タッチパネル(TouchPanel;以下TP)は、GUI(GraphicalUserInterface)の入力装置のひとつである。映像表示装置であるLCD(LiquidCrystalDisplay)、CRT(Cathode-RayTube)などの前面に取り付けられて使用されることが多いため、透明タイプが圧倒的に多い製品である。近年、LCD、CRTなどの性能向上と低価格化による普及で、表示画面を指や付属のペンなどで直接触れて操作でき、キーボード操作に不慣れな人でも簡単に入力操作ができるという使い易さから、TPも広く普及してきたものと考えられる。おもな用途としては、カーナビゲーション、券売機、電子手帳、FA機器、ATM、コピー機、PDA、POSなど多岐にわたり多様化の一途である。 TPにはその入力方式の違いで、抵抗膜感圧方式・光学方式・超音波方式・静電容量方式などの種類があり、構造の違い、用途の違いなど、その特徴により、それぞれの分野で発展を遂げてきた。ここでは、その中の抵抗膜感圧方式TPに関し、その特徴と技術動向について紹介する。 抵抗膜感圧方式TPは、上部電極板として通常は基材にPET(PolyethyleneTerephthalate)フィルム(またはガラス)を用い、下部電極板にガラス(またはフィルム、プラスチック板)を使用し、上部、下部電極板の抵抗体にはほとんどの場合、ITO(IndiumTinOxide)薄膜を膜付けする。中をくりぬいた額縁形状の貼り合わせ材で上部、下部電極板を張り合わせ、コネクターテールを接続した構造となっている。上部電極を指や付属のペンで押下して下部電極と接触させ導通することで信号を出す方式である(図1参照)。 抵抗体の処理方法と接続方法の違いにより、位置データの検出方式には、デジタル型(直交マトリクス型)とアナログ型がある。生産数量的にはアナログ型が圧倒的に多い。これは、手書き入力(連続入力)ができ、回路構成が簡略である点が好まれているためである。 SMKでは、デジタル型として、NRXシリーズTPを、アナログ型としては、NTX、NLX、NGXの3種類のシリーズTPを製品化し、市場に投入している(図2、3参照)。 従来のTPに関する顧客要求特性は、電気特性として、まっすぐ線が引けるかという直線性、信号を出す端子間の絶縁性、書き味を決定する入力感度の応答性などが求められ、機械的特性として、筆記回数および打点回数などの操作寿命の耐久性、温度、湿度に関する耐環境性、操作感を決める操作荷重などが主なものであった。最近ではIT技術の進歩に伴ってLCDの高精細化およびカラーLCDの実用化により、高透過率および低反射率、LCDの色再現性を損なうことの少ない無彩色化など、光学特性向上の要求が強くなってきている。 光の透過、反射の原理から、反射率を下げれば、透過率が上がることは立証されている。また、光の反射率は接合する両物質の屈折率の差が大きいほど大きくなることは判明している。上部、下部電極板を張り合わせて作るTPの構造上、透過率を上げ、反射率を下げるには、接合する両物質の屈折率の差が大きい、上下ITO薄膜と空気層間の反射屈折をなくすような処理をすれば良いことは容易に想定される。 NLXシリーズTPは、上下ITO薄膜の間に、空気の代わりにITO薄膜に近い屈折率の液体を封入することで、空気層による内部反射を大幅に減らし、透過率を90%以上に向上させ、反射率を10%以下に低減した製品である。液体を封入し密閉タイプを採用しているので、耐水性、耐熱性、耐塵埃性などが必要な悪環境下でも使用できる構造である。表面反射を抑える方法としては、光の波特性を利用して、反射光の位相を1/2λずらして光を干渉させ、波を打ち消すようなAR処理(AntiReflection:反射防止)がある。NLXシリーズTPの表面裏面に反射防止処理を施したARフィルムを張ることにより、5%以下の低反射率TPを商品化している(図4参照)。 近年、自動車の普及により、ナビゲーションを搭載した車が増加してきた。車の中は直射日光を受けるため、耐熱環境性能が厳しく求められると同時に、TPの表面反射や映り込みによる視認性低下を防止する性能も強く求められている。表面反射を抑える方法としては、AR処理があり、映り込みを防ぐ方法としては、操作面にマット剤微粒子を混合したコート剤を塗布し、表面に凸凹を付けることで反射光を乱反射させるノングレア処理がある。 ミナトエレクトロニクスは、各種のタッチパネルおよびタッチパネル応用製品を扱っている。 最近の製品で注目されるのはプラズマディスプレイ対応PC内蔵タッチパネル「Plasma Touch」。 このタッチパネルは42インチのプラズマディスプレイ前面にタッチパネルを配置し、背面にPC(パソコン)を内蔵したもの。 タッチパネルは光センサー方式で指先のタッチ感が良く、画面にそっと触れるだけで良い。 また、薄型・コンパクト設計でありながら、倍精度、単精度・高精度いずれの指定時でも優れた高分解能を実現している。 PCを内蔵しているため多彩な情報が処理でき、S-VideoやDVDをはじめとする各種デジタル周辺機器が使用できる。 用途としては、社内会議や展示会などのプレゼンテーション、各種の公共施設や商業施設でのインフォメーションボードとして、プロジェクターやホワイトボードに代わる新しいコミュニケーションツールとして使用できる。また、図書館や美術館などの所蔵物の案内ボードにも適している。 音質に優れたスピーカーシステム3タイプを用意するなどキャスター付きフロアスタンド、壁面設置が可能な垂直取り付けタイプなど場所や用途で選べるオプションを用意している。 また、受付業務の合理化を実現するタッチパネル受付案内システムの「TouchNavi」も好評だ。このTouch Naviは、画面に触れるだけの簡単操作で客をナビゲートでき、コスト軽減ができる企業の先進性をアピールできる。 音声による受付応対、指示通りに画面に触れるだけの簡単操作、電話をしながら相手先への案内図を表示、プリンターにより、プリントアウトもできる。 ディスプレイ画面はXGA(1024×768ドット)表示で写真並みの画質となっている。 導入時のデータ入力やデータ変更もパソコンを使って付属のプログラムで簡単に編集できる。 【問い合わせ先:(045)592-5546】 しかし、現在最も多く使用されているPETフィルム(F)/ガラス(G)TPは、PETフィルムが高温、高湿の環境下では熱による膨張・収縮が発生し、誤動作、入力歪みなどの入力不良が発生する可能性が高く、車の中での使用には適さない。 NGXシリーズTPは、上部、下部電極板にガラスを使用し、TPの操作面側には円偏光板、裏面側には位相差板(1/4λ板)を設けた3層構造を採用することにより、TP表面および内部の反射を円偏光板で吸収して、低反射(反射率6.5%以下)を実現すると同時に、事故などの際ガラスの割れによる飛散をも防止した製品である。上部電極板にガラスを使用するため、操作荷重はF/G・TPと比較すれば2倍ほど重くなり、ペン入力を求められる場合には操作荷重などに注意すべきである(図5参照)。
TPは構造上、操作面側を指やペンで触れて操作するため、指紋や傷などが操作面に付くことから、LCDの表示が見えにくくなるという問題があり、また電極板の一方、または両方に必ずガラスを使用するため、ガラスが割れるというTP固有の問題がある。最近はこの問題をも克服しようとする動きが出てきている。 操作面に傷を付きにくくするには、操作面表面のハードコート剤を厚く塗布すれば、表面は硬くなり傷が付きにくくなるが、塗布ムラによる表面硬度のバラツキの問題があった。 最近はこの問題も塗布方法の改善などにより、解決する方向で進んでおり、傷の付き具合は以前のものに比べ格段の進展が見られる。そこで、表面硬度の評価を実施し、表面硬度改善品として製品化している。 また、指紋などの表面の汚れは、表面に防汚処理を施すことにより、汚れを付きにくくし、汚れを簡単に除去できて再現性を高めることで軽減できる。 この問題を解決するには、光触媒などの外部エネルギーにより、汚れを分解するような物質を表面に塗布することが最善と思われ、材料メーカーなどとの共同開発を進め、汚れ軽減TPの検討に取り組んでいる。 ガラスの割れの問題に関しては、電極板にガラスを使用せず、フィルムや透明なアクリル板、ポリカーボネート板などを使用したプラスチックTPを製品化している。しかし、大きなサイズのTPで製品化する場合、プラスチックの剛体性(たわみ)、ソリの問題が残されており樹脂素材の改善を進めている。 PDAに代表されるポケットサイズ携帯の製品に使用されるTPは、限られたスペースの中でより広い操作エリアを確保し、重量を軽くするために、粘着強度の問題などがあるが、粘着剤の狭額縁化とプラスチック化商品を拡販する。 G/G・TPでは、ペンの書き味を決定する入力感度の応答性を改善するため、操作荷重を低減し、直線性を向上させた製品レパートリーを増やしている。 今後は、今までに紹介してきたNRX、NTX、NLX、NGXシリーズTPをベースに、光学特性を改善した電極板を使用し、各処理、製造方法(レーザー光を用いたドライ・エッチングなど、環境影響を考慮した工程の合理化)などを駆使することで、環境に優しく安価かつ高性能なTPの開発を通して、顧客満足度の高い商品を市場に提供していきたい。