シート状ノイズ対策部品

各社・TDK


 ノイズ対策に一般的に使われるのがノイズフィルターである。チョークコイルと呼ばれるコイルやコア材料にコイルを巻いたもの、コンデンサーやコンデンサーとコイルを組み合わせたものが使われる。そして近年は機器の小型化に伴ってこれらコイルはチップ部品(SMD)化され、各種のノイズ対策部品が登場し利用されている。
 しかし、最近は高い周波数域を扱う機器が増えたことで、超高周波域での輻射ノイズが多く発生しており、従来の対策部品では十分なノイズ対策効果が得られない場合がある。また、モバイル機器では小型、薄型化で対策部品が取り付けられないということも少なくない。
 これに対応するために、シート状のノイズ対策部品が開発され、各社から発売されている。ノイズ対策部品は、フェライトや金属磁性材料粉をゴムやプラスチックと混合し、シート状にしたもので、磁気損失特性を利用して、高い周波数帯域における不要な電波(ノイズ)を熱エネルギーに変換することでノイズを抑制する。
 これらはノイズ発生源に対して直接対策ができること、使用磁性材料により10MHz帯から数GHzまでの幅広い周波数帯のノイズに対応でき、シート状のため実装面積を取らないのが特徴である。



◆バスタレイドとフィルムインピーダ
 シート状ノイズ対策部品で代表的なのがNECトーキンの「バスタレイド」と「フィルムインピーダ」である。これは複合磁性体をベースにしており、複合磁性体層だけで構成した単層構造のものと片側に導電体層を持つ2層構造のものや、磁性体層の間に導電体層を持つ3層構造のものがある。
 磁性体層は、準マイクロ波帯域で大きな磁気損失特性が得られる扁平状の鉄・シリコン・アルミニウム合金粉末をポリマー中に高密度で配向させた構造になっている。磁性体粉末表面が絶縁皮膜で覆われているため高い磁気抵抗が得られる。ノイズ抑制有効周波数は10MHz〜3GHz。
 3層構造の薄型バスタレイド3GFは、小型高周波電子機器向けに開発した0.05mmの極薄シート状ノイズ対策部品フィルムインピーダE50で誘電体シートを挟み込んだもの。厚さは0.25mmと従来の3層構造品の4分の1の超薄型化を実現している。中心層に複合誘電体層を設けることにより、反射減衰特性を損なうことなく大きな等価減衰量を実現している。
 対応周波数は100MHz〜3GHzと幅広い帯域をカバーする。基板間の電磁干渉の抑制などに効果を発揮する。
 また、極薄型シートのフィルムインピーダは、より狭い電子機器内で放射ノイズを抑制ができるもので、最新のものは厚さ25μmで100MHz〜3GHzまでの高周波に対応する。

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  図1
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三層構造バスタレイド3GF(NECトーキン)
フィルムインピーダ(NECトーキン)
バスタレイドの断面構造図


◆ノイズ対策用電波吸収体
 大同特殊鋼のDPRシリーズは厚さ0.1mm(従来品は0.25mm)の超薄型で、密着曲げが可能な耐熱性に優れた電磁波吸収体である。従来のゴムベースの電波吸収材に加え、プラスチックベースの製品もラインアップに加えた。耐熱性の面でも従来品は90℃が最高であったが、150℃とし、難燃性UO規格認定を取得している。
 また、電波吸収体として国内で初めて30μm(0.03mm)厚を実現した超薄型シートDPR003HTを開発した。
 これは狭い空間を利用したEMCノイズ対策が可能。磁性金属粉末とゴムの2重構造で電気的絶縁体であるため、ノイズ発生源近くに張るだけで電磁はノイズの除去、発生が防止できる。独自技術の採用で耐腐食性に優れ、高湿度下での使用もできる。
 おもな用途は、携帯電話、デジタルカメラ、PDAなど。
 さらに300MHz以下の低周波数の電磁波対策を目的とした電波吸収体DPR―HTZを開発した。300MHz以下の低周波数帯域のノイズ対策部品はフェライトが使用されているが、柔軟性がない、スペースを取る、形状に制約があるなどの欠点がある。
 DPR―HTZは、磁性金属とゴムの2重構造のシート化により、こういった問題が解消した。
 厚さが0.03mm〜1mmと薄型で柔軟性があるため、狭い空間でもノイズ対策が可能である。

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電磁波吸収体DPRシリーズ(大同特殊鋼)

◆電磁波シールド材
 ダイワボウのフレキシブル電磁波シールド材「メタックス」は、各種繊維の表面に金属皮膜を形成して導電性を持たせたもの。
 繊維のため薄くて柔らかく、裁断したり、張り合わせたり、包んだりと用途、目的に応じてフレキシブルな加工が行えるのが特徴である。
 また、綿素材に独自の難燃加工「ダイワボウ ブロバン」を施し、ノンハロゲンでも高い難燃性を持つ572C環境負荷低減導電布を開発した。この導電布は天然素材に無電解メッキにより、銅/ニッケルメッキした業界初のノンハロゲン難燃電磁波シールド材である。ハロゲンおよびアンチモンなどの難燃剤を使用しない代わりにリン系難燃剤で高い難燃性能を可能にしている。
 アプリケーションは、屈曲部に使用する電線ケーブルなどに装着し、不要輻射波の侵入を防ぐとともに外部に輻射させないようにする。

写真3
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電磁波シールド材(ダイワボウ)

◆アブソシールド
 アブソシールドは、日立金属の電磁波シールド材で、ノイズ吸収層だけのKタイプ、吸収層とシールド層のKSタイプ、シールド層を吸収層でサンドイッチしたKSKタイプがある。
 シールド層と吸収層は熱圧着で積層一体化している。シールド層には金属を使用していないため、柔軟性に優れている。吸収層はゴムに金属磁性粉、酸化物磁性体粉、カーボンなどを混合している。
 粉体の種類、形状、および混合量のコントロールや数種類のシートを積層することで、任意の周波数特性を得ることができる。厚み3mmで500MHz〜20GHzのノイズを60%以上吸収する。

写真5
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  写真6
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アブソシールド(日立金属)
薄型フレキシールド(TDK)

◆フレキシールド
 TDKのシールド材「フレキシールド」は、IRL、IVM、IRB、IREの4タイプがある。
 磁性材料と樹脂を混合分散させた複合材料にすることにより、高周波まで広帯域な放射ノイズに対して大きなノイズ抑制効果が得られる。0.25mmの薄型化が可能で、わずかなスペースでも装着できる。
 IRLは高速デジタル機器輻射抑制用に開発されたシート状ノイズ対策部品で、鱗片状の新組成軟磁性金属(鉄・シリコン系合金)を塩素化ポリエチレンと混合したもの。100MHzから10GHzまで広帯域のノイズ抑制効果を持つ。IVMは高絶縁性、難燃性で100MHz〜3GHz、IRBは準マイクロ波用で500MHz〜5GHz、IREはGHz帯用で3GHz〜30GHzまでの周波数に対応する。

写真7
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ゲル状フェライトシート(FDK)

◆ノイズ対策用フェライトシート
 富士電気化学は、ノイズ対策シートとしてフェライトシート、ゲル状フェライトシート、フェライトプレートを発売している。
 フェライトシートは、塩素化ポリエチレンなどの樹脂にフェライト粉を充填した複合シートで、用途に合わせてフェライト粉の材質、粒子径、充填率を最適化している。
 ゲル状フェライトシートは、熱対策に用いられる放熱用シリコンゲルにフェライト粉を混合し、磁気特性を負荷させることにより、熱対策とノイズ対策の両方の機能を持たせたもの。回路基板上のチップの凹凸に密着した実装が可能である。
 また、回路基板とシールド筐体との間に挟み込むことで電波を吸収する。
 熱伝導率は最大のもので3.0W/m・K、耐熱温度は―30〜+150℃となっている。
 フェライトプレートは、0.2〜0.6mmと非常に薄型でありながら、優れたノイズ対策性能が得られる。破損防止のため表面をテープで保護している。また、フェライトの材質を選ぶことでさまざまな周波数に対応する。






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