コンデンサは携帯電話やパソコンからデジタル家電、自動車などあらゆる分野で欠かすことのできない電子部品として技術的な進化を見せている。 特にフラットパネルディスプレイ、DVD、デジタルスチルカメラをはじめとスルデジタル家電の出現は、コンデンサ市場を拡大している。 これらのセットでは積層セラミック、タンタル、アルミ電解コンデンサなどが多く使われており、小型・薄型・高性能化が求められている。 このニーズに対応するため、ロームは積層セラミックコンデンサ、タンタルコンデンサの大容量化、低ESRか、チップサイズの極小化などの 開発・製造に注力している。これらはローム独自開発による最新の自動化設備で生産され、商品質・高信頼性を確立している。 また、生産拠点の海外展開を図り、全世界への供給体制を強化している。さらに、業界に先駆けてRoHS指令適合製品の量産にも成功した。 ここでは、携帯オーディオ用カップリング向けコンデンサの省スペース化のニーズに対応するために、下面電極構造を採用し業界トップクラスの小型・大容量を実現したタンタルコンデンサTCTシリーズについて紹介していく。 ロームの小型大容量タンタルコンデンサシリーズ 積層セラミック、タンタル、アルミ電解コンデンサの主な特徴を別表(表1)に示す。
この中でタンタルコンデンサは単位体積当たりの容量がほかのコンデンサよりも大きいことや、周囲温度の変動に対して安定した静電容量値を保つなどの特徴により、ポータブルオーディオ、携帯電話などの小型携帯機器に広く採用されている。 タンタルコンデンサの小チップサイズは2012サイズから1608、1005サイズへと小型されることにより、同サイズの積層セラミックコンデンサよりもさらに大容量化が進み、差別化が図られている。 この小型大容量化を支えているのがタンタル粉末の微粉技術であり、業界での容量拡大はおよそ年率10−30%で進んでいる。 また、タンタルコンデンサの種類としては汎用タイプのほかにオープン機構内蔵タイプ、機能性高分子タイプを選択される場合も多くなっている。 従来、オーディオ用カップリングコンデンサとしては大容量アルミ電解コンデンサが多く使用されてきた。このカップリングコンデンサは音響セットのアンプから出力される音声信号のうち直流成分をコンデンサでカットし、交流成分のみをスピーカに出力するためのものである。 このときコンデンサの静電容量によってカットされる周波数が決まるため、コンデンサの静電容量をできる限り大きくして、なるべく低周波から出力したいというユーザーニーズがある。(図1) 〔図1〕応用回路例 最近の携帯オーディオではHDDやメモリータイプのポータブルオーディオ機器が流行しており、さらに携帯電話では音楽再生機能付が普及し始めている。これら小型セットの増加と各セットの高性能化により、使用されるコンデンサも小型・低背・大容量が最低条件となってきており、タンタルコンデンサの採用が急増している。 携帯オーディオ機器をはじめとするセットの小型・軽量化に伴い、ロームは小型・低背・大容量化のニーズに対応するため、下面電極構造のタンタルコンデンサ(TCTシリーズ)を開発し、現在量産対応中である。 従来のタンタルコンデンサでは端子部を製品側面から導出させる構造のため内部素子の大きさに制約があったが、新構造となる下面電極構造では端子部を製品下部においてあるため内部素子を十分大きく取ることができ(図2)同パッケージを比べて2倍以上の容量値を得ることが可能となった。 〔図2〕従来構造と下面電極構造との比較 ロームはこの下面電極構造を採用したTCTシリーズの3216サイズ(ALケース)で4V−220マイクロFの大容量を実現させた(図3)。
これは、市場要求の強い低背使用(製品厚み1.1ミリ)であり、このクラスでは業界トップの大容量で、鉛フリー対応・RoHS指令に適合した製品である。 この大容量タンタルコンデンサTCTシリーズの採用により、MP3プレヤーをはじめとする携帯オーディオ機器でも音質が良く、パワフルな重低音を効かせることができるなど、音質面で非常に高い評価を得ている(図4)。 〔図4〕周波数帯域の違い また、カップリング以外の一般的なノイズ除去用途としても6.3Vや10V対応などの幅広いラインアップを取り揃えている。他のサイズでは1608サイズ(MMケース)で4V-33マイクロFの量産開始し、さらに2012サイズ(Pケース)では4V-100マイクロFまで対応可能である(表2)。
下面電極構造のタンタルコンデンサの長所は上記の高容量化が図れる点のほかに、狭ピッチ実装によるセットの省スペース化が挙げられる。 逆に一般的な短所そしては、フィレットレス構造のため従来構造に比べて端子強度や固着性が劣ること、また、フィレットの視認性が悪くなることにより、ハンダ接続有無の確認が難しくなることが考えられる。 しかし、ロームはの下面電極構造でありながら、製品側面部に若干のフィレット形成ができる独自構造を採用することにより、従来構造と同等の端子郷土・固着性を確保し、さらにハンダ接続有無の自動検査にも対応可能な製品となっている。 コンデンサの需要は今後もさらに拡大することが予想され、より小型で高性能・高品質が要求されるであろう。 ロームではこれらの要求に応えるために、ユーザーの視点に立った製品開発に取り組んでいる。特に、小型携帯機器向けに対応した小型・低背・大容量の下面電極構造タンタル電解コンデンサのラインアップをさらに拡充していく方針である。 また、高周波化に対応した超低ESRの機能性高分子タンタル電解コンデンサや、高信頼性要求に対するオープン機構内臓タンタル電解コンデンサのラインアップもさらに拡充していく。 <筆者=ローム ディスクリート・モジュール商品企画課>
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