◆はじめに
携帯電話をはじめとする各種モバイル機器の小型軽量化、高機能化が加速推進される中、電子部品の実装密度も高まり、チップ抵抗器も従来主流の1005タイプから0603タイプ(写真)を搭載するセットが急速に拡大しつつある。
0603タイプなどの微小チップ部品は、高密度実装がその最大のメリットであるが、実装品質の安定性がより重要である。
顧客に安定した実装品質を提供すべく、部品側では技術課題の対策を継続検討し、需要拡大の対応を図っている。
◆微小チップ抵抗器の課題
厚膜タイプチップ抵抗器の構造を図1に示す。従来の工法としては分割溝を有するセラミック基板に厚膜印刷技術で電極、抵抗、保護膜等の材料を形成し、基板を分割後、端面電極を形成し、最終的に電極部にメッキを施して検査後テーピング、というのが一般的な工程の流れである(図2マイナスa)。
1005タイプ以上のものはこの工法により市場でも実用上十分安定な実装品質を確保してきている。
ところが、0603タイプになると従来の分割溝をブレークする工法では(1)製品としての寸法形状(2)テーピング状態のチップとポケットのクリアランスバラツキを抑制できず、実装品質を1005タイプと同等にまで安定させることが困難であった。
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0603チップ抵抗器(ERJ1G)・構造図 |
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0603チップ抵抗器・製造工程 |
◆実装品質向上の取り組み
前述の課題を克服するために、松下電子部品では基板分割工法開発を中心に取り組み、実装品質を安定させることができたので紹介する。
チップ部品の実装品質を左右する重要な要因としてキャリアテープに挿入された状態でのポケットとのクリアランスがあげられる。クリアランスは一般的に大きすぎると立ち吸着発生や吸着位置精度の点で不利になり、また小さすぎると未吸着が起こりやすくなる。最適クリアランスを維持するためには、部品、ポケット双方の寸法を高精度に保つことが必要であり、部品の形状寸法精度向上に取り組んだ。
図2に従来技術による工程フロー(a)と実装品質向上取り組み後の工程フロー(b)を比較して示す。網掛け部が新たな内容を盛り込んだ工程である。
ポイントは次の3つである。
(1)ダイシング、レーザースクライブによる分割工法
(2)薄膜工法による電極形成
(3)プレスポケットタイプキャリアテープの採用
以下、それぞれのポイントについて詳述する。
(1)ダイシング、レーザースクライブによる分割工法
チップ部品形状はメッキ前の素体形状で決まるため、斜め割れなどの要因を有する従来の分割溝ブレーク工法に比べ、ダイシング、レーザースクライブにより極めて精度よく基板を加工できる。
(2)薄膜工法による電極形成
薄膜工法によりメッキ下地を形成することで、端面電極を含めた形状、寸法の精度向上が可能である。参考までに断面形状を図3に示す。製品外形寸法バラツキは従来工法比約2分の1を達成している。 (3)プレスポケットタイプキャリアテープの採用
従来の打ち抜きテープ(裏面にホットメルトタイプのボトムテープを張り付けることによりポケット形成)ではシール状態によってはボトムテープにチップが固着し、最悪の場合、未吸着につながることがある。
一方、プレスポケットタイプはキャリア台紙をプレスすることでポケットを加工形成し、ボトムテープが不要なため、未吸着不良の防止に有効である。今後微小チップのキャリアテープはプレスポケットタイプが主流になっていくと考えられる(図4)。
これらの取り組みにより弊社実装テストにおいて、0603タイプチップ抵抗器として実装率99.99%以上を達成している。
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0603チップ抵抗器・断面形状 |
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キャリアテープの構造 |
◆多連化による高密度実装対応
一方、高密度実装化の取り組みにおいて、上述したような単品チップの微小化と合わせ、多連化、ネットワーク化といった動きも活発である。
これら、多連/ネットワーク部品では複数の素子をワンチップに集約しているため、単品チップと比較し、素子間の間隔を小さくできるだけでなく、さらに実装コスト低減といったメリットがある。
現在では、微小多連チップ抵抗器として、1005タイプをベースとした2連チップ(EXB24V)、4連チップ(EXB28V)、8連チップ(EXB2HV)(図5)が主流となっているが、この分野においてもさらなる小型化要求が強まり、0603タイプをベースとした多連/ネットワーク部品が具現化されている。
松下電子部品では図6に示す0603タイプの2連チップ(EXB14V、0.8mm×0.6mmの中に2抵抗素子内蔵)を多連チップ抵抗器シリーズに加えるとともに、チップアッテネーター(EXB24AT)などの微小ネットワーク部品も品揃えしている。
π形アッテネーターは携帯電話などの高周波回路に使用される部品であるが、図7に示すように、1.0mm×1.0mmの中に3素子の抵抗を内蔵しており、0603単品チップ抵抗器を用いて回路構成した時とほぼ同等の占有面積となるため、マウント工数などを含めたトータル実装コストでは大きなメリットがある。
図8に以上紹介した微小チップ部品の実装面積比較表を示す。これら多連/ネットワーク部品が高密度実装化に大きく貢献していると言える。
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1005タイプ多連チップ抵抗器 |
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0603タイプ2連チップ抵抗器 |
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1010タイプ・チップアッテネータ−(EXB24AT) |
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実装面積の比較 |
◆今後の展望
高密度実装化において、(1)単品チップの極小化(2)多連/ネットワーク化という2つの観点で現在の技術動向を紹介した。
今後は実装技術の進展とともにさらなる高密度化要求が高まってくると思われるが、部品メーカー側としては、微細加工技術を応用展開することで、より極小チップ部品(0402タイプ)や0603タイプの4連化(0.3mmピッチ)などの開発検討が加速していくものと思われる。
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