ホスト落下センサーと互換性を持ちシングルプラッタで業界初の60ギガバイトを実現した1.8インチで厚さ5ミリのハードディスクドライブ

　ＨＤＤ（ハードディスクドライブ）世界最大手の米シーゲイト・テクノロジーは、先月初め米ラスベガスで開催した「ＣＥＳ」で、家庭用娯楽システムの基幹部品の一つして、ＨＤＤ新製品を披露した。

１．８インチで６０ＧＢ実施

　 目玉となったのは、１.８インチの「Ｌｙｒｉｏｎ（リリオン）」。厚さわずか５ミリ。シングルプラッタで業界初の６０ギガバイトを実現。これで標準精細（ＳＤ）映像なら２０時間、高精彩（ＨＤ）映像は１２時間分を記録できる。

　 同社民生電子機器グローバル・マーケティング担当マネジャー、デビッド・バークス氏によると、リリオンは、携帯機器の自由落下センサーと互換性があり、ホストセンサーが過度の加重を検知すると、読み書きヘッドをプラッタの表面から遠避けるなど、ドライブを保護するためのコマンドを実行する。

運動時も再生ＯＫ

　 クラス最高の電力管理技術を搭載し、温度条件にも柔軟に対応する。さらに独自の「ＲｕｎＯｎテクノロジー」により、移動と振動を感知、計算しディスク性能を自動調節する。このため運動時でも音とびのない音楽、美しい映像を再生できるという。

　 ＲｕｎＯｎテクノロジーは、デジタル家電向け１インチドライブ「ＳＴ１」にも採用。最終製品では日本市場限定販売の、ケンウッドのＨＤＤ搭載オーディオプレヤー「ＨＤ１０ＧＢ７ＭｅｄｉａＫｅｇ」にＲｕｎＯｎテクノロジーを採用したＳＴ１が搭載されている。

　 このほか、２.５インチの企業システム向けシリアルアタッチドＳＣＳＩ（ＳＡＳ）ドライブ「Ｓａｖｖｉｏ」ファミリーなども紹介。１０.２Ｋ−ｒｐｍと１５Ｋ−ｒｐｍ版が今後、市場投入される予定で、あらゆる規模のデータセンターの要件に対応するとしている。

　 ０６年に買収したマックストアのブランドを冠した「ＯｎｅＴｏｕｃｈ�Vミニ」は、デジタルコンテンツ保護とファイル同期用ソフトウエアを組み込んだ、初のモバイル機器用ストレージソリューション。米アップルのＯＳと互換性がある。紛失や盗難に備え、ドライブに格納されたデータを保護する「ドライブロック」機能が大きな特徴。

　 シーゲイトでは今後も、重要なファイルや写真データ保護機能、バックアップ機能を持つ製品にマックストアのブランドを継続使用する考えだ。

モバイルに採用加速

　 バークス氏は「ストレージ機器を使用するすべての民生用電子製品が当社の顧客となり得る。特に携帯端末分野では、かなりの自信を持っている」と語る。携帯機器は常に落下の危険性があり、これがＨＤＤにとっては大きな障害となっていた。だがリリオンの自由落下保護技術によって、モバイル製品へのディスクドライブ採用が加速すると同社は期待している。

　 シーゲイトは業界で唯一、フルディスク暗号化機能を搭載するノートＰＣ向けドライブ提供企業でもある。同技術はユーザーがパスワードを入力、または生体認証を行わない限り、ドライブを起動できないようにするもの。この高セキュリティ機能と落下センサーが、今後のノートＰＣの極めて重要な要素になると同社は予想している。

　 「現在、当社のすべてのＨＤＤ製品が垂直磁気記録方式を採用している。当社は完全に垂直統合型企業でもある。先進技術と、世界トップクラスの製造技術が結合して、最高の製品を提供する」とバークス氏は力を込めた。（シーラ・トナー前特派員）