IJ技術を使った低温焼成セラミック多層基板の微細パターン化技術開発


インクジェット技術を用いた低温焼成セラミック(LTCC)多層基板の微細パターン化技術が開発された。KOAが独立行政法人・新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、03年6月から3カ年計画でセイコーエプソンと共同開発を進めているもの。このほど、L(ライン)/S(スペース)=30マイクロメートル/30マイクロメートルの微細パターン形成を確認した。


L(ライン)/S(スペース)=30マイクロメートル/30マイクロメートルの
描画が可能なインクジェット法によるパターニング

LTCC多層基板は薄いセラミックグリーンシートにパターンを形成し、層間接続を小径ビアで行い、何枚も積層し、同時焼成したもの。

<高周波回路で採用>

最近ではLCR(コイル、コンデンサ、抵抗器)といった受動部品を内層に形成し、高機能デバイス化に発展している例も少なくない。携帯電話などに搭載されるバンドパスフィルタ(BPF)をはじめ、ブルートゥースのRFモジュールといった高周波回路分野で採用が広がっている。

多層基板にLTCCを用いるのは一括積層し、同時焼成するためには各種使用している材料の焼成温度を同じにする必要があるためだ。

これまでのLTCC多層基板はパターン形成に厚膜スクリーン印刷を用いるのが一般的だった。今回、KOAとセイコーエプソンが共同開発しているのはプリンタで採用されているインクジェット法を採用している点が大きな特徴。

表面処理を施したセラミックグリーンシート上に数ナノ―数十ナノメートルの銀微粒子を液体中に分散させたインクをインクジェット法によってパターン形成するもの。
<デバイスを小型化>

このプロセスを用いることによって、最小配線幅30マイクロメートル、ピッチ60マイクロメートルという微細パターンを形成することが可能になり、デバイスの小型化を推進できる。しかも必要な部分のみに描画するため、材料使用量およびエネルギー消費量を削減できる。

さらにスクリーン印刷法はあらかじめマスクを作らなければならないが、インクジェット法の場合はマスクレスのために段取り切替えが簡単で、多品種少量生産に適している上、マスク製作の時間が不要で短納期化に寄与するというメリットもある。

両社におけるインクジェット法を用いたLTCC多層基板の開発はパターン形成に止どまらない。すでにLCRの形成などについても研究を始めている。

今後は配線基板としての製造技術の確立から高付加価値を求めて、高機能デバイスへの発展に取組んでいくことになる。