情報通信研究機構(NICT)は、独自開発の高速光FSK変調器を用い、10Gbpsの光位相連続周波数偏移(光CPFSK)変調に成功した。 この光CPFSK変調は、光の波形をなめらかに保ちながら光周波数(色)を変化させるもの。「FSK同期駆動法」と名付けた独自の技術により可能とした。そして既存FSK技術に比べ2倍以上(2004年NICT実績との比較)の光周波数利用効率を達成した。また、広く実用化されている強度変調方式に比べても2倍以上の受光感度を実現した。 光通信では、光の3つの要素である強度、タイミング(位相)、色(波長または周波数)のいずれかを変化させて情報伝送をしている。 強度を変化させる方式はすでに実用化されており、タイミングを変化させる方式も盛んに研究が進められている。しかし色を変化させる方式については、変調器で色を切り替える際に光の波形に不連続が生じる(光は波の性質を持っているがその形が切り替え時に滑らかでなく、いびつな形になる)という問題があり、殆ど研究されていなかった(図1)。 〔図1〕従来の周波数偏移変調式の場合、左図のように光信号が不連続となり光信号特性が劣化する。 一方、今回の方式では変調時の信号が右図のようにつねに連続となり良好な変調特性が得られる NICTでは、大容量光通信システムに適用すべく、光パケットなどの高度システムへの応用を目指した研究を進めていた。 光の色を変化させるために必要な信号と、光の色を切り替えるために必要な信号とを同期(タイミングを合わせる)させることで、波形の滑らかさを保ったまま光の色を高速で切り替える技術の開発に成功、10Gbpsのデータ伝送に成功した。これは光の色を変化させる方式の光通信としては世界最高レベルの伝送容量で、従来の光FSK変調方式に比べ2倍以上の光周波数利用効率が得られたとのこと(図2)。 〔図2〕光CPFSK変復調信号特性。変調光工スペクトル(左)復調波形(右)変調スペクトルは、 2つの異なる周波数成分に対応する2つのピークをもつ また、すでに実用化されている強度を変化させる方式に比べても2倍以上の受光感度が得られ光電力の50%削減に成功した。この技術の応用としては、多数の光信号を1本の光ファイバで同時に伝送する技術(波長多重技術)との組み合わせにより、より大容量(10Tbps程度)の光通信が可能となる。 この技術を核にして光のすべての要素を同時に滑らかに、しかも高速に制御できるようになり、高速通信だけでなく超高速・高精度光計測(光通信用部品やガスセンシングなど)、光周波数測定など様々な分野への応用が期待できる(図3)。 〔図3〕この方法を用いれば光変調に必要な3要素を同時に制御できる 今回、実証した光CPFSK変調信号は、波長多重時の隣り合うチャンネルへの不要な干渉を抑える能力が高いことが理論的に予測されており、光信号の高密度波長多重に優れると考えられる。 今後は光伝送実験などをとおして、この方式の優位性を明らかにする予定。これらの技術革新により高精度光制御・計測などの分野への応用も期待できる。 |