半導体メーカーのロームは、リフロー実装が可能なタイプでは世界トップクラスの高出力/高感度を実現したセンサーチップセット(赤外発光ダイオード:SIM−012ST、フォトトランジスター:RPM−012PB)を開発した(写真)。
今回開発したセンサーチップセットは、発光素子としての赤外発光ダイオードと受光素子としてのフォトトランジスターからなり、それぞれが、従来のセンサーの常識を上回る高出力と高感度を実現している。
さらに、超小型で、かつリフロー実装が可能な面実装パッケージに封止することで、タッチパネル、リモコン、CDなどのディスク検出、FAX/プリンターの紙検出などのアプリケーションへの対応が可能で、さまざまなメリットを提供することができる。
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リフロー実装対応高出力/高感度光センサーチップセット |
これまでの光センサーは、発光素子である赤外発光ダイオード、受光素子であるフォトトランジスターともに高感度の商品を求めると、端子挿入タイプしか選択肢はなかった。しかし、セットの小型化、軽量化のニーズに対して新しいセンサーの開発ニーズが高まっていた。そして、感度の低いチップセンサーを使用するとしても、鉛フリーなどの実装条件になかなか適合するものがなかった。今回開発したセンサーチップセットに対する市場の要求は、
1.小型面実装タイプ
2.リード付きの高感度をチップで実現
3.リード付きの高出力をチップで実現
4.鉛フリーのリフロー条件に適合する
5.クラス最高の耐湿性
に大きく集約される。このことを解決することに成功したのが、この光センサーチップセットである。
◆高出力/高感度のチップセンサー
今回ロームが開発したセンサーは、卓越した光学設計により、発光素子側の赤外発光ダイオードでは、放射強度が2.8mW/srTyp.(IF=20mA)と従来品の約7倍(表1、グラフ1)。受光素子側のフォトトランジスターでは、受光時の光出力で1.6mATyp.(E=500Lx)と従来品の約4倍(表2、グラフ1)という高出力と高感度を実現している。
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赤外発光ダイオードSIM-012ST 電気的・光学的特性 | 出力特性 | フォトトランジスターRPM-012PB 電気的・光学的特性 |
チップの外形寸法でも投影面積で2mm×3mm、高さ3mmの超小型の使いやすいパッケージに封止されている(図1)。また、小型化面実装パッケージでも、光センサーの重要特性である指向特性も良好な特性を得ている(グラフ2)。
さらに、これまでの高出力/高感度な特性を持つセンサーは、挿入タイプのリード付きパッケージしか供給されていなかったが、今回開発した高出力赤外発光ダイオード(SIM−012ST)と高感度フォトトランジスター(RPM−012PB)は、両チップとも、リフロー実装対応のチップパッケージで供給することに成功した。当然のことながら、テーピングによる自動実装が可能である(図2)。
このことにより、従来品では、ハンダディップあるいは手ハンダによる基板装着を余儀なくされていた実装工程をなくし、自動実装とリフローによる自動化ラインで組み立てできることになる。このことは、従来のセンサーの常識を覆す事項となるだろう。
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外形寸法図(Unit:mm) | 指向特性 | テーピング仕様(Unit:mm) |
今回開発した高出力/高感度センサーチップセットの主な特徴をまとめると、
・従来品の約7倍(射強度2.8mW/sr Typ.)の高出力
・(赤外発光ダイオード:SIM−012ST)
・従来品の約4倍(受光出力で1.6mA)高感度。
・(フォトトランジスター:RPM−012PB)
・高出力/高感度クラスで最小 3mm×3mm×2mmの超小型面実装パーケージ
・クラス最高の耐湿性で、リフロー実装対応
などがあげられ、これまでの課題をクリアした画期的なセンサーであるといえる。
◆アプリケーション
今回開発したチップセンサーは、それぞれを単独で使用しても、高出力と高感度の特性を有しており、さらにペアで使用することで、それぞれの高特性をより大きく享受することができる。したがってこのチップセットの高出力/高感度特性は、あらゆるアプリケーションにおいてメリットがある。
主要なアプリケーションは、まずタッチパネルが考えられる。この用途では、これまでは光学式タッチパネルの多くはリード付きタイプのセンサーチップセットを使用していたが、今回の面実装チップセットを使用することで、従来品の高さ4.7mmに対し、2mmと半分以下に薄型化ができ、極薄化が求められているセットニーズに対応することができる。
さらに、直接画面に強くタッチしなければならない抵抗式、静電気式よりも軽くふれるだけでよい光学式のため、走行中に操作するカーナビのタッチセンサーや不特定多数の人が触れる駅の券売機のタッチセンサーなど、安全性が求められる場所や公共性の高い場所でのアプリケーションに大きく貢献することができる。
CDチェンジャーやプリンターなどに代表されるディスクメディア検出や紙検出には、これまで、フォトインタラプタやメカスイッチが使われていたが、これらは、製品の構造上、検出対象の大きさが限られている。しかし、今回のセンサーチップセットを用いることで、発光側・受光側と基板を分けることができ、スペースを自由に使用した設計が行えるため、さまざまな大きさの対象物の検出が可能になる。
また、今回開発したセンサーチップセットは、少ない電力で作動させることができるため、基板間の信号のやりとりを簡易な光通信で置き換えることにより、セットで基板と基板の接続に使用されているハーネスを不要にすることができるなど、これまでにない全く新しいアプリケーションも考えることができる。
◆今後の展開
ロームは、従来からセンサーをはじめとする光半導体素子の分野において、独自の化合物半導体技術と面実装パッケージ技術などにより、市場のニーズに対応したユニークな製品をいち早く供給してきた。そして、これからも時代をリードする新製品・新技術の開発を推進することで、顧客の満足を得る光半導体メーカーとして貢献していきたいと考えている。