日立金属はこのほど、新たな総理大臣表彰制度として創設された「第1回ものづくり日本大賞」において、「鉛フリーはんだボールの革新的製造技術」が、経済産業省優秀賞を受賞した。 受賞者は、特殊鋼カンパニー安来工場(島根県安来市)。受賞内容は、半導体パッケージの端子材料であるハンダボールの革新的製造技術として「均一液滴噴霧法(UDS法)」を確立したもの。UDS法は、溶融ハンダの状態から、直接ボールが正常な状態で大量に製造できるCO2削減効果に優れた製法。さらに、環境に優しい鉛フリーハンダ組成に特化し、従来製法である粒径0.76-0.30ミリメートルに加え、極小径である0.30-0.08ミリメートルの量産技術を確立、半導体パッケージ技術のさらなる進化への貢献が期待されている。 〔図1〕UDS法によって作成された鉛フリーはんだホール 鉛と錫を主成分とするハンダは、金属の接合剤として、配線などに広く使われてきたが、中毒作用があるため、環境問題への関心の高まりから、ハンダの鉛フリー化が進められている。 月産100億個以上 日立金属では、1998年から鉛フリーハンダボールに着目し、小径でバラツキのないハンダボールの製造技術開発に着手、均一液滴噴霧法による「鉛フリーハンダボール」の量産技術開発に成功した。すでに、鉛フリーハンダボールの月産100億個以上の量産体制を整え、今回の受賞をきっかけに、事業展開をさらに加速していく方針。 ハンダボール製造方法の現在の主流は、油中造粒法とUDS法。
油中造粒法は、まず、ハンダのインゴットを細線や箔に加工した後、目標とするボール径と同等の体積となるように定量切断して個片を作製する。 次に、上部はハンダの融点以上の温度、底部はハンダの融点以下の温度となるような温度勾配を有する油浴に個片を滴下。個片は、油中を沈降する間に溶融し、表面張力と油圧で球状化した後、凝固する。 一方、UDS法は、インクジェットプリンタの原理を応用したもので、マサチューセッツ工科大で開発された技術をベースに、日立金属が量産技術の開発を行った。製造手順は、まず、還元性ガスが充填された坩堝の中で、ハンダのインゴットを溶融して溶湯を作製。次に、坩堝の下に設けられている、不活性ガスが充填された凝固回収チャンバと坩堝との間に差圧を加え、チャンバ内にハンダ溶湯のジェットを飛ばす。それと並行し、圧電素子と連動した振動棒により、溶湯に一定間隔で圧力を付加することで、ジェットに規制的な脈絡が発生し、ジェットを均一な液滴に分断する。液滴は、チャンバ内の飛行中に表面張力によって球状化し、チャンバ底部到達時には凝固が完了している。 油中造粒法と比較したUDS法の利点としては、製造工程短縮や製造コスト削減、ボール組成の自由度向上、ボールの表面性状(ボールの表面酸化を抑制)、ボールの均一サイズ化や小径化などがある。UDS法におけるボール径は、ジェット速度とオリフィス径、圧電素子の周波数に依存し、小径になるほど小さいオリフィス径、高いジェット速度、高い周波数の組み合わせで、より高い生産速度で高精度の小径ボールの製造が可能。 |