VNAを用いた近傍電磁界測定装置は、基板やシールド材料の評価に有効である。しかしながら、実際の機器からのノイズ信号の測定はVNAではできない。このため新たに3入力位相差測定装置を作製し、これを用いて能動回路の近傍電磁界分布測定装置を作製した。
図5に3入力位相差測定装置の構成図を示す。入力信号は、ミキサでダウンコンバートされ、その信号をA/Dコンバーターで取り込み、FFT(高速フーリエ変換)を行うことで、信号の大きさと位相と周波数を測定する。このとき、ミキサのローカル信号とA/Dコンバーターのクロック信号は同じ物を用いているため、各信号間の位相情報を保って測定できる。
この測定装置を用いることで、周波数や位相が安定していないノイズ信号でも信号出力のベクトル和と差が計算可能となる。実際に作製した、3入力位相差測定装置の測定周波数は3GHzまでとなっている。
この測定装置を使って、近傍電磁界分布測定装置を作製した。図6に示すように、位相の基準として使用される固定されたセンサー(例えばループ磁気センサー)からの出力と、アクチュエーターを用いて移動させて電磁界分布を測定する電磁界センサーからの2出力は、3入力位相差測定装置に接続される。そしてPCでアクチュエーターと3入力位相差測定装置を制御して近傍電磁界分布を測定する。この構成により、動作している基板の近傍電磁界分布などの、能動回路の測定が可能となる。
この近傍電磁界分布測定装置を用いて、基板上で動作しているICのパッケージ上の近傍電磁界分布を測定できる。測定したICは約40MHzのクロックで動作しており、大きさは32×32mmである。このパッケージ上の近傍電磁界の分布を約1GHzにおいて、1mmステップで測定した(図7)。この測定結果は、電界、磁界の大きさの分布が位相分布と同時にリードフレームレベルの解像度で測定できていることを示している。
その他に、この測定を用いると、EMI部品挿入による対策効果を、電流電圧の変化として具体的に把握することが出来る。これらの結果を用いることで、ICの電源回りのコンデンサーやインダクターの設計や使用方法の最適化が可能となる。
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ICの近傍電磁界測定結果・・・ |
高い周波数まで使用でき、電界と磁界を同時に測定できるセンサーを開発した。このセンサーとVNAを用いることで受動回路近傍電磁界測定装置を作製した。また、センサーと3入力位相差測定装置を用いることで能動回路測定装置を作製した。これらの、近傍電磁界分布測定装置は、近傍電界と近傍磁界の位相情報も含む分布測定を行うことができる。さらにこの測定は、従来と比較して、高い周波数における測定、高い分解能の分布測定が可能である。これによって、従来の分布測定と比較して、測定によって得られる情報量が飛躍的に向上した。
太陽誘電では、この測定情報を活用して、効果的で効率的なEMC対策を可能とする手法の確立を進めている。さらに、この技術を活用して新たなEMC対策部品の開発も進めている。
今後、この測定装置の特徴を生かした、さまざまな測定アプリケーションの研究も進めていく。
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