三菱・松下がナノメートル世代システムLSIプロセス技術を共同開発

資料:三菱電機/松下電器

 高精細度の画像や音声などの高速、大容量データのリアルタイム処理が進む携帯情報機器やデジタル家電では格段の高性能化、低消費電力化、高機能化が求められている。そのキーデバイスとなるシステムLSIは大規模なロジックゲート、大容量の内蔵メモリーの実現が必要となっている。このため、次世代システムLSIは100ナノメートル以下の微細化プロセス技術とともに、内蔵メモリーのセルの縮小化(6個のトランジスターで構成する6―T SRAMセルで1平方マイクロメートル前後)などによってこれらの要求に応えようとしている(図1)。

図1
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SRAMセルサイズのトレンド


◆三菱・松下が次世代LSI共同開発
 三菱電機と松下電器はこうした次世代システムLSIの要求に対し、98年12月にDRAM混載技術と高速ロジック技術を生かした次世代システムLSI技術を共同開発することで合意。2001年6月に第1フェーズの130ナノ次世代DRAM混載システムLSI技術の開発を完了。2002年4月松下電器が新井工場でデジタル家電用に同システムLSIを量産。三菱電機も年内に西条工場でネットワークやデジタル家電向けに同システムLSIの量産を始める。
 さらに第2フェーズとして90ナノメートルの業界最先端システムLSI技術の共同開発に取り組み、6月11〜13日、米国ホノルルで開催された「VLSIテクノロジーシンポジウム(2002VLSI)」で1平方マイクロメートルを切る世界最小SRAMセルを内蔵した90ナノメートル世代システムLSIプロセス技術を共同開発した、と発表した。


◆90ナノメートル世代システムLSIプロセス
 共同開発した90ナノメートル世代システムLSIプロセス技術は独自の微細ウェル分離技術とセルレイアウトの工夫により、6マイナスT SRAMセルでは世界最小のセルサイズ1.56×0.64マイクロメートル(0.998平方マイクロメートル)を達成(図2)。
 窒素イオン注入技術を利用した新開発の2層構造コバルトシリサイドプロセスにより、50ナノメートル世代まで適用可能な細いゲート電極の低抵抗化と接合リーク電流抑制を両立させ、トランジスターの高性能化を実現した。
 さらに微細加工に優れ、高い強度を持つLow材料をCu配線の層間絶縁膜に採用。配線容量を大幅に低減した。
 これにより、現在の130ナノメートル世代と比べ約2倍の140万トランジスター/平方ミリを実現。大規模SRAMを内蔵した1億数千万以上のトランジスターを有する大規模システムを100平方ミリ以下のチップに搭載することが可能となる。
図2
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SRAMセル写真


◆0.98平方マイクロメートルSRAMセルの実現
 世界最小SRAMセル面積を実現するため、チップ上のn型、p型の2つの不純物領域を微小サイズで電気的に分離する独自の微細ウエル分離技術を開発。セルのレイアウトパターンを工夫した(図3)。
 露光に従来のi線に代えてKrFを採用。垂直なレジスト断面とパターン忠実度精度を高めた。2ステップイオン注入で分離特性を向上。これまで0.3マイクロメートル強だったウエル分離幅を0.19マイクロメートルに狭めながら同等の9V分離耐圧を確保。セルのレイアウトを微細露光に有利なストレートパターン、直交パターンでSRAMセルを構成した(図4)。
図3
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  図4
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SRAMセルサイズ縮小技術
微細ウエル分離技術


◆2層構造コバルトシリサイドプロセス
 シリコンにコバルトをつけた後、窒素イオンを注入し、熱処理して窒素イオンが導入された上層部と窒素イオンが導入されていない下層部の2層コバルトシリサイド領域を形成。2層構造を制御してシリサイドの凝集、突き抜けを抑制。低抵抗、低接合リーク電流を実現した(図5)。
図5
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  写真1
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二重構造コバルトシリサイド技術
二重構造コバルトシリサイドを適用したトランジスター断面




◆Low―k材料を層間絶縁膜とするCu配線技術
 層間絶縁膜に従来の誘電率3.7のSiOFに代えて誘電率2.8のSiOCを用い、配線容量を大幅に低減。
 高速信号処理を達成した。層間絶縁膜にホールと配線の二重の抜きパターンを形成し、銅配線を埋め込むデュアルダマシン法を採用。スタティックノイズマージン180ミリVを確保し、SRAMの安定動作を図った(図6)。
図6
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  写真2
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Cu/low-k配線の断面写真
Cu配線の鳥瞰図


◆むすび
 今回開発したSRAMセル内蔵90ナノメートル世代システムLSIプロセスは、携帯情報機器やデジタル家電用に両社で2003年に商品化する計画だ。さらに微細化を進める第3フェーズの65ナノメートル世代システムLSI技術開発はこれから。三菱電機、松下電器も90ナノメートル以下のシステムLSI技術を共同開発するかどうかは年内をメドに結論を出すとして検討中だ。次世代の携帯情報機器、デジタル家電などのキーデバイスであるシステムLSIの微細化の開発は続く。



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