SDメモリーカード、メモリースティック用コネクターの技術

高野恭成:アルプス電気(株)機構部品事業部第2技術部


小型化実現のSDメモリーカード用コネクター
高信頼性のカードロック機構



◆昨今の市場動向
 デジタルネットワーク時代のメディアとして小型メモリーカードはデジタルカメラ、デジタルムービーなどの市場に牽引され急速に拡大してきた。小型メモリーカードの代表的なものとしては、スマートメディア、コンパクトフラッシュ、メモリースティック、マルチメディアカードなどがあるが、音楽などの著作権保護機能を持つマジックゲートメモリースティックやSDメモリーカードを搭載した製品の動きも活発化している。



◆小型メモリーカード用コネクター開発状況
 アルプス電気は固有技術を生かし、2000年より小型メモリーカード用コネクターの開発に着手し、昨年、量産を開始した。  現在、SDメモリーカード用およびメモリースティック用コネクターのバラエティー拡充を進めている。以下に当社製品の特徴を述べる。



◇SDメモリーカード用コネクター
【SCDAシリーズ】
 本製品はバラエティーとして、基板面の表側に実装するスタンダードタイプと基板面の裏側に実装するリバースタイプがあり、ともに業界トップレベルの小型化を実現している。さらに、スタンダードタイプでは、コネクター下部に部品実装を可能としたスタンドオフタイプの品種拡充を行った(写真1、2)。
(1)操作性に優れたプッシュプッシュタイプのイジェクト機構
 カードを押し込むことで挿入/排出するプッシュプッシュタイプのイジェクト機構を採用。コネクター側面に配置したハートカム機構により、好脱着性を実現し、優れた操作性を誇る。
(2)“くの字”形状板バネの採用で高信頼性を誇るカードロック機構
 コネクター側面に“くの字”形状の板バネを配置した。これにより、挿入時にはカードを確実にロックし、また、排出時にはカードの飛び出しを防止するハーフロック機構を実現している。さらに、カードをロックした状態でユーザーが誤ってカードを引き抜いた場合には、この板バネが逃げることで、カードやコネクターを破損しないユーザーフレンドリーな構造となっている(図1)。
(3)スタンドオフ高さは多彩なバラエティーを用意
 セットの軽薄短小化のためには、高密度実装が重要であるが、コネクターには占有面積の極小化、およびコネクター下側スペースの確保が求められる。
 当社は、コネクター下側に他の部品を搭載できるスタンドオフへのニーズに応え、バラエティーを拡充した。当製品はスタンダードタイプでスタンドオフ高さ0mm、1.2mm、1.8mm、2.2mmのバラエティーを持ち、使用する部品の高さに応じた選択が可能である。

  写真1
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  写真2
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  図1
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SDメモリーカード用コネクターSCDAシリーズスタンダードタイプ
SCDAシリーズリバースタイプ
カード飛び出し防止用のハーフロック機構


◇メモリースティック用コネクター
 当社製品には、メディア排出機構として、レバーイジェクトタイプ(SCEAシリーズ)とプッシュプッシュタイプ(SCECシリーズ)の2種類がある。
【SCEAシリーズ】
(1)業界最小サイズにより携帯機器の小型化に貢献
 本製品は、メディアを含めた全長が50.8mmと業界最小サイズを実現した。メディアの長さ50mmに対して、奥行きをプラス0.8mmでおさめ、端子ハンダ付け部を外形の内側に配置したことと、メディアのイジェクト操作機構を極小化したことなどによって占有面積を小さくした。これにより、特に携帯機器の小型化に貢献できる(写真3)。

写真3
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メモリースティック用コネクターSCEAシリーズ
【SCECシリーズ】
 本製品では、据え置き機器への搭載を考慮した設計を行い、操作性に優れた長いメディア排出距離と、“こじり操作”などに対して耐久性を向上させたことなどが特徴である。
(1)10mmのメディア排出距離で操作性を向上
 メディア排出距離は、ユーザーの操作性を左右する重要なファクターである。既存製品の排出距離5―6mmに対し、本製品では10mmという長い排出距離を達成し、操作性の向上を図った。また、一般的に排出機構部には圧縮コイルばねを用いるが、動作ストロークが長くなると、ばねが蛇行し、メディア挿入時の操作感触が悪くなる場合がある。本製品ではスムーズな動作を追求し、引っ張りコイルばねを採用した。この場合、ばね両端のフック形状が製品の小型化に対し不利な条件となるが、機構部の徹底したシンプル化を図り、独自の構成を考案し、機能と信頼性を損なうことなく省スペース性と好操作感触を両立させている(特許出願中)。
(2)堅牢構造による耐久性の向上
 カード用のコネクターは挿抜を繰り返すため、ハンダ付け強度が重要である。本製品は、外装を一体の板金部材で構成し、4カ所にハンダ固定部を設けたことにより堅牢構造となっている。また、上面には開口部がないため、長期間の使用でも上面から塵の侵入がなく、耐ノイズ性に有利な構造である(写真4)。

写真4
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メモリースティック用コネクターSCECシリーズ


◆今後の市場動向と当社の課題
 昨今、さまざまな機能とフラッシュメモリーを複合化した複合カードが登場してきた。例えば、ブルートゥースカードはフラッシュメモリーと送受信モジュールを複合化したカードであり、そのほかにもデジタルカメラ、指紋照合システム、ボイスレコーダーなど、さまざまな複合カードが検討されており、さらなる発展が期待される。
 こうした小型メモリーカードの多様化に伴い、コネクターは、セットの各種アプリケーションに対応した使い易さ、安全性、信頼性の向上が要求される。セットの小型化による、さらなる軽薄短小化に加え、これらのニーズに最適な製品バラエティーを揃える必要があり、当社では今後も継続して開発を進めていく。
※注記
・スマートメディアは、株式会社東芝の商標です。
・コンパクトフラッシュはアメリカSunDiskの商標です。
・メモリースティックおよびマジックゲート メモリースティックはソニー株式会社の商標です。
・マルチメディアカードはドイツInfineonTechnologiesAGの商標です。
・ブルートゥースは、スウェーデンTelefonaktiebolaget LM Ericsson
 の商標です。



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