を取りいれていく方向にあり、自主的に対策を施している製品も増えてきている。
しかし、日本は欧州と異なる電源事情があるため、ノイズ対策部品を限られたスペースに納めるのは今以上に難しく、漏洩電流をおさえた新たな対策方法および対策部品を必要とする。今後弊社もこの動向に合わせ新製品を揃える予定である。
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