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SAWデュプレクサー「DGD3Nシリーズ」 |
携帯通信機器においては多機能化、高集積化および高速信号伝送に向けCDMA化が進んでいる。CDMAシステムは、送信信号と受信信号が同時にアンテナに流れている必要があり、GSMなどに用いられている送受信切り替えスイッチが使用できない。そこでDuplexerでは、受信信号を低損失でアンテナから受信段回路へ送り、かつ送信信号が受信段へ流れ込まないような高減衰な周波数特性を持たせる。また、送信側は逆に、送信信号を低損失にアンテナへ送り、かつ受信帯域の信号を減衰させることにより受信段への信号の流れ込みを防止する機能を持たせている。
近年、カメラ付き携帯電話、マルチモード携帯電話機など小型携帯機器の多機能化・高機能化に伴い、RF回路に使用する各部品の小型化、軽量化、低損失化、高耐電力化が強く求められており、従来用いられてきた誘電体Duplexerではサイズ的に問題となるケースが増えている。
さらに、地球環境の破壊が問題となる背景の中で環境保護対策などへの要求も高まっている。
このような市場要求に対応すべく、TDKでは早期より特殊高信頼性樹脂を用いたSAWデバイスの開発に着手して量産手法を確立してきた。
本製品DGD3Nシリーズは、TDK独自の蓄積した設計技術と材料技術により、5050形状から体積比において約50%削減を実現した3838形状(3.8×3.8×1.5mm)のSAWマイナスDuplexerであり、高い耐電力性能を有する薄膜電極と高信頼性樹脂および気密形成技術により小型、高信頼性を実現した。
以下、そこに用いた技術を紹介する(写真)。
◆高耐電力電極術
SAWデバイスは、圧電体表面にIDT(InterDigitalTransducer)と呼ばれる電極を形成して、その振動により周波数特性を持たせることが特徴的であるが、SAW―Duplexer用途としての信号電力(電力1―2W、周波数1―2GHz)を印加したとき、ストレスマイグレーションと呼ばれる振動起因の電極劣化が大きな課題となる。
この解決方法として従来は、アルミニウムを主体とした合金電極材料が考えられてきた。
しかし、近年周波数利用効率を上げるシステム(CDMA―1xなど)が開発されるに従い、複数チャンネルの信号を同時に通過させるケースも増加しており、合金電極では耐電力性が不足する事態となってきている。
電力上昇への対応としては、SAW素子自体の設計により、ある程度の対応は可能と考えられるが限界がある。
TDKは単結晶アルミニウム電極の開発によりこの問題を解消した。現在量産装置で安定に作成できている。
現在、長期耐電力試験を継続しているが、現有の各システムに対して十分な換算寿命を達成できている。
◆フリップチップボンディング(FCB)
製品構造の特徴として、FCB工法を採用したことがあげられる(図1)。
FCB工法はSAW素子表面に金属バンプを形成し、パッケージに下向きに接合する技術である。
この工法の利点は、ワイヤーボンド方式と比較して製品高さを低く抑えやすいことのほかに、ワイヤーを用いた場合に問題となる外部からの電磁ノイズの影響が少ないことや、ワイヤーを用いた場合の特性のばらつきを考慮しないでよいことがあげられる。特にCDMA系の要求として相手帯域の減衰量は50dB以上など要求が厳しい中で、安定に特性を実現できることは量産性にたけていると言える。
もちろん、この工法はワイヤーボンド方式以降に広まったものであるが、TDKでは社内にFCB工法開発部門があり、装置の供給やサポート体制が確立していて長期の安定性が確保できている。
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ボンディング技術 |
◆プラスチックパッケージ
本製品は、環境に優しい、軽量(約50mg)など時代の要請を見据えて特殊プラスチックパッケージング技術を用いている(図2)。
これまでプラスチックパッケージは品質確立が難しいと考えられてきた。しかし、近年は樹脂材料自体の高耐熱化と高耐湿化が進み、かつ工法の検討により電子部品用途として十分な信頼性を確認できている。
例えば、一般試験ではないが鉛フリーリフローを10回通したあと2週間置いた場合、途中経過も含めほとんど周波数変動がなく品質的にも全く変化がないことが確認できている(図3)。
また、参考項目だがPCT(PressureCooker Test)でも全く問題がないことが確認されている。これらは、パッケージ組み立てにおける残留応力設計やパッケージ材料の物性の追求より達成できたものと考えている。
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パツケージ横断面図 |
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リフロー特性変化 |
◆電気特性
これまでSAWデバイスとしては携帯電話用段間フィルターが代表的であった。
今回SAWデュプレクサ―の設計に当たっては、新たな製品固有の問題として、(1)低損失(2)相互帯域の高減衰確保(3)放熱構造などが必要となっていた。本構造の製品を設計するに当たり、これらを同時に考慮する必要があった。
その解決方法として有効な技術の1つに構造解析があげられる。
パッケージ内部構造での電磁界解析、熱流計算などを取り入れたことにより構造上のキーポイントを早期に見つけ出しCADに反映させた。
これらのシミュレーション技術により高周波製品に多用されるカットアンドトライを減らし、製品開発サイクルを短縮できた。今後は多様なニーズに応えるべく、精度向上をさらに進める予定である。
TDKにおいては、これらの技術を用いてCDMA800システムを皮切りに、今後W―CDMAなど多様なシステム用のSAW―DUPLEXERを供給していく予定である。
一例として、CDMA800用SAW―DUPLEXERの伝送特性を図4に示す。形状は3.8×3.8×1.5(max.)mmで、外部端子は12ピンとした。
挿入損失は、Tx/Rx:1.6/2.7dB(typ.)、減衰はTx/Rx=56/48dB(typ.)を達成している。
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SAWデュプレクサーの特性例「DGD3N0881UT」 |
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