リセットICの技術

平松慶久:ローム(株)POWERMANAGEMENT LSI商品開発部



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リセツトIC「SMP5C2」(左)と「EMP5」(右)


 近年、あらゆる電気製品にマイクロコントローラーやDSPなどのデジタル回路が用いられるようになり、製品の高機能化・高性能化が一段と進んできている。
 このような電気製品においては、電源の投入時や立ち下がり時にマイコンやDSPに対してリセットをかけ、システムとしての誤動作を防ぐことが必要となる。また、携帯機器などのバッテリー駆動のセットにおいても電源のON時(投入時)、OFF時(バッテリー電圧低下時)などに、その電源電圧を監視するシステムに対して確実にリセットのコントロールを行う必要がある。このように、信頼性の高いシステム動作を達成するための重要なデバイスとして種々のリセットICが提案されている。
 従来は、ディスクリート部品で構成されていることもあったが、システムの複雑化や、より高い信頼性から高精度が要求されるようになり、あらゆる分野においてこのICが採用されているのが現状となっている。
 また、一部には、マイコンやレギュレーターなどにリセット回路の取り込みもみられるが、最終的なシステムの評価時におけるフレキシビリティやstand alone化による安全性など確保の意味から、単体品の必要性は依然根強い状況である。
 ロームでは、このようなリセットICの分野に対し、CMOS高抵抗プロセス技術(低消費化)、トリミング技術(検出電圧の高精度化)、超小型パッケージ技術(実装面積縮小化)などを用い、市場のニーズに適応したリセットICを開発しており、その紹介を行う。



◆検出電圧の高精度化(±1.5%実現)
 マイコン、DSPの電源電圧精度の要求、また、システムの複雑化に伴い、その電圧を監視するリセットICの検出電圧精度に対する要求も上がってきている。このような検出電圧の高精度化に対し、ロームではレーザートリミング技術を用いて従来電圧精度の±2%において、0.5%精度を高め、業界最高精度の±1.5%を実現している。
 この精度により、複雑で高精度が要求されるなシステムのリセット動作を確実に実現できる。



◆超低消費電力化
 超低消費電力化リセットICでの無駄な電力消費は許されない!
 ロームは、この要求に対し、消費電流が少ないディプレッションMOSと電圧検出抵抗に独自ハイインピーダンスプロセスを使用することにより、超低消費電流(0.8μA typ.)を実現している。



◆パッケージの小型化
 リセットICに要求されるものとして、もう一つ大きな要素にいかに小型化できるかが存在する。本来リセットICはできるだけマイコン、DSPなどの電源電圧が印加される端子のすぐそばに置くことが望ましく、実装パッケージの小型化が要求されている。また携帯機器、メモリーカードなどについては機器の薄型化に伴い、実装面積の縮小化だけでなく、部品の高さについても配慮が必要になってきている。
 この要求に対し、ロームは小型パッケージのSMP5C2に加え、リセットICは世界最小の超小型パッケージのEMP5パッケージ(面積<リード含む>1.6×1.6mm=2.56mm2 、高さ0.6mm)を開発した。実装面積では対SMP5比約70%減、高さにおいても半分以下に抑えることができ、小型・薄型セットに最適なものとなっている(図1)。

図1
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外形寸法図


◆外付けコンデンサー削除!
 リセットICにおいて、遅延時間を設定する方法として以下の3通りの方法が一般的に用いられる。 (1)オープンドレインの出力端子にコンデンサーを接続し、CRによる時定数で設定する方法(BD48XXG/FVEシリーズ)。
 出力MOS TrがONからOFFに切り替わることにより、出力端子に接続されているコンデンサーCoutは抵抗Routを通じて、CRの時定数によって決まる時間で充電される。その電圧がマイコンなどのスレッショルド電圧になるとリセットは解除される。0Vからスレッショルドに達するまでの時間が遅延時間となる(図2−1、2−2参照)。 (2)外付けコンデンサー遅延機能付きリセットICで、専用端子(CT端子)にコンデンサーを接続し、その時定数で設定する方法(BD52XXG/FVE、BD53XXG/FVEシリーズ)。
 入力電圧が検出電圧を超えると、CT端子に接続されているコンデンサーが内部抵抗を通じて充電され、その電圧が内部のスレッショルドに達すると出力端子がLからHに切り替わる。この時間が遅延時間となる。
 (1)の方法では、出力端子波形がCRの定数によりなまってしまうが、(2)の方法では、出力波形がなまることなく使用することができる。
 ロームは内部抵抗として、独自のハイインピーダンスプロセスを用いることにより外付けコンデンサーへのチャージ電流を少なくすることができ、低容量のコンデンサーで遅延時間を設定することが可能となっている(図3参照)。
 コンデンサーを小さくすることにより実装面積の小型化、コンデンサー値の温特向上、トータルコストダウンを図ることができる(図4−1、4−2参照)。

  図2-1
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  図2-2
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  図3
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入出力電圧タイミングチャート(BD48xxG/FVEシリーズ)
BD48XXG/FVEブロック図
Reset IC 比較(25℃)
  図4-1
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  図4-2
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入出力電圧タイミングチャート(BD52xxg/FVE,BD53xxg/FVEシリーズ)
BD52XXG/FVEブロック図


 (3)IC内部に発振器とカウンターの遅延時間を設定する方法(BD45XXXG、BD46XXXGシリーズ)。
 (1)、(2)いずれの方法も外付けにコンデンサーが必要であり、部品点数が増加してしまう。そこで、外付けコンデンサーなしで遅延機能を持たせるものとしてカウンター遅延回路内蔵リセットICがある。
 入力電圧が検出電圧を超えると内部発振器が動作を始める。発振器の信号を内部カウンターでカウントし設定された一定時間になると、出力がLからHに切り替わる(カウント数を変更することにより遅延時間を設定できる)。出力が切り替わると同時に発振器を止める。このように、遅延時間を作成する発振器は必要時間以外は動作しておらず低消費を実現している(図5−1、5−2参照)。

図5-1
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  図5-2
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入出力電圧タイミングチャート
BD45XXG,BD46XXGブロック図


 ロームとして、遅延時間設定方法、プロセス、出力形式などの違いにより以下の4シリーズをラインアップしている。
―BD47xxGシリーズ―
 本シリーズはBip Trを用いた単純リセットICである。
 (1)パッケージ  SMP5
 (2)検出電圧   1.9〜4.6V(0.1Vステップ)
 (3)検出電圧精度 ±2%
 (4)消費電流   2μAtyp.(出力H時)
 (5)出力形式   オープンコレクタ
 (6)最大印加電圧 10V
―BD48xxG/FVE、BD49xxG/FVEシリーズ―
 本シリーズはCMOSプロセスを用いた単純リセットICである。
 (1)パッケージ  SMP5C2=BD48xxG、BD49xxG EMP5=B
D48xxFVBD49xxFVE
 (2)検出電圧   2.3〜6.0V(0.1Vステップ)
 (3)検出電圧精度 ±1.5%
 (4)消費電流   0.8μAtyp.(出力H時)
 (5)出力形式   BD48xxG/FVE=
オープンドレインBD49xxG/FVE− CMOS出力
 (6)最大印加電圧  10V
―BD52xxG/FVE、BD53xxG/FVE―
 本シリーズは、CMOSプロセスを用いた外付けコンデンサーによる遅延機能付きリセットICである。
 (1)パッケージ  SMP5C2=BD52xxG、BD53xxG EMP5=BD52xxFVE、BD53xxFVE
 (2)検出電圧   2.3V〜6.0V(0.1Vステップ)
 (3)検出電圧精度 ±1.5%
 (4)消費電流   0.95μAtyp.(出力H時)
 (5)出力形式   BD52xxG/FVE=オープンドレイン BD53xxG/FVE=CMOS出力
 (6)最大印加電圧 10V
―BD45xxxG、BD46xxxGシリーズ―
 本シリーズはCMOSプロセスを用いた、遅延機能内蔵のリセットICである。内蔵した発振器とカウンター回路により、50ms、100ms、200msの遅延時間を設定。また、外部からの信号により、出力のH/Lをコントロールできる。
 (1)パッケージ  SMP5C2 EMP5
 (2)検出電圧   2.3V〜4.8V(0.1Vステップ)
 (3)検出電圧精度 ±1.5%
 (4)消費電流   0.85μAtyp.(出力H時)
 (5)出力形式  BD45xxxG=オープンドレイン BD46xxxG=CMOS
 (6)最大印加電圧 10V
 (8)強制リセット端子(ER端子)付き
 (9)遅延時間   50ms(BD45xx5Gシリーズ)
100ms(BD45xx1Gシリーズ)
200ms(BD45xx2Gシリーズ)
 このようにロームのリセットICは、あらゆるユーザニーズに対応することが可能である。今後も高精度、低消費電力、小型化というニーズに貢献する製品を幅広く開発していく方針である。






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