LC複合EMIフィルターアレイの技術

甲斐孝徳:三菱マテリアル(株)
セラミックス工場電子デバイス開発センターフィルターグループ



◆はじめに
 近年、AV機器などのデジタル化、パソコンおよびその周辺機器の高性能化、多機能化に伴い信号が高速化となり、その結果、高周波ノイズの発生によりノイズ対策がますます困難になってきている。
 そのような高速信号ラインのノイズ対策部品として、三菱マテリアルでは3端子型LC複合EMIフィルター(LFA30、LFA20シリーズ)を開発、商品化した。しかしながら、ノートパソコンや各種携帯機器に代表されるように電子機器はここ数年の中で小型かつ薄型化が急速に進み、それとともに電子部品の小型薄型化が必須となり実装スペースが小さく、また電子機器メーカーにおける実装コストも安価となり得るアレイ(多連)品の要求が強くなってきている。そのような市場要求に対応するため、このたび、3216形状4連アレイの3端子型LC複合EMIフィルター(LFA34シリーズ)および、3216形状4連アレイの2端子型LC複合EMIフィルター(LZA34シリーズ)を開発、商品化した。本稿では、これらの製品の開発技術およびその特徴について紹介する。
 三菱マテリアルのLC複合EMIフィルターには、独自の混合焼成プロセス技術を用いて作製した磁性体マイナス誘電体複合材料を使用している。この複合材料のモデルを図1に示す。磁性体と誘電体をそれぞれ粒径制御し、所定の割合で混合し、独自の焼成プロセスにより、一体焼結を行うことにより、目標とする透磁率、および誘電率が得られる。
 磁性体、誘電体を目標特性に合わせて可能であり、また同一材料においても任意の組成により所望の透磁率、誘電率が得られ、材料の幅が広がる特徴を持つ。
 この複合材料を使用することにより、3端子型においては同一平面状にLとCのパターンニングが可能となり、図2に示す多段フィルター回路構造が実現される。2端子型においては同じく複合材料を用いて図3に示すようなLとCの並列共振回路を実現している。
 LFA34シリーズは3216形状(3.2×1.6mm)に1608形状(1.6×0.8mm)の3端子型LC複合EMIフィルター素子を4個入れた4回路構造である。それぞれの素子は多段フィルターの構造を有している。そのためフィルター特性として重要である遮断域において急峻な傾きを持ち、かつ減衰域が広い挿入損失特性が得られる。
 図4にLFA34シリーズとフェライトビーズの挿入損失特性を比較している。LFA34シリーズは信号をなまらせることなく、広帯域でノイズを減衰させることができ、十分なノイズ効果が得られる。カットオフ周波数(−3dB)22MHz、47MHz、68MHz、100MHzの4アイテムをラインアップしている。
 LZA34シリーズは、3216形状(3.2×1.6mm)に1608形状(1.6×0.8mm)の2端子型LC複合EMIフィルター素子を4個入れた4回路構造である。それぞれの素子はLとCの並列回路を形成している。特に信号周波数成分とノイズ成分が隣接している場合に、問題となるノイズ成分をピンポイントで除去することが可能である。また、高密度配線基板などにおいて、グランドラインの引き回しが困難な場合やグランドが弱い場合などには有効である。
 このLZA34シリーズは材料組成により誘電率と透磁率を幅広くコントロールできる複合材料の特徴と内部構造を工夫することにより、挿入損失特性における中心周波数、最大減衰量、帯域を自由に設計できる特長を有する。図5に現在ラインアップしている3アイテムの挿入損失特性を示す。帯域はlogスケールにおいて、中心周波数と−3dBの周波数の2倍を表している。
 これらの部品は、コンデンサー、フェライトビーズ、CR複合の3216タイプの4連アレイと同様の寸法のため、ノイズ部品としての置き換えも可能であり、高さ方向も最大で0.8mmと薄型であるため、セットの低背化に寄与できる。また、近年環境問題が騒がれる中、端子電極部のメッキについても鉛フリーであるSnメッキ加工品である。

  図1
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  図2
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  図3
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複合材料モデル
LFA34等価回路
LZA34等価回路
  図4
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  図5
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LFA34シリーズ挿入損失特性
LZA34シリーズ挿入損失特性


◆LFA34、LZA34シリーズの用途
 これらのアレイ品は多数のバスラインが集中して存在する個所のノイズ対策部品として需要がある。
 特に液晶などの映像機器などにおいての、高性能、多機能化に伴い、例えば従来は液晶パネルのコントローラー周辺にビーズアレイ、コンデンサーアレイ、抵抗アレイやそれらの組み合わせが使われていたが、機能面と同時に、スペースメリット、実装コストの面から、LFA34、LZA34シリーズが注目されている。
 信号の高周波化に伴い回路基板設計を変更した時に、従来のノイズ部品で問題なかった場合においても、予期せぬ高周波ノイズの発生が起こり、ノイズ規制値、特に海外の規制値をオーバーする場合が生じている。
 また、ノイズフィルターの選定によっては、急峻さが足りないために信号に必要な高周波成分を落としてしまい動作しなくなる場合もある。このようなケースでは3端子および2端子LC複合EMIフィルターアレイのLFA34、LZA34シリーズは有効手段な対策となる。用途としては、液晶などのデジタル映像機器がメインとなる。
 具体的には、
(1)デジタルテレビのクロックバスライン、インターフェイス部
(2)カーナビゲーションのインターフェイス部
(3)ノートブックパソコンのLCDコントローラー部、インターフェイス部
(4)複写機のクロックバスライン、インターフェイス部
である。

  写真
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  表1
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  表2
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LC複合EMIフィルターアレイLFA34シリーズ(左)トLZA34シリーズ
LFA34シリーズ
LZA34シリーズ


◆まとめ
 今回紹介したLFA34、LZA34シリーズはそれぞれの特徴を生かし、主に映像機器の信号ラインのノイズフィルターとして有効である。今後の課題として高周波品のラインアップ、また環境負荷低減を十分考慮した小型化製品の早期開発、製品化を行い、客先ニーズを満足する製品群を増やしていきたいと考えている。






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