電子機器の電源は、機器の小型・高密度化に伴って小型・軽量で効率の良いものが求められるようになり、従来のトランスを用いたドロッパー式から、現在では高周波スイッチングによるスイッチング電源やDC−DCコンバーターが主流になっている。
高周波スイッチングによる電源は小型・軽量化が可能であり、しかも効率が高く、安定性に優れている。
これら電源に使用される半導体デバイスや回路部品は、より高性能・長寿命化をめざして開発が進められている。
◆電源用半導体
電源に使用される半導体デバイスは、パワートランジスター、整流用ダイオード、電源コントロールIC、それにレギュレーターICがある。
トランジスターは、パワーデバイスとも呼ばれ、従来はバイポーラトランジスターが多く使われていた。近年はMOS−FETが多く使われている。これはMOS−FETが周波数特性に優れているためで、より高周波でのスイッチングが行えることから電源の小型・軽量化が可能になる。
最近のバイポーラトランジスターは、スイッチング損失を最小限にして低飽和電圧の特徴を生かした超高速、高耐圧品が開発されており、ローVFのショットキーバリアダイオードを組み込んだ複合品もある。
MOS−FETは、周波数特性に優れるだけでなく2次降伏がないことや、回路が簡単に組めることが特徴である。課題はオン抵抗の低減とスイッチング速度の向上である。オン抵抗はMOS−FETが動作するときの抵抗で、性能を左右する最も重要なパラメーターである。また、携帯電話や携帯機器の普及、ルーターやサーバーなどのDC−DCコンバーター電源用として低電圧のパワーMOS−FETが注目されている。パッケージも最近はフラットリードタイプの薄型の超小型品が採用されている。
電源の2次側に使用される整流用ダイオードは、PN接合の高速ダイオード(FRD)とショットキーバリアダイオード(SBD)がある。
SBDは、シリコンとバリアメタル金属とのショットキー接合を利用したダイオードで高周波特性に優れているのが特徴である。
最近では、電子機器の低電圧化傾向から、整流用ダイオードの代わりに低オン抵抗のパワーMOS−FETを使用した2次側同期整流方式の採用が増えている。
電源コントロール用ICは、低消費電力で高周波制御ができ、高温でも安定した動作が可能なものが要求されている。最近はソフトスイッチングへの対応ということもあって専用のICを開発する動きがある。また、高耐圧パワーMOS FETとCMOS制御回路をワンチップ化し、使用部品点数の削減をはかったインテリジェントパワーデバイス(IPD)の採用も進んでいる。
レギュレーターICは、電子機器の各モジュールに安定した電圧を供給する。最近のノートパソコンなどではCPUの高クロック化から大電流の電源が求められている。
また、デバイス内部の微細化、低電圧化により入出力電圧差が少なくなっていることからLDO(LowDropOut)レギュレーターのニーズが高まっている。
電子機器の省電力化にとともに、待機電力削減の取り組みも本格化しており、対応する関連半導体デバイスの開発も本格化している。
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NチャンネルパワーMO SFET |
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降圧型スイッチングレギュレーターコントローラー |
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DC-DCコンバータートランス |
◆トランスとコイル
スイッチング電源に使用するトランスは、高周波特性に優れたフェライトコアに巻線を施したものが使われている。トランスの小型化や薄型化のためには高性能なコアが要求される。近年はコンピューターを利用した材料の解析技術が進み、また、コンピューターシミュレーションにより、要求仕様にあわせたトランスコア形状が作れるようになっている。
また、卷線材料も従来の丸線から平角線にして巻線ロス減らしたり、箔状にしてこれを積層して薄型化したトランスもある。
シートコイルやフレームコイルを採用したトランスも開発されている。さらに低ノイズ化を図るためにボビンを多分割構造にしたものも開発されている。
この他、トランスには圧電現象を利用した圧電トランスがある。圧電トランスは巻線を必要とせず高効率で小型・薄型化が可能なことから、おもにモバイルパソコンの液晶バックライト用インバーターに採用されている。
チョークコイルは、トランスと同じくフェライトコアに巻線したものである。モバイル機器のDC−DCコンバーターに使用するチョークコイルは小型で薄型のものが要求されることから、コア材料には高飽和磁束密度で低漏洩磁束品が使用されている。
電源には、ノイズ対策用のコモンモードチョークコイルや高調波対策用のチョークコイルも使用されており、ノイズ対策と高調波対策を同時に行うハイブリッドチョークコイルも開発されている。
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電源用トランス |
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表面実装パワーインダクター |
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パワーチョークコイル |
◆コンデンサー
コンデンサーはこのところ、寿命および耐熱特性が重要視されてきている。最も多く使用されているアルミ電解コンデンサーでは、入力回路用として105度C、20000時間保証といった製品が開発されている。また、入力平滑用では高リップル化、安全性に対応した異常ストレスに対応する安全コンデンサーなども開発されている。二次平滑用では高周波低イピーダンス化や低ESR(等価直流抵抗)といった特性の改善が積極的に行われている。
小型化も進められており、縦型で高さ3.95mmの超低背製品も開発されている。機能性高分子や固体電解質といった電解液レスのコンデンサーも各社が開発、製品化している。
近年、電源2次側用アルミ電解コンデンサーの代替や小容量DC−DCコンバーターの入力側への採用が増えているのが積層セラミックコンデンサーである。このコンデンサーは低温焼結で均一粒子のセラミックによる薄層化技術により大容量化が可能になった。
また従来、電極に貴金属を使用していため高価であったが、最近では卑金属電極の採用で価格もこなれてきた。このコンデンサーはチップ部品(SMD)として供給され、小型で長寿命のため電源の小型、長寿命化に貢献する。100μFの大容量品も登場している。
この他、2次側平滑用としてタンタルコンデンサーも期待されている。このコンデンサーは小型で容量が大きいのが特徴。最近は高CVのタンタルパウダーを使ったものが開発され、1.6×0.85×0.8mmで10μFの大容量品も製品化されている。また、機能性高分子タンタルコンデンサーも開発されており大容量化が注目されている。このコンデンサーは低ESR、高許容リプルが特徴である。
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105℃2万時間保証電解コンデンサー |
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大容量積層セラミックチップコンデンサー |
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チップタンタル電解コンデンサー |
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