◆昨今の市場動向
携帯端末市場は近年、携帯電話、デジタルスチルカメラ(DSC)に牽引され大きな市場を形成しており、今後も引き続き伸びが期待できる市場である。また、デジタルビデオカメラ(DVC)や携帯音楽端末においては新しい製品が次々に登場し後押ししている。携帯端末機器においては小型・薄型・軽量化の市場ニーズが高く、求められるコンポーネントも同様に小型・薄型や複合化に対する要求が非常に強いものがある。
携帯電話においては多機能化が進んでおり、世界においてカメラ付きの普及やゲーム、音楽、インターネット接続、GPS機能やテレビまでもが楽しめるように進化している。
また、本体の小型・薄型化とともに、大型液晶の採用やメモリーカードの搭載が進んできており、内部の部品実装密度が非常に高く部品搭載スペースを圧迫している。
多機能化に伴う小型複合操作スイッチのニーズ、高密度実装化による小型薄型スイッチや多方向検出スイッチの要求、また、先端デザイン・新機能を担う操作形態の要求を満たすべくコンポーネントの開発が求められている。
DSCにおいても同様に小型・薄型化の傾向に変わりはなく、高画素化や高倍率ズーム、動画機能の標準搭載などで進化が加速しており、こちらも小型・薄型スイッチの要求が強い。
また、携帯音楽端末ではメモリーの高容量化やハードディスクタイプの発売により、数千数百の曲から選曲するための小型薄型デバイスの要求がある。
車載市場においては、安全性や快適さを求めて新しい車載用電子機器が開発・搭載されており、車内の電気エネルギー消費量が増大の方向である。そこで車載用コンポーネントにはマイコン制御による微小電流化への対応が求められており、従来のマイクロスイッチでは対応ができないμAオーダーの定格に対応することが必要となってきている。また、ドア周りでは防水性が求められている。このような利便性を高めるべくシステムの搭載が高級車から大衆車へどんどん拡大してきており、防水型の微小電流対応検出スイッチは今後、市場の大きな伸びが期待されている。
◆小型/薄型検出スイッチ開発背景
1)携帯端末市場向け小型/薄型検出スイッチ
高密度実装化に伴う小型薄型ニーズの高まりや、デバイスの操作形態の多様化、例えば蓋開閉や回転型カメラレンズの検出に見られるように、アクチュエーターが円弧状に動くものが多くなり、求められる検出SWは従来の単一方向のみならず、縦や横からも押せる多方向動作の要求が強い。また、使い勝手が良いロングストローク品や、過酷な環境へも耐えられるロバスト性が求められる場合もある。さらに環境面では、有害物質の規制が厳しくなり、鉛フリーハンダへの対応が必須となっている。
アルプス電気では、これらの要求に応えるべく精密金型プレス/成型技術などのコア要素技術を駆使して製品開発に当たり、市場ニーズに応えられる製品をアグレッシブに拡充中である。
当社の表面実装対応の検出スイッチは1980年代に開発された。当時は、スイッチ本体の大きさが5×4×4mm(W×D×H)であったが、現在は3.5×2.8×1.5mm(W×D×H)の容積比20%の小型化を実現し、市場へ投入されている(図1参照)。
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検出スイッチの小型・薄型化の流れ |
【SPVNシリーズ】
超小型(3.8mm×3.6mm)/薄型の2方向動作タイプで高さ1mmの業界最小クラスを実現している。投影面積は当社従来品比約40%削減し、大幅な小型化を実現。小型サイズにもかかわらず独自構造の両面摺動接点で確実なコンタクトを保証している。
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SPVNシリーズ |
【SPVMシリーズ】発
縦・横2方向から押せるバーチカルタイプ、投影面積(3.5mm×2.8mm)は業界最小クラス。高さ1.5mmの小型化を実現。独自構造の両面摺動接点で確実なコンタクトを保証している。
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SPVMシリーズ |
【SPVPシリーズ】
2mmのロングストロークを実現、投影面積(3.5mm×5.6mm)高さ1.2mmの小型タイプ。
独自構造の両面摺動接点で確実なコンタクトを保証している。
2)車載市場向け防水検出スイッチ
最近の新形車種を見てみると、多くの新しい装備(パワーアシストドアなど)が搭載されてきている。
このような装備を制御するためには、自動車の各部位がどのような状態になっているのかを検出する必要があり、信頼性の高い防水タイプのスイッチのニーズが拡大している。アルプス電気では固有技術を生かした車載用防水形検出スイッチの開発を行い、バラエティーの拡充を図っている。
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SPVPシリーズ |
【SPVQシリーズ】
防水タイプ検出スイッチSPVQシリーズは、ロングストローク3mm、水回りに強い微小電流検出用スイッチで、μAオーダー定格での使用が可能である。自動車のドア開閉検出や水回りに使用する機械の動作検出などの用途向けであり、防水性能はIEC規格IP67に適合している。同シリーズには、リード線付きやアクチュエーター付きなどが用意されており、さまざまなバラエティーに対応可能である。また、動作寿命は無負荷時、負荷時ともに300,000サイクルを保証している。
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SPVQシリーズ |
◆製品技術上のポイント
3)―1両面摺動接点方式
検出スイッチの使われ方は、セット側のメカ駆動によりスイッチ操作部が押し込まれ、ON信号をマイコンへと出力しメカを停止させる用途が多い。人が操作しないことから、再度操作部を押すというようなリトライが許されず、当社では検出スイッチに求められる重要な機能は「確実にON/OFFする」ことであると考える。
そこでスイッチングにおける接触信頼性をより向上させるため、接触には当社独自の「両面摺動接点方式(図2参照)」を積極的に取り入れている。「両面摺動接点方式」とは、2枚の金属板の間に切り替え側の金属材を挟み込む構造であり、金属同士の接触面が従来の「片面摺動接点方式(図3参照)」と比較し、2倍の接触を得ることができる。
この構造の特徴としては
(1)環境ガスにより形成された絶縁皮膜や塵埃・異物の付着を、接点が摺動し掻き分け排除する「セルフクリーニング効果」が両側の接触面に働く。
(2)ON状態においては両側から均等な接触圧をかけているため、間に挟み込まれる金属材が振動や衝撃によって位置が変化した場合においても、一定の接触圧を維持することができる(図4参照)。このため、セット落下時の衝撃や車載などの振動の多い環境においても、安定した接触が得られる。
3)―2 微細加工技術
両面摺動接点の採用に当たっては、プレス金型の高度な加工技術を必要とする。当社で最小のスイッチにおいては、0.5mmシャープペンシル芯程の幅の中に、薄い金属板を4枚分曲げ込んだ小型な固定接点の加工を実現している。今後さらなる小型/微小化のために、極限の超高度な微細加工技術を目指している。
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両面摺動接点方式 |
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片面摺動接点方式 |
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両面摺動接点方式ノ安定接触 |
◆今後の市場動向
今後の携帯端末市場動向としては、デジタル放送の開始により携帯端末での高画質受信が可能となることや、大容量ハードディスク内蔵により映画なども楽しめるようになり、携帯動画がトレンドとなるものと考える。これらのデバイスには選局やモード切り替えなどに小型操作・検出スイッチの需要が期待できる。
また、情報機器からAV機器、白モノ家電へとユビキタスネットワークが広がるものと考えられ、これらを簡単に操作できるモジュールへの需要も期待できる。近年の携帯端末多機能化や小型化の競争は激しく、売れる物作りに各社が凌ぎを削っており、求められるコンポーネントにも独自性が求められてきている。当社では、市場の要求を的確に捉えた提案、開発を積極的に進めていく。
また、車載市場においては電子化が加速され、ドアやシフトレバーなどの検出用スイッチの需要がさらに増加するものと考える。本体強度や車載用としての過酷な環境での使用にも耐え得る「ロバスト性」を考慮した製品の要求が高くなり、当社ではそのニーズに応えられるようにバラエティーの拡充化を推し進めていく。
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