高周波回路や電源回路用からノイズ対策まで活発な新製品開発

【インダクタ】 小型・薄型・高性能化進む

 インダクタは、高周波回路用から各種回路のノイズ対策、さらには電源回路向けまで使用される。現在、巻線タイプ、積層タイプ、薄膜タイプなどが用途によって使い分けられている。特にスマートフォンやタブレット端末は、高周波回路と電源回路で新製品開発が活発化している。

 スマートフォンなどでは、GSMや3G、さらにはLTEなど多数の通信規格が搭載され、高品位な通信を確立するため、高周波回路には従来以上に高い性能が求められる。それぞれの通信規格に対応したバンドごとにインピーダンスマッチング回路を搭載することが求められ、ノイズ抑制、高効率化を実現する必要がある。  このようなインピーダンスマッチング回路に使用されるインダクタは、高周波域でも特性を保持することが求められる。同時に、多数の機能を小型・薄型な筺体に収めることも要求され、搭載される高周波積層セラミックコンデンサや高周波インダクタに対しても小型品への移行が必要になってきた。一般にインダクタは、小型化すると直流抵抗が増加してQ値が低下してしまうため、高周波回路の性能向上を十分に果たすことができなかった。

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 そこでTDK、村田製作所、太陽誘電などでは、ファインライン形成技術や磁気回路シミュレーション技術、積層技術などを高度化し、最適なパターン形成を実現。これによって、0402(0.4×0.2ミリメートル)サイズという超小型サイズと高いQ値を両立し、狭偏差なインダクタンス公差の高周波積層インダクタを開発している。

 高いQ値を確保できる巻線タイプの場合、積層タイプや薄膜タイプに比べて、小型化が難しい。その中で、サガミエレクなど数社が1005(1.0×0.5ミリメートル)サイズでの供給を可能にしている。

 さらに、次世代サイズとして村田製作所は薄膜技術によって、0.25×0.125×0.125ミリメートルサイズ(0201サイズ)を実現、商品化に取り組んでいる。

 スマートフォンは多機能化に向けてICの搭載点数が増加。電池の駆動時間を延ばすために小型、高効率のDC―DCコンバータが多く搭載されている。

 パワーインダクタに要求される条件は、機器の小型、薄型、軽量化および多機能化に対応して小型、低背でなければならない。駆動時間を延長するために高い電力変換効率を持ち合わせる必要がある。さらに低ノイズが求められる。

 そのため、パワーインダクタは、基本的に大電流への対応、機器の小型・薄型化に対応する小型・低背化に向けた新製品開発が活発化している。

 従来のニッケル(Ni)―亜鉛(Zn)系フェライトコアに銅線を巻回したフェライト系巻線パワーインダクタには、小型化すると直流重畳特性が下がり大きな電流が流せなくなるという問題があった。そこで直流重畳特性を大幅に改善できる鉄(Fi)―シリコン(Si)系などの金属系磁性材料の成形プロセスを新たに開発、新巻線工法および構造を融合させることで大電流対応と小型・低背化を両立したメタル系パワーインダクタが開発されている。

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 すでにスマートフォンやタブレットPC向けのメタル系パワーインダクタの事業に乗り出しているのは、アルプス・グリーンデバイス、NECトーキン、スミダコーポレーション、太陽誘電、TDK、東京コイルエンジニアリング、東光、パナソニックなど。

 現在のサイズは、2×1.6ミリメートル、2.5×2ミリメートル、3.2×2.5ミリメートルサイズが商品化。厚みは0.8ミリメートル、1ミリメートル、1.2ミリメートル。また、メタル系の薄膜インダクタでは、すでにTDKが1.6×0.8ミリメートルサイズまで小型化を実現している。

ノイズ対策も一段と高度化

 スマートフォンやタブレットPCはマルチバンド化をはじめ、多機能化が進展し、しかも部品実装技術は一段と高密度化している。そのため、高度なノイズ対策技術が強く求められている。ノイズを放射しない、ノイズから機器を保護するという両面での対策だけにとどまらず、機器内の部品間でのノイズ干渉の対策も施す必要がある。

 その代表的な製品としてフェライトビーズが用いられている。積層技術やパターン印刷技術を高度化することで、低直流抵抗と高い定格電流を両立。さらにノイズ対策で重要になるインピーダンスも高周波帯で大幅に改善したチップビーズインダクタが開発された。サイズでは0402、0603(0.6×0.3ミリメートル)、1005サイズなどの小型化。

 TDKは、業界最高水準のインピーダンスを実現した信号伝送回路用チップビーズ2種を開発した。1つは新しい磁性材料を用いることで、インピーダンスピーク周波数を2.5Gヘルツ帯まで拡張。2.5Gヘルツで3000Ωという高インピーダンスを1005サイズで実現。もう1つは100Mヘルツでのインピーダンスが600Ωと1000Ωの2種類の高インピーダンス品を0603サイズでラインアップ。1チップで広い周波数帯域のノイズを効率よく除去することが可能になった。1Gヘルツでも1000Ω、1800Ωと高いインピーダンスを実現している。

 さらに次世代サイズのチップビーズとして、村田製作所は0.25×0.125×0.125ミリメートルサイズ品を開発した。

 高速差動伝送ラインのノイズ対策に有効なのは薄膜技術が用いられるようになった。薄膜コモンモードフィルターでは、0.45×0.3×0.23ミリメートルサイズまで小型化した。また、コネクタや液晶ラインでは、薄膜LCフィルターアレイの採用が広がっている。