現在、リチウムイオン電池は、既に一般的な二次電池として受け入れられ、携帯電話を筆頭に、ノートPC、カムコーダー、デジタルカメラなどの携帯機器の電力源として、広く使用されている。 ここではリチウムイオン電池の内容を、簡単に説明し、リチウムイオン電池の関連ICを紹介する。
リチウムイオン電池は、メモリー効果がなく、電圧が3.6Vと高く、他の二次電池に比べ単位体積および重量当たりのエネルギー密度が高い。しかし、半面、過充電・過放電・過電流に対し弱い面を併せ持つ。そのため、事故が起きないように電池パック内に保護回路を用い、弱点をカバーすることで携帯機器の電源として最適な二次電池を構成している。各種二次電池の特性を図1に示す。
リチウムイオン電池に関連する機器を図2に示す。 リチウムイオン電池関連機器には、電池パックの保護回路はもとより、携帯機器本体や充電器には充電回路、また、ACアダプターには、SW電源回路などがあり、これらにはそれぞれ制御用ICが用いられている。
電池パックの構成例を図3に示す。ミツミ電機では、携帯電話などに用いられる1―2直の保護用ICからノートPCなどに用いられる3―4直の保護用ICをラインアップに揃えている。ノートPCなどでは、電気的保護回路として充放電を制御するパワーFETをオン/オフする一次保護回路の他に、温度ヒューズなどを切るための二次保護回路が用いられる。 1直の保護回路例を図4に、3直の保護回路例を図5に示す。3、4直用のICは、高い電圧を扱うため、弊社中耐圧プロセス(24V)を用いている。
充電器の構成例を図6に示す。充電器は、電池の能力を最大限引き出すために電池にダメージをかけず最大電池容量まで充電する必要がある。充電用ICとしては、定電圧・定電流をマイコンなどの信号により制御するICから、電池電圧の監視・ACアダプター電圧の監視を含め、充電器および電池の安全性を確保する機能を内蔵したIC(マイコンなどからの信号による制御が不要)をラインアップに揃えている。
ACアダプターの回路例を図7に示す。充電器に接続されるACアダプターは、使用時も待機時も、効率よく電力を供給するコントロールが必要となる。従来は、トランスタイプのACアダプターが主流であったが、昨今は、SW電源タイプのACアダプターが主流となりつつある。 トランスタイプのACアダプターは、コンセントに接続しているだけ(待機時)で約1Wの電力を消費するが、SWタイプでは約500mW以下に抑えられる。また、アダプターの体積や重量もトランスタイプの1/2以下にすることが可能である。 ACアダプターは、充電が必要ない状態でもコンセントに接続されっぱなしで使用されている場合が多く、無駄な電力を消費している。 弊社では、従来からSWタイプの制御用ICを開発しているが、さらに、待機時の消費電力を約5mWに抑える制御ICを開発した。今後のACアダプターは、待機時消費電力が5mW―20mWの制御が主流になると考えている。 その他にも、コイン型二次電池として、電流容量および電池電圧が高いリチウムイオンコイン電池がDRAMのバックアップ用や、超小型携帯機器の電源用途として使用され始めている。これらの充放電制御用としてのICも開発しラインアップとして揃えている。応用回路例を図8に示す。このように弊社では、リチウムイオン二次電池に関わる制御用ICのラインアップをいろいろと揃えており、ユーザーのニーズに合う製品を提供できるものと考えている。 各種機器に使用されるICの一覧表を図9に示す。今後もさらに携帯機器の高機能化が進んでいき、電池の容量アップも行われていくことが予想される。また、その他にも環境に優しい製品への社会的取り組みの中からも、使い捨ての一次電池ではなく、充電可能で長持ちするリチウムイオン二次電池の需要はますます増加することと思われる。 弊社としてもそれらに対応できるように、さらに選択の幅が広がる製品を開発し携帯機器市場の発展に貢献したいと考えている。
・半導体技報 vol.10 ミツミ電機(株) ・電波新聞2001年4月26日ハイテクノロジー 電波新聞社 ・電子技術 1999年11月号 日刊工業新聞社 ・リチウムイオン2次電池マイナス材料と応用 日刊工業新聞社