2000年夏頃に初めて、BluetoothT M 製品が世の中に出てきてから、約1年半が経過しようとしている。その間、基本仕様の大きな改訂(Ver1.0b→Ver1.1)があり、製品の互換性などに多少の混乱があったが、BluetoothT M のロゴ認証を受けたものは現時点で400モデルを超えている。展示会やマスコミなどでの一時の過熱振りは過ぎ去ったかに見えるが、各企業のBluetoothT M の製品化意欲はいぜん、衰えておらず、毎月30―40モデルが新たにロゴ認証を受けている。 その中で、エンドユーザーが直接扱える最終製品は全体のおよそ1/3に達しており、それらの製品モデルの約半数程度に当社のBluetoothT M モジュールが採用されている。 BluetoothT M の応用製品や市場は図1に見られるように、PC、PDA、周辺機器、携帯電話、デジタル家電、車載機器など、幅広い用途が見込まれ、PCMCIAカードやAP(アクセスポイント)が製品としてすでに出荷され、さらに、今年になって、BluetoothT M モジュール内蔵のノートPC、携帯電話、各種アダプター、TA(ターミナルアダプター)、デジタルビデオカメラなどが続々と発表・出荷されてきている。 今後、期待されているのが、第3世代の携帯電話やデジタル家電、ハンズフリーやカーナビなどの車載用機器である。このように、大きな期待が持たれているBluetoothT M 製品の市場規模は図2のように予測されている。 これはアルプス電気が独自に評価した予測であり、調査会社などの予測より、残念ながら1年程度後ろにシフトしたものになっているが、全体のポテンシャルは変わらない。携帯電話とノートPCが市場全体を引っ張り、2004年には2億台近くに達するものと予測される。 これらの市場の伸びを支えるものとして、BluetoothT M の特徴である利用シーンを想定して相互接続性を重視した規格であるProfileがあげられる。現在Serial Port Profileなど13Profileが規定されているが、さらにAV Profileなど9Profileが近々、公開予定であり、それに合わせて製品化も活発に行われるものと期待されている。
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Bluetooth応用製品と市場 |
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Bluetooth応用製品の市場規模予測 |
◆技術トレンド
BluetoothT M は技術的に見ると、ハード的には、無線(以下、RF)回路部、および制御(ベースバンド)回路部、統合したモジュール、そしてそのモジュールを使った応用製品/機器などに区分される。また、ソフト的にはベースバンド処理部、各種プロトコルを処理するミドルウエア、その上に位置するProfileやユーザーI/Fを処理するアプリケーションソフトで構成されている(図3参照)。 ここでは当社が製品として手掛けているモジュールという観点からBluetoothT M の技術革新がどのように推移してきたか、あるいは今後どのように推移していくかを世代別に解説する。 (1)第0世代:(〜2000年)ハードウエアソリューション この世代では、モジュールと呼ぶべき概念はなく、PCMCIAカードなどの製品において、それらの機能は半導体Chipや部品を使用して構成したハードウエアという形態で提供された。Digianswer社が代表的なベンダーであり、初期のBluetoothT M 製品の普及に貢献した。使い方としてもノートパソコンにBluetoothT M 対応PCMCIAカードを挿して、BluetoothTM対応モデムとの通信を行うという、もっぱら、インターネットブリッジ的な使い方が主流であった。 (2)第1世代:(〜2002年)汎用フルモジュール ようやく2Chipあるいは3Chip構成のBluetoothT M 専用の半導体Chipがいくつかの先端的ベンチャーを中心とするメーカーから出され、それを使った汎用のフルモジュールが当社を先頭にセットメーカーに提供が開始された。応用製品に応じて大きく2種類に分かれ、一つはノートPCなどに内蔵されるUSB I/Fのタイプと、もう一つは携帯電話やコンピューター周辺機器に内蔵されたり、アダプターやAPなどに使われるUART I/Fタイプである。 BluetoothT M モジュールのソフトウエアI/Fの切口としては、USB、UARTの両タイプともHCI(Host Controller Interface)である。HCIより上のミドルウエアやアプリケーションはホスト側でポーティングしなければならない。したがって、BluetoothT M モジュールを使いこなすホスト側のミドルウエアの負担は大きく、立ち上がり時期でもあり、まだ高価でサイズ的にも大きいため、一部の製品しか搭載できていないのが実情である。しかしながら、前の世代に比べて、搭載製品の種類も多くなり、インターネットブリッジの他、ファイル転送や印刷など、次第に応用が広がりつつある。 (3)第2世代:(〜2004年)1chip、On chip Stack、RF/Fullモジュール(バラエティー化) BluetoothT M の基本仕様もVer1.1が確定し、当面仕様の更新は行わないとのSIGからのコメントもあり、半導体メーカーやモジュールメーカー、あるいは機器メーカーが安心してBluetoothT M 製品を出せる環境が整ってきた。 当社が掴んでいるだけでも、20社以上の半導体Chipメーカーがこの市場に参入してきており、当初、複数Chip構成であったものが、2あるいは1Chip化へと進展していくものと予想される。また、ソフトウエアI/FとしてもHCI I/Fだけでなく、いくつかのプロトコルソフトを搭載したいわゆる、On Chip Stackモジュールも一部出てくると思われる。また、ベースバンドを搭載したCPUも携帯電話やPDA用を中心に開発が進み、そのため、RFだけのモジュールの製品化も活発になるだろう。新しいProfileも次々にリリースされ、製品の種類も豊富になり、そのため、製品の互換性の度合いも進むものと期待される。 (4)第3世代:(〜2006年)低消費電力、高機能フルモジュール、Radio2 より一層の小型や消費電力の低下が進み、かつ機能的にもミドルウエアやProfileなどを組み込んだ高機能フルモジュールやRFモジュールの出現が予想される。幅広い分野、特に携帯機器やデジタル家電、車載機器などに応用が進み、それらの中核となる技術がインターネットであり、BluetoothT M デバイスアドレスとマッチングすることによって、各機器にIPアドレスを持つインターネット端末が数多く出現するだろう。生産と需要がピークに達する、いわゆる、成熟期となる。まだ現時点では仕様が明確ではないが、転送レイトが速いRadio2(2Mbps、10Mbps)の規格化も進むものと予想される。
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BluetoothモジュールUGTシリーズ |
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Bluetooth Architecture |
◆当社製品の開発経緯
当社は過去、欧州のコードレス電話の規格であるDECTやPHS並びに携帯電話のCDMA方式の送受信モジュールなどのさまざまな通信用モジュールを世に送り出してきた。これらの出荷実績や技術蓄積を背景にして、他社に先駆け、BluetoothT M モジュール市場に本格参入を果たした。現状までの変遷を関連事項とともに簡単に述べる。 1998年5月:BluetoothT M SIGが発足 1998年9月:BluetoothT M SIGに加盟 1999年7月:Version 1.0a: 公開 1999年12月:Version 1.0b:公開 2000年10月:Version 1.0bプラスCE(CriticalErrata):会員企業に公開。 2000年11月:汎用のBluetoothT M ジュールとしては世界初のロゴ認証取得 12月フルモジュールの量産開始 2001年3月:Version1.1:公開 2001年5月:Version1.1の認証取得
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◆製品の特徴、優位点
当社のBluetoothT M モジュール(UGTシリーズ)は、最初のモデルが量産を開始してからほぼ1年近くになるが、現在ではモデル数も増え、ノートPCや周辺機器などに高い採用実績を誇っている。 現行製品(UGTシリーズ)における現時点での優位点と特徴は ・Class1〜3モジュールのフルサポート 高出力タイプのClass1モジュールはClass2、3のモジュールに比べて、C/N、リファレンススプリアス、変調特性の向上や高受信感度特性の実現など技術的難度が高く、当社の高周波回路技術や高密度実装技術を結集したものである。 Class1のモジュールはPC用を中心に販売展開(ノートPC内蔵タイプとしてはほとんどのPCメーカーで採用)している。同一形状でI/F互換のClass2、3のモジュールも品揃えしており、用途に応じた使い分けが可能となっている。 ・UART及びUSB I/Fのサポート セットのI/F規格に応じて、ハード的にはUARTとUSBのI/Fを用意し、ソフト的にはHCI I/F、並びに一部上位スタックまで含めたOn chip Stackモジュールも用意している。音声用のI/Fとして、PCMI/Fも同時サポートしており、セット設計に自由度の高い汎用性もあわせ持っている。 ・2種類の取り付け形状を用意 オプション対応が可能なBoadマイナスtoマイナスBoadコネクタータイプのモジュールと、セット基板への表面実装が可能なタイプの2種類のモジュールを用意しており、コネクタータイプは取り付け、取り外しが容易で、セットへのBluetoothT M のオプション対応に適しており、一方、表面実装タイプは外形形状がコネクタータイプに比べ小さく、かつコネクターが不要となっている。参考までに、現行製品の概略仕様と製品バラエティーを表1、2に記載する。 各社とも第2世代の開発に注力、発表が相次いでいるが、当社も現行製品に比べて、サイズ的にも、性能的にも、消費電力的にもかなり革新的な仕様の次世代のBluetoothT M モジュールの開発を進めている。
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UGTシリーズ概略仕様 |
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UGTシリーズモジュールサイズ一覧 |
◆今後の課題
汎用フルモジュールとしては、当社の第1世代製品はそれなりに市場の一画を構成するに至ったが、今後のより一層のBluetoothT M の普及のためには市場や機器にマッチした製品開発が不可欠である。 モジュールの先行メーカーとして、あらゆる携帯機器に搭載可能なように超小型、低消費電力、低価格のBluetoothT M モジュールの提供を継続して行っていきたい。 そのための実現手段として、 ^当社の高周波回路技術を生かした、より一層の高密度実装技術の進展を図る _顧客のセットに応じたソフトウェアのサポートの充実を図る `ロゴ認証や各国電波法などの各種規制に対する認証取得のためのサポートの充実を図る―ことへの注力を重視している。 図1のようにBluetoothT M の応用範囲は広く、市場規模も携帯電話に比肩し得るポテンシャルを持っている。無線通信がより身近になるためには、IEEE802.11aあるいはbなどの無線ソリューションとの複合製品の提供も不可欠となるだろう。 しかしながら、その製品化はまだ、緒についたばかりで、とても世間に認知されているとは言いがたい。BluetoothT M モジュールを提供することにより、普及貢献の一助としたい。
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