磁性材料とインダクタ
0201サイズなど次世代チップ部品の開発本格化
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 磁性材料は、インダクタやトランスなどのコア材として使用されるほか、フェライトや各種モーター用材料として利用されているマグネット(磁石)などがある。中でも磁石についてはレアアースの調達不安、価格高騰などからレアアースレスに向けた新材料開発が具体化してきた。一方、インダクタは、携帯電話やパソコンから太陽光発電用パワーコンディショナ、自動車まで、様々な用途で使用されている。特に成長著しいスマートフォン向けでは、金属磁性材料を用いたパワーインダクタ、高周波回路向けの高Qインダクタの新製品開発が活発化している。

マグネットの技術動向
マグネット(永久磁石)は、機器の需要増や用途の多様化を背景に、グローバルでの需要が拡大している。デジタル化や機器の高性能・多機能化が進む中で、小型モーターやセンサー等への技術要求は高度化が進み、これらに使用されるマグネットにもさらなる技術革新が求められている。同時に、省資源化やコスト低減のため、高価な希土類原料を代替するための技術開発も進展している。日系磁性材料メーカーは、次世代ニーズに対応したR&Dを推進し、より高性能な材料開発に全力を挙げている。

マグネットは、電子機器の小型・軽量化や高性能化のカギを握る素材。フェライト系、希土類系、アルニコ系などの種類があり、次世代の市場ニーズを視野に入れたR&Dが飛躍的に進んでいる。
特に、電子機器の高性能化を支える高性能磁石として特に需要が拡大しているのが、Nd―Fe―B(ネオジム―鉄―ボロン)やSm―Co(サマリウム―コバルト)などの希土類焼結磁石。希土類焼結磁石は各種永久磁石の中でも、日系メーカーが高いグローバルシェアを持つ製品の一つ。希土類焼結磁石は、高い特性により、FA用モーターやエアコンコンプレッサ、HDDボイスコイルモーター、EV/HEV用モーターなどの用途で多用される。

今後も希土類磁石は、白モノ家電の省エネ化、車の電装化に伴い需要増が予想され、磁石各社は、残留磁束密度向上など、さらなる特性向上に向けた新素材開発に力を注いでいる。

一方、フェライト磁石も、市場要求に合わせた特性改善に向けた新製品開発が進められている。特に最近は、希土類原料価格の不安定化や調達不安などが指摘される中で、原料が豊富で素材の品不足が起きにくいフェライトに再度着目し、高特性のフェライト磁石開発を進めるなどの動きが活発化している。

希土類系とフェライト系では、最大エネルギー積が大きく異なるため、通常は希土類からフェライトへ切り替えると、製品自体が大型化する。これをカバーするため、コイルや周辺回路などに工夫を凝らすことで、小型かつ十分な特性を備えた新しいフェライト系マグネットの開発などが進められている。

磁石には、ボンド磁石(ボンデッドマグネット)と呼ばれる軟磁石もある。これは磁性粉に微量のプラスチックやゴムを混ぜて成形したもので、フェライトボンド磁石や希土類ボンド磁石がある。磁力は焼結磁石に劣るが、割れや欠けが発生せず、自由な形に成形できるという特徴を持つ。

インダクタの技術動向
インダクタは、高周波回路用から各種回路のノイズ対策、さらには電源回路向けまで、巻線タイプ、積層タイプ、薄膜タイプなどが品揃えされている。特にスマートフォンやタブレット端末は、高周波回路と電源回路で新製品開発が活発化している。

スマートフォンなどでは、GSMや3G、さらにはLTEなど多数の通信規格が搭載され、それぞれの通信規格に対応したバンドごとにインピーダンスマッチング回路を搭載することが求められている。同時に、多数の機能を小型・薄型な筺体に収めることも求められており、搭載される高周波積層セラミックコンデンサや高周波積層タイプ高Qチップインダクタの0402サイズへの移行が求められている。しかし一般にインダクタは、小型化すると直流抵抗が増加してQ値が低下してしまうため、高周波回路の性能向上を十分に果たすことが困難だった。最近ではファインライン形成技術や磁気回路シミュレーション技術、積層技術などを高度化し、最適なパターン形成を実現することで0402サイズという超小型サイズと高いQ値を両立し、狭偏差なインダクタンス公差で豊富にラインアップしてきた。

また、スマートフォンは多機能化に向けてICの搭載点数が増加。駆動時間を延ばすために小型、高効率のスイッチングレギュレータが多く使用されるようになり、その構成部品の1つであるパワーインダクタにおける新製品開発が活発化している。

パワーインダクタに要求される条件は、機器の小型、薄型、軽量化および多機能化に対応して小型、低背でなければならない。駆動時間を延長するために高い電力変換効率を持ち合わせる必要がある。さらに低ノイズが求められる。

パワーインダクタは、これまで巻線タイプが主流で使用されてきた。携帯機器では特に小型、低背化が強く求められており、厚みが2ミリメートル以下から、同1ミリメートル内外まで低背化シフトが進展している。

小型、低背化の背景には新しいコア材質の採用がポイントの1つ。これまでの巻線パワーインダクタは、Ni―Znフェライトを用いるのが一般的だった。最近では金属磁性材料であるメタルコンポジットやダストコアを使用した新製品開発が活発化している。