◆はじめに
ノートパソコンの薄型化の要望に対応したポインティングデバイスの一つに静電容量方式のグライドポイント(写真1)がある。
組み込みタイプのポインティングデバイスとして不動の地位を確保しているデバイスである。
グライドポイントに採用されている静電容量方式の検出原理は、図1のようにX、Y電極間で構成された電気容量が、指の接近により人体がアースとなって容量値が減少することを応用し、指が置かれている座標の検出を行うことを可能にしたデバイスである。
したがって、操作面に荷重をかける必要がないので触れるだけの軽いタッチで操作することが可能である。
カーソル操作に用いられるような相対座標の検出以外にも操作面上で指を軽くタップすることでクリック、ダブルクリックなどのSW入力や絶対座標の検出、人体検出のセンサーとしても用いることができる。
本編では、従来のグライドポイントよりもさらに薄型化を追求して開発したフィルムグライドポイントについて紹介する。
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グライドポイント |
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フィルムグライドポイントの検出原理 |
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フィルムグライドポイントの主な仕様 |
◆フィルムグライドポイント
(写真2参照) 「フィルムグライドポイント」はセンサー部にアルプスが保有する印刷技術、導電接合技術を用いフィルム上に回路を形成して多層化した「フィルム基板」を採用している。
従来品では積層基板の裏面に配置していた駆動系回路をセンサー部と切り離し、センサー部の外に配置することでセンサー部の厚み0.6mmの飛躍的な薄型化を実現している。
これにより、当社従来比で約75%減の大幅な薄型化を達成、ノートパソコンの一層の薄型化に対応する。
駆動回路をセンサー部の外に配置するためにはASICとセンサー部をつなぐ回路を引き回す必要があり、S/N特性の低下からセンシング精度の低下を招く恐れがあったが、当社固有の回路設計技術により従来品と同等の高いセンシング感度や耐ノイズ性能を実現している。
フィルム化することにより、デザイン面での自由度が向上したことも特徴の一つにあげられる。
従来のガラス系基板を採用したタイプでは実装スペースは平坦面であることが条件になり、デザイン的に曲面に実装したいという要望に対しても対応する術がなかったが、「フィルムグライドポイント」のセンサー部に採用した「フィルム基板」は曲げに対しても柔軟性を兼ね備えており、デザイン的に多様化する機器のニーズに対応する。
静電容量方式の特性をうまく生かすことで、他の方式では実現できなかったさまざまな機能を提供することができ、今後はノートパソコン以外の機器への応用も図れる。
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フィルムグライドポイント |
◆3軸対応スティックポインタ
静電容量方式のグライドポイント以外にもカーボン抵抗体の歪素子を用いたキーボード組み込みタイプのポインティングデバイス「スティックポインタ」も手がけている。
スティックポインタの検出原理はスティックに荷重をかけることで、ブリッジ回路上に構成された歪素子に負荷がかかりカーボン抵抗の伸び縮みによって抵抗が上下することを応用したデバイスである(図2)。
従来のXY軸に対応した水平方向の検出に加え、垂直方向のZ軸の検出を可能にした新製品「3軸対応スティックポインタ」をラインアップに追加した。
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スティックポインタの検出原理 |
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3軸対応スティックポインタの主な仕様 |
◆アルプスの取り組み
アルプスは今回紹介したポインティングデバイス以外にもタイピング機能を提供する薄型キーボードやダイレクト入力を可能にするタッチパネルなど情報機器に必要とされる入力デバイスを幅広く手がけておりトータルな製品開発を推し進めている。
人と機器をつなぎ、快適な操作環境を実現するためにアルプスはヒューマンメディアインタラクティブ(HMI)を推進していく。
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