無線通信用部品・モジュール

小型・薄型・高機能、低消費電力化などに重点

 インターネットに接続するデバイス市場は現在100億個を超えていると言われている。無線通信につながるデバイスの増加と無線通信技術の発展に伴う電子部品の需要増が市場を急速に押し上げ、20年には500億個に拡大すると予測されている。センサーの数は20年に1兆個にまで増えるとみる調査会社もある。

 家電をはじめ、産業機器、インフラ、さらには自動車、医療・ヘルスケア、環境・エネルギーなど今後の成長が見込める市場で採用が拡大。あらゆるモノやコトがデジタル化し、無線やインターネットでつながる世界が到来する。モバイルデータトラフィックは現在の400万TB/月が17年に1000万TB/月となり、18年には1600万TB/月に増えると言われ、さらに高速、高効率な無線システムが求められる。

 このため無線通信用部品、モジュールにおいては小型、薄型、高機能化、集積化、低消費電力化の開発が加速。多くのデバイスが無線につながる環境下では、つなぎたい相手と混線せずにつながる無線通信技術が不可欠となる。センサーと通信モジュールを組み合わせた新しい価値の提供も進む。

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サブギガ帯域無線通信LSI(ラピスセミコンダクタ)
 通信規格も欧州で規格化されたBluetooth、無線LAN規格のWi―Fi、ZigBee、Sub―GHz(特定小電力無線)、Wi―SUN、WiGig、EnOcean、RFID、ISA100Wirelessなどが、それぞれの特徴に応じ、コンシューマ向け、インダストリ向け、インフラ向けなど用途で棲み分けが進んでいる。

 Bluetoothは携帯電話や周辺機器の近距離接続用から導入が始まり、13年の低消費電力規格のBluetooth Low Energy(Smart)発表でウエアラブル機器やヘルスケア機器などの小型機器へ採用が広がっている。Wi―FiはBluetoothに比べ1桁から2桁通信速度が速く、通信距離も約100メートルと長い。PC、周辺機器、スマホ、タブレット端末、車載機器などで導入されている。WiGigは大容量コンテンツの高速、低遅延無線伝送用としての提案が進んでいる。Wi―SUNは日本では特定小電力と呼ばれる920MKz帯のSub―GHzを使用。低消費電力で障害物に強く、通信距離も約500メートルと長いことからスマートメーターやスマートコミュニティ構築での導入が始まっている。東京電力をはじめ、電力各社でスマートメーターとHEMSを結ぶBルートに採用された。スマートメーターの設置、HEMS機器の普及とあわせて日本で普及が進むと期待されている。

 Wi―SUNに注目

 4月からの電力小売り全面自由化も日本の無線通信、IoT普及の追い風になると期待されている。スマートメーター、電化製品、端末機器などがネットワークでつながり、どこからでも電力管理操作ができるホーム エリア ネットワーク(HAN)の構築が進む中で、Wi―SUNが注目されている。Wi―SUNデバイスの開発は加速し、初心者でも安心して導入できる充実したドキュメントやサポート体制も整ってきている。

 ロームグループのラピスセミコンダクタは、世界のスマートメーターの採用実績を踏まえてサブギガ帯域無線通信LSIを中国の無線規格で最高特性が出るよう周波数帯域と送信パワー、受信感度をカスタマイズしたサブギガ帯域無線通信LSIを開発、昨年12月から量産を開始した。スマートメーター、ホーム/ビルセキュリティ、火災報知器、ガス警報器、クラウド農業など、長距離無線通信と低消費電力が求められるアプリケーションに適した無線通信LSIとして中国のスマートメーター、センサーネットワーク、各種計測機器、その他無線通信が必要な産業機器全般に用途提案を行っている。

 車外通信用無線モジュール

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車載用LTEモジュール(アルプス電気)
 また、最先端運転支援システ(ADAS)や自動運転が話題の自動車においては車車間、路車間、歩者間などの通信が可能なV2Xなど車外通信用無線モジュール開発に取り組む部品メーカーが増加。IEEE802.11p(5.9GHz/760MHz)規格対応のV2Xモジュールが開発されるなど、高速、高信頼性、高セキュリティ性に向けての取り組みが急速に進んでいる。トヨタ自動車は昨年発売した新型クラウンや新型プリウスにV2X技術をオプション搭載し注目された。自動車のクラウド型の情報提供やeCall(車両緊急通報システム)に車載用LTEが採用され、今後の広がりが期待されている。

 衛星による測位システムにも最先端の無線通信技術が使われ、新しい市場開拓が進む。既存のGPS(全地球測位システム)にGNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム=全地球航法衛星システム)が加わり、将来の完全自動運転技術を支える技術として受信モジュールの開発が活発になっている。