◆はじめに
バルクフィーダ(以下フィーダ)は、生産性の向上や地球環境保全など多くのメリット(図1)が紹介されてきたものの、普及に関しては足踏み状態が続いている。太陽誘電は電子部品メーカーとしての、バルク化に対する強い責任と期待から、バルク化が普及しない課題を解決してバルク化拡大への取り組みを行ってきた。
まずバルク化が進まない課題を明確にするため、ユーザーから“生の声”を聞いて回った(図2)。その結果、普及を阻害している課題の多くは、フィーダの完成度にあることがわかった。
停止回数が多い、部品が黒色化する、部品を選ぶ、大きくて重い、部品がダメージを受ける、部品の混入、メンテナンス性が悪いなど現場での使い勝手と品質面の課題が多く、「導入したが使いこなせない」というのが実情である。
現在のフィーダは実装機メーカー主体の製造販売が一般的であることから、部品ハンドリング技術の経験に乏しく、なかなか完成度が上げられないという課題がある。
また、フィーダの値段がテープフィーダに比べて2〜5倍と高いことや、バルク未対応の実装機を所有するなど、インフラの課題もあげられた。ユーザーが所有する実装機にバルク未対応機が存在する場合、バルク部品による生産はバルク対応ラインに限定されることから、バルク未対応機向けフィーダの品揃えが求められている。
このようにバルク化の課題と、それを解決できていない実態が明確になったことで、当社はバルクフィーダのあり方について徹底的な追求を行い、使い勝手が良く信頼性の高い低コスト次世代バルクフィーダを商品化した。
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バルク実装のメリット |
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バルク化の阻害要因 |
◆次世代バルクフィーダ
次世代バルクフィーダは、止まらない、エラー復帰しやすい、誰にでも扱える「ワンタッチ・ローコストフィーダ」をコンセプトに開発を行った(図3)。コンセプト実現に向け、フィーダに必要な「供給・搬送・吸着」3機能の進化と、「共通ユニット化」(図4―(1)〜(5))によって課題解決に取り組んだ。その結果を以下に紹介する。
(1)ユニット化のメリットと特徴
ユニット化により、各機能部は工具を使わず(一部を除く)ワンタッチで着脱可能(完全調整レス)となった。
その結果、熟練なしに誰にでも使いこなせる簡単な取り扱い性を実現、詰まりなどのトラブルが発生しても瞬時に復帰できるようにした。
万が一、容易に取り除くことのできない詰まりが発生しても、該当ユニットのワンタッチ交換により、実装ラインを長時間停止することなく稼働を再開でき、オフラインでの復帰作業を可能とした。
また、各ユニットを多くの実装機のフィーダすべてに共通の設計としたことで、開発リードタイムが短縮され、容易に機種拡大することが可能となった(順次ラインアップ拡大を予定)。
一方で、共通化はパーツの統一化によるコスト低減という効果をもたらした。さらに各ユニットの部品通過経路はすべて透明とし、ホッパーケースから部品吸着部までの全域を目視可能なフィーダとした。これによって、部品入れ替え時にフィーダ内部の残留部品を一目で確認でき、異種部品の混入に対する安全性を高めることができた。
(2)各ユニットにおける課題の解決策(図5)
供給ユニット(図4―(1))は市場実績のあるDD(デュアル・ディスク)方式を進化させ、部品ストレスの軽減(攪拌部材軽量化によるエネルギー低減)とメンテナンスフリー化(ハンダが付着しない構造材の採用)を図った。ホッパーケースユニット(図4―(2))には、部品の黒色化と部品ストレスを低減するために、新開発の「仕切り板」(図6)を設けた。仕切り板はホッパーケース内部を3分割する構造で、ロータリー式高速実装機搭載時に発生する、フィーダ軸振動による部品移動距離を2/1に低減し、ハンダ濡れ性劣化(黒色化)の進行を約1.5倍に改善した(当社評価)。またフィーダ軸振動は、ホッパーケース内部の部品に「押し固まり現象」(部品同士がレンガ状にすし詰め状態となる現象)を誘発させる。従来のフィーダでは部品の攪拌ができず供給不足が発生、その上フィーダの攪拌動作やその現象を解除しようとした時に、オペレーターの取り扱いによって部品に無理なストレスを与えることがあった。そこで本仕切り板は、DD供給部(部品攪拌部)に侵入する部品数量を制御し、押し固まりの抑制と安定した攪拌動作の維持により、部品の供給信頼性とダメージ信頼性を飛躍的に向上させた。搬送ユニット(図4―(3))は、ポンプユニット(図4―(4))を内蔵した自己完結型(外部配管不要)エア搬送方式とし、部品通路は帯電防止効果の高い透明な新開発樹脂チューブにより、詰まり頻度を大幅に削減した。そして樹脂チューブの大幅なコスト低減とワンタッチ交換により、メンテナンスフリー化を実現した。
吸着ユニット(図4―(5))は、内蔵ポンプのエアを利用して部品の姿勢安定化を図るメカニズムを開発した。吸着部に磁石を用いた従来のフィーダで問題となっていた、部品アイテム(コンデンサー容量の大小)による吸着率変動(バラツキ)が起こらない方式とした。さらに部品ダメージを防止する2重シャッター構造(取り損ねた部品を挟み込んでも軽量シャッターが逃げる構造)と、ノズルダンパー機構(ノズルが部品を押し込んでも部品下部が逃げる構造)を装備し、実装機のノズル高さ異常や、部品吸着時のイレギュラーによる部品ダメージにも配慮した。
(3)その他の課題解決策(図5)
フィーダ構成部品の中でコスト比重の大きいフレームについては、フィーダ形状の違いなどから共通化が図れない。そのため市場シェアの低い実装機も考慮すると、量産効果に頼らない安価なフレーム構造を開発する必要がある。そこで当社は、現在のフィーダで一般的なアルミダイキャスト製法や削り出し加工に比べ、低コストかつ高剛性(当社評価)なフレーム(板金サンドイッチ構造)を開発、部品の黒色化や押し固まり現象の軽減に貢献し信頼性を向上させるとともに、テープフィーダと同等レベルの価格の実現を可能とした。
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次世代バルクフィーダのコンセプト |
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共通ユニット化の構造 |
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次世代バルクフィーダの課題への取り組み |
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仕切り板の構造 |
◆まとめ(バルク化普及に向けて)
以上、バルク化が普及しない原因と当社が提案する次世代バルクフィーダについて紹介した。次世代フィーダには、バルク化の課題を解決するため、妥協を許さない改善を盛り込んだ。
次世代フィーダは、今月からサンプル出荷(1005C、1608C)を行い、市場評価を開始する。またバルク未対応実装機や、今後普及が予想されるモジュラー機への機種開発および、抵抗部品や0603部品対応フィーダも開発中で、順次ラインアップを予定している。販売は当面自社販売(直販)とするが、国内の大手部品メーカーにバルク化推進の協力を呼びかけ、部品の適合性を検証し、バルク化を加速する展開を行う。普及拡大時には、実装機メーカーへのOEM供給も実施していく予定である。
今後の実装機の多様化および、部品の小型化対応として、部品メーカーが持つ部品ハンドリング技術と実装機メーカーの持つメカ技術、そしてユーザーの意見を集結して、より進化したバルクフィーダの完成と、バルク実装のインフラ整備を業界あげての活動として展開させたい。
「バルクは特別なもの」から、テープ以上の生産性と信頼性を持つ「新しい実装技術」として広く普及させ、地球環境保護に貢献していきたい。
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