サージアブソーバーには、気体放電現象を利用したガスアレスター(GA)タイプと、半導体特性を利用したバリスター(MOV)やシリコンサージアブソーバー(SA)の2種類に大別できる。
◇半導体特性を利用したバリスター・シリコンサージアブソーバーの特性
バリスター(MOV)やシリコンサージアブソーバー(SSA)は、半導体特性を有している素子。バリスターは酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする非直線抵抗素子で、サージ電流耐量および非直線係数が非常に大きく、設定された電圧以下では抵抗が非常に高く、ほとんど電流が流れないが、定められた電圧を超えると急激に抵抗値が低下し大電流を流す。酸化亜鉛バリスターの場合は、抵抗Rが電圧Vによって変化してしまい、グラフが直線にはならない。この特性からバリスターは「電圧非直線抵抗体」という名前が付いている。
シリコンサージアブソーバーは、ダイオードのアバランシェ特性を利用した非直線抵抗体製品で、洩れ電流が小さくアバランシェ効果は高速応答性があり、立ち上がり電圧に遅れることなく動作する。
特性の規定はバリスターと同様に洩れ電流値をもって規定している。
◇ガスアレスター(GA)の特性
セラミックやガラスの容器内部に不活性ガスを封入し、相対向する2つの電極(アノード・カソード)を設け気体放電現象を利用した素子。ガスアレスターの動作規定は直流放電開始電圧(Ez)で示し、電圧を100V〜500V/Secで上昇させた時のガスアレスターのブレイクダウン(放電した)電圧値をもって規定する。このガスアレスターの大きな特徴は静電容量が小さいため、高速データに影響がない。
サージ対策部品は、面実装型やユニット化などが増え、小スペース化が進み。通信回線などの対策部品では面実装型のガスアレスター、シリコンサージアブソーバーが急成長している。
◇チップ型アレスター
RHCAシリーズ(写真、表2)この製品は、45*32タイプのセラミック外囲器の内部に放電電極を設けたチップ型のガスアレスター。サージ耐圧・耐量はEN61000マイナス4マイナス5サージイミュニティの条件で4kV・2kAと非常に大きく、静電容量も0.6pF以下で広帯域にわたりフラットな特性を維持することが可能になり、広帯域にわたるマルチメディア機器や通信・信号ラインのサージ、ESDに対する回路部品保護に貢献できるものと考える。動作電圧は200V、300V、350V、400Vの4種類で、この製品の小型・低容量・耐環境特性などの特徴を生かし、CATV信号入力部、ADSL、ISDLなどの通信機器、情報端末関係などの誘導雷サージ、車載用電子機器のESD対策を目的としている。
クリックしてください。 |
クリックしてください。 |
|||
チップ型ガスアレスターRHCA | RHCAシリーズ製品仕様 |
◇通信回線のサージ対策
図2はModemのサージ対策例である。通信回線間および、回線マイナス接地線間へガスアレスターを接続することによりModem内部へのサージの侵入を防ぎ、サージを吸収させる。また、RS422、LANなどの通信回線は、対話形式などで複数台のコンピューターと接続されているので、それぞれの機器本体の入力される部分で対策を実施しないと効果が半減してしまう。また、データは敏感であるためサージアブソーバーで吸収した制限電圧のエネルギーでもトラブルが発生する場合があり、サージ対策を多段式に設けサージの抑制電圧を最大限に抑える方法を取ることを推奨する(図3参照)。
◇ESD対策
自動車の通信システムへ侵入する電磁雑音や静電気(以下ESDと称す)の対策には、入力アンテナとグランド間へ接続し、異常電圧(指先などで経験する静電気は7マイナス10kV程度、中には10kV以上の場合もある)グランドへ流す方法がある。ガスアレスターは漏れ電流がなく、静電容量も小さいため、通常受信する電波などへの影響がない。
クリックしてください。 |
クリックしてください。 |
|||
Modemの保護例 | 多段保護アブソ−バーユニット |
一般オフィスでは既にLANケーブルを使用したネットワーク化が一般的になり、今後、一般家庭へもホームネットワーク化が普及するであろう。ケーブルや無線LANといった通信回線ラインを軸に多段保護を施し、高速通信に対応した製品が増えていくと考える。また、コンパクト化が進むデジタル無線通信などが拍車をかけるチップ部品では、絶縁協調の問題は避けて通れない課題であり、今後ますます小型面実装のサージ対策部品が普及すると予測される。