特集：カード用コネクタ技術
microSDカード用とExpressCard用小型コネクタの技術


昨今の市場動向

携帯情報端末機器、中でも携帯電話機の高機能、軽量化によって、メモリーカードはさらなる小型、高容量化が進んでいる。一方、ノートＰＣ、デスクトップＰＣにおいては、高速伝送のＥｘｐｒｅｓｓＣａｒｄ規格が登場し、普及していくものと思われる。これらの新カードの登場は、既存のメモリーカードとともにカード市場のさらなる拡大を促すものと見ている。今回は、アルプス電気が市場に投入し、高い評価を得ているｍｉｃｒｏＳＤカード（従来の名称：トランスフラッシュカード）用コネクタ、ｍｉｃｒｏＳＤカード用アダプタ、Ｅｘｐｒｅｓｓ　Ｃａｒｄ用コネクタについて紹介する。

小型メモリーカード用コネクタ開発状況

（１）ｍｉｃｒｏＳＤカード用コネクタ　プッシュプッシュタイプ

【ＳＣＨＡシリーズ】
ｍｉｃｒｏＳＤカードは、既存のＳＤメモリーカードの約４分の１の大きさである。このさらなるカード自体の小型化のため、コネクタにおけるカードの保持が難しくなったり、排出時にカードの落下や紛失が発生しやすくなる。当社のｍｉｃｒｏＳＤカード用コネクタでは、カードがロック状態で抜け落ちてこないように高いカードロック保持力を実現、および、カードロック解除後においては、カードがコネクタから落ちないようにカード脱落防止（ハーフロック機構）も取り入れている。また、カードの挿入／排出にはカードプッシュプッシュ機構を取り入れ、かつ3.0mmのカード排出量を確保することでカードが小さくても指で摘みやすい優れた操作性を保持している。これらの仕様を備えながらも、ＳＣＨＡシリーズの外形寸法は業界最小クラスである（写真１）。


〔写真1〕ＳＣＨＡ　ｍｉｃｒｏＳＤカード用コネクタ　プッシュプッシュタイプ

（２）ｍｉｃｒｏＳＤカード用コネクタ　ヒンジカバータイプ

【ＳＣＨＢシリーズ】
ｍｉｃｒｏＳＤカード用ヒンジカバータイプは、セットの任意の場所に設置出来ることが特徴である。コネクタはハウジング端子部とカバーからなり、カバーはバーリング形状の支点で上下に回動し、前後にも動く構造になっている。また、カードを挿入する際、カードのパット部とコネクタの接点部がしゅう動するため、接触信頼性が高い。カードをハウジング端子部とカバーによってサンドイッチ状に挟み、カバーをスライドさせて固定させるが、ばね部とハウジング端子部の斜面部でクリック感触を持たせることによって、確実にカードが固定されたことが分かる仕組みとなっている。なお、本コネクタの外形寸法は業界最小クラスで、基板実装面積を少なくできる（写真２）。


〔写真2〕ＳＣＨＢ　ｍｉｃｒｏＳＤカード用コネクタ　ヒンジカバータイプ

（３）ｍｉｃｒｏＳＤカード用アダプタ

【ＳＣＨＣシリーズ】
ｍｉｃｒｏＳＤカード用アダプタは、アダプタを介することでｍｉｃｒｏＳＤカードをＳＤメモリマイナスカード用コネクタをホストとして使用が可能になる。本アダプタは、ｍｉｃｒｏＳＤカードのパット部と接触するアダプタの端子の先端がアダプタ本体ケースの下面に隠れる設計となっているので、ｍｉｃｒｏＳＤカード挿入時に端子が座屈しない。また、本アダプタのパッド部および接点部はともに切断面がない部品構造のため、腐食に強く、高い接触信頼性を確保している。さらに、カードが抜け落ちないようにカードロック保持機構が付いている。

なお、本アダプタには、装着時などにひねりが加わったりするが、独自の構造によって対応できる強い剛性を有している。ｍｉｃｒｏＳＤのロゴマークはラベル対応としているため、お客様仕様を短納期で実現できる（写真３）。


〔写真3〕ＳＣＨＢｍｉｃｒｏＳＤカード用アダプタ

ＥｘｐｒｅｓｓＣａｒｄ用コネクタ【SCBA/SCBBシリーズ】

ＥｘｐｒｅｓｓＣａｒｄは、大容量データの高速伝送が可能であり、カードの大きさも小形化されている。ＥｘｐｒｅｓｓＣａｒｄ用コネクタは、ヘッダ部のＳＣＢＡシリーズとイジェクタ部のＳＣＢＢシリーズから構成されている。ヘッダ部に長い脚部があり、マザーボードへの実装とリフローハンダが安定して行えることと、リフロー後、イジェクタ部をワンタッチで組み込むことができるのが利点である。

また、端子を保持するヘッダ部とイジェクタ部で４カ所を直接ねじ固定するので、ハンダ部のストレス回避と耐荷重強度の確保が出来ている。カードの挿入／排出は２ステップレバーイジェクト機構を採用し、独自のレバー形状により、軽い操作感とカード排出量６ｍｍを実現した。カードの種類として５４ｍｍと３４ｍｍ幅のＥｘｐｒｅｓｓＣａｒｄがあるが、どちらのカード挿入されたかを見分わける誤挿入防止構造によって、１つの挿し込み口で両方のカードに対応できる（写真４）。


〔写真4〕SCBA/SCBBＥｘｐｒｅｓｓＣａｒｄ用コネクタ　スタンダードタイプ

今後の市場動向と当社の課題

携帯情報機器向けの小型カードとして、ｍｉｎｉＳＤカード、RS-MMCに続きｍｉｃｒｏＳＤカードと、さらに小型のカードが出現している。小型カードには、カードの操作性と大きさの違うメモリーカードのコネクタスロットとの互換性から、アダプタがさらに必要になると思われる。

また、規格の違うカードを１口のスロットで対応できるコンバインコネクタも望まれてくるであろう。当社では、これらに向けて市場の要求を的確に捉え、コネクタの開発・提案を行っていく。

※記載されている商品名は各社の商標又は登録商標です。

＜三浦貞一：アルプス電気（株）コンポーネント事業部第５技術部＞