マイコン進む高機能・高性能化

画像1
フルカラーLED照明制御用ローパワーマイコン
(ローム<ラピスセミコンダクタ>)

<人間の頭脳に相当するマイコン>

 マイコンとは、様々な電気製品の中で、その構成要素である電気的な回路や機械的な部分を制御する半導体チップである。人間の器官に例えれば、頭脳に相当する。プログラムを与えると、それに沿って様々な制御方法や演算を実現できるようになる。電気製品が発達し、その進化に応じてマイコンにも新機能が要求されるようになった結果、マイコンは高機能を持つ汎用コントローラという現在のような形に発展した。ソフトウエアプログラムという柔軟性の高い方法で制御され、様々な電気製品に使われるようになった。

 家電製品の中でマイコンが担っている仕事は、「表示」、「音」、「モーターやバルブ(弁)の制御」、「電気信号の測定と出力」、「通信」、「演算・判断機能」に大別される。中でも「演算・判断機能」は、マイコン本来の機能である。マイコンが担う仕事を機能させる際に、演算を実行するとともにその結果に基づく判断を下す役割を担い、機器の構成要素をつかさどる“司令塔”の働きをする。実際には、マイコンの中にあるCPUと呼ばれる中核回路がこの機能を担う。

<マイコンの高性能化>

 マイコンは、初めて登場した1971年から高速化、演算性能の強化、省電力化など、急速な進化を遂げてきた。マイコンの進化は、LSI製造技術の微細化によって支えられ、それと同時に、より低電圧で高速な動作が可能になった。全般的な処理の高速化ではなく、用途に応じて演算性能を強化したマイコンも増えた。さらに、命令数を減らし、基本的な命令に限定して内部回路を単純・小規模にすることで、クロックを大幅に高速化したRISCの登場で、一段と高速化が可能になった。

 最近のマイコンは、多かれ少なかれRISCの考え方を取り入れている。組込みシステムでは、高速処理だけでなく小型、省電力、低電圧動作、低コストが求められる。これらの要求にも内部回路を単純・小規模にできるRISCは最適である。最近の省電力化のトレンドは、システムを低消費電力モード(スリープ)に移行させて消費電力を低減し、通常モードは高速に動作させる方式。ピーク時の高性能と平均的な省電力を両立するには、低消費電力モードの活用が最適で、低消費電力モードから通常動作への復帰時間をいかに短縮するかも重要になっている。

<自動車用マイコン>

 世界の自動車販売台数は、年間4―5%の成長率で伸び続けると言われる。自動車は元来、マイコンはもちろんのこと、半導体そのものを必要としていなかったが、現在の自動車は、付加価値に加えて「走る」、「曲がる」、「止まる」という機能に、半導体が搭載されている。そのため、将来は自動車の台数増を上回る成長率である年間10%程度が期待されている。自動車用マイコンの市場規模(数量ベース)は、2018年には2010年の2倍に増えるとの予測がある。

 自動車に対する市場からの要求は大きく分けると「環境」、「安全」、「快適」、「つながること(コネクティビティ)」である。「環境」とは、地球温暖化ガスの排出量を減らすという要求を意味する。排気ガスの少ない自動車、言い換えると燃費の良い自動車を実現する。この実現にマイコンや、パワーデバイスなどの半導体が大きく貢献している。「安全」とは、交通事故を減らすとともに、事故が発生したときの人や物に対するダメージを軽くすることを意味する。事故原因の多くは、運転者の判断ミスや操作ミスなどによるものだ。

 人間によるミスを減らすためには、特に高い処理性能を持ったマイコンが要求される。「快適」とは、自動車に乗ることによって得られる体験を意味する。かつてはカーオーディオがその代表と言えた。住宅地では出せないような大きな音量を、自動車の車内で楽しんでいた。現在では「クルマに乗った方が快適になる」環境を用意しつつある。「つながること(コネクティビティ)」は最近になって出てきた要求だ。スマホと情報の共有・操作の連携はもとより、道路交通情報のリアルタイム取得やカーナビゲーションの高知能化など、周囲の自動車や道路とコミュニケーションする高度な運転者支援機能の実現にマイコンは不可欠である。

 今回のハイテクノロジーでは、高性能化への進化を続けるマイコンの新製品を取り上げて紹介する。