チップ型サージアブソーバーの技術

今井孝一:岡谷電機産業(株)ノイズサージ技術部


  ◆はじめに
 昔から人にとって怖いものは“地震、雷、火事、親父”といわれているが、とりわけ「雷」による被害は急増しており、ブロードバンド時代を迎えた21世紀のITネットワーク環境下では、雷はより脅威となってきている。
近年、携帯電話、パソコン、モデム・ルーター、カーナビケーションに代表されるIT機器の多機能化・高性能化とともに製品の小型省電力が進展している。省電力化は、IT機器に使用されるLSIやICの動作電圧の低電圧化を伴い、また、多機能化は高密度集積化へと発展していく中、ますます機器の雷サージ耐力は低下していく。
 このような背景の中、雷サージ対策部品の高性能化・小型化のニーズは年々増す一方である。電子部品は次々とSMD化への展開が図られていく中で、雷サージ対策部品のSMD化は非常に困難であった。
しかし、岡谷電機産業では長年、雷サージ対策部品の開発に携わってきており、SMD化の開発も他社に先駆け進めてきた。昨年度、雷サージ対策部品のSMD化を達成し、現在では、静電気対策部品と並んで、弊社の主力製品になりつつある。
そこで今回、これらのチップ型サージアブソーバーRCCA/RHCAシリーズについて紹介する。

  ◆RCCA/RHCAシリーズの特徴
 雷サージ対策で使用されているおもな製品群は以下の4つがあげられる。
1.ガス入り放電管(GDT)
2.金属酸化物バリスター(MOV)
3.アバランシェダイオード(ABD)
4.サージ防護サイリスター(TSS)
上記の中で、RCCA/RHCAシリーズはガス入り放電管に属し、長年にわたる弊社独自の放電技術および精密組み立て技術により、ネオンやアルゴンなどの不活性ガスをセラミック外囲器に封入し、金属電極で封着したものである。
特性はインパルス応答性に優れ、また、チップバリスターを遙かに凌ぐ大きなインパルス耐量を有している。また、小型SMDのため、実装面においても扱いやすい製品である(図1)。

図1
クリックしてください。
形状および寸法図


  ◆静電気対策用:RCCA3216シリーズの紹介
 RCCA3216シリーズ(写真1)は静電気対策用チップサージアブソーバーでサイズは3.2×1.6×1.35である。静電容量が0.3pF以下と小さいために、ツェナーダイオードやチップバリスターに比べ、高周波帯域での使用が可能である。
《特徴》
(1)高密度表面実装対応の静電気対策サージアブソーバー。
(2)完全鉛フリー対応。
(3)リフロー/フロー 鉛フリーハンダ対応。
(4)ESD長寿命 150pF―330Ω―8kV 1万回。
(5)静電容量0.3pFMaxで高周波帯域で使用可能。
(6)エンボステーピング対応
【RCCA3216シリーズのESD吸収特性】
IEC61000―4―2規格におけるESD吸収特性を図2に示す。規格上は8kVまでであるが、30kV印加時の時でも、8kV印加時と比べ吸収特性の変化がほとんどなく、ESD吸収特性がよい。また、30kV印加後の特性劣化もない。
150pF―330Ω―8kVで寿命1万回を保証しており、ツェナーダイオードや、低静電容量型のチップバリスターのように、静電気寿命中の絶縁劣化は生じず、絶縁抵抗(IR)は100MΩ以上を保持する。

写真1
クリックしてください。
  図2
クリックしてください。
静電気対策用チップ型サージアブソーバーRCCA3216シリーズ
ESD吸収波形図


  ◆誘導雷サージ対策用:RHCA4532シリーズの紹介
 RHCA4532シリーズ(写真2)は、業界初の誘導雷サージ対策用チップサージアブソーバーである。従来使用されている円筒セラミック管リードタイプに比較して、小型薄型のため、高密度表面実装対応であり、インパルス電流耐量は8/20μsマイナス2000Aを有している。
《特徴》
(1)高密度表面実装対応の誘導雷サージ対策アブソーバー。
(2)完全鉛フリー対応。
(3)リフロー/フロー 鉛フリーハンダ対応。
(4)低静電容量0.6pF Maxで高周波帯域で使用可能。
(5)高速応答性である。
(6)IEC61000―4―5規格、ITU―T規格準拠。
1)インパルス電流耐量
コンビネーションウェーブ   
1.2/50μs―8/20μs、2000A 
正逆各5回
2)10/700μs、4kV 正逆各5回
(7)海外安全規格UL497B認定取得。
【RHCA4532シリーズのインパルス吸収特性】
IEC61000―4―5規格におけるインパルス吸収特性を図3に示す。RHCAシリーズが優れたインパルス応答性を有していることがわかる。
とくにRHCA―401R43□は、xDSLの試験規格であるITU―T(国際電気通信連合)K.21のEnhancedTestConditionに対応した製品になっており、直流放電開始電圧の範囲は332〜520Vで規定している。
これらの規格では、インパルス試験条件:10/700μs―6kV(R=25Ω)正負各5回、電源誘導試験:AC600V―600Ω―1.0s―5回、電源混触試験:AC230V―10〜1000Ω―15分となっている。
※ITU―TK.21:宅内通信装置での過電圧過電流に対する加入者回路の耐力
表1に、RCCA/RHCAシリーズの製品仕様を記す。

  写真2
クリックしてください。
  図3
クリックしてください。
  表1
クリックしてください。
誘導雷サージ対策用RHCA4532シリーズ
インパルス吸収波形図
RCCA/RHCAシリーズ製品仕様


  ◆アプリケーション
 RCCA3216シリーズでの静電気対策カーオーディオ、カーナビゲーションなどのアンテナからの静電気対策に最適であるほか、無線機器、アンテナ機器など、高周波帯域での静電気対策に有効である。
RHCA4532シリーズでの誘導雷サージ対策
ケーブルモデムチューナー、BS・CSアンテナの誘導雷サージ対策、xDSL、電話・FAXなどの通信機器および各種ネットワーク機器の誘導雷サージ対策に最適である(図4)。

図4
クリックしてください。
RCCA/RHCAシリーズアプリケーション列


  ◆今後の課題
 現在さらなる小型化を目指し、開発を進めている。
今後、雷害リスクは年々増していくことは間違いない。われわれ、雷対策部品の開発者は、雷害リスク低減に向け、市場のニーズにマッチした製品をタイムリーに提供していくことが重要であると言えよう。そうすることにより、弊社は高度情報化社会のさらなる発展に貢献できるものと考える。


最新トレンド情報一覧トップページ